第5話 死神


私は、鬼形利通。このゲーム…VEMの警察をやっている。重要な立場についているということだけあって、最近自分でも、ピリピリしてしまっていると感じている。

無自覚に威嚇してしまっているようで、部下からは、『鬼カス』と呼ばれているようだ。全く…自分にも非があるが、もうちょっと慕ってくれてもいいじゃないか…


急に緊急電話が掛かってくる。何事だ…?私は無造作に電話を取る。

『たす…もえ…』

この四文字しか聞こ取れなかったが、火の音がするのがわかる。大規模火災でもあったのか…?

「落ち着いて下さい。今何が起こっているんですか?」

『ぷれ…はい…ときに…きゅう…ひが…』

ブチッと電話が切れてしまう。現場の状況を理解するのは、今の話では難しかったが、異常事態が起こっているのはわかる。


「総員!この凶悪犯の確保に向かうぞ!捜索班はこの電話の発信源を、すぐに調べ上げろ!戦闘班は、確保に向かえ!相手がどんなスキルを持っているか分からないからな!」

私は迷わずそう伝える。

おー!という声が聞こえたときには、捜索班が調べ終わっていた。優秀だ。


「マジナ地方のログインするプレイヤーの、初期地点リス地の一つです!そこが襲撃されています!」

大声で位置が告げられたとき、私は怒りを覚えた。わざわざそこで起こす…か…


「いいか…?凶悪犯を骨身残らず叩き潰していいぞ。やつには、私の判断で、極刑リスキルを行う。捜索班は、犯人が分かり次第、ログアウトできないようにしておけ!分かったかぁ!」

「おー!」


全員が走り出す。この事件は私も突撃をする。許すわけにいかない。絶対にな!



「すっげぇなぁ…ここで大量殺戮行ったんだぁ…へぇ…じゃあ、死んどけ。」

警察が走ってくる。あかんあかん!ちょっと!絶対痛い!

「冤罪です!僕はやってない!」

「じゃあなんでこんなに死体が転がってるんだよぉ!」

まずい…これは本当にまずい…

僕は身の危険を感じて、走る。この人たちまともに話聞いてくれない!


『プレイヤーが相手のことを敵と認識し、かつ、追いかけられていると判定したため、走る速度を3倍にします。』

『死神の能力が発動しました。半径10mが不幸になる確率は87%です。』

立て続けにアナウンスが表示される。うわぁ!カオスカオス!


ぐん。と体が前に行く。明らかにはぇえ!ちょいちょいちょい!小回りが利かない!

大きく膨らんだルートを走った僕は、警察に腕を掴まれ、そのまま押し倒される。


「殺してきた人たちの恨みを罪で償え!」

殺してない!うへぇ…なんでこんな時に限って、不幸が訪れないんだ?

あぁ…終わった…

僕は目を閉じる。だが、その時はいつまでも訪れない。その代わりに、離せ!という声が聞こえる。なんだ…?


恐る恐る目を開く。すると、そこには警察官の首をがっしりと掴みながら、こちらをじっと見てきているがいた。


「死…神…?」

もしかしたら、とんでもないスキルを引いちゃったんじゃないか…?

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