第4話 悲劇
「大丈夫…ですか?」
倒れていると、上から声をかけられる。彼の方を見てみると、16歳前後の青年の見た目をした人であった。倒れている自分のことを見て駆けつけてきたんだろう。
僕は起き上がり、
「あ、はぃ…大丈夫…です。」と、慌てて答える。大の大人がこんな子に助けられるなんて情けないな…
すると、アナウンスが右上に表示される。
『死神の能力が発動しました。半径10mが不幸になる確率は37%です。』
あかんあかん!三分の一やん!
僕は祈る。心から祈る。これで当たったら彼がいたたまれない!
前の青年が頭に?を浮かべたような顔でこちらを見てくる。
10秒ほど経ったが、特にそれらしきものは起こっていない。
「あの…本当に大丈夫ですか…?」
「あ…大丈夫です…すいませんね…」
「……本当に大丈夫ですか?」
何度も何度も聞かれる。大丈夫だって!もう…このスキルのせいで毎回お祈りタイムが入るんだけど…
「大丈夫なので、先に行っててくれないですか?僕はちょっと散歩してきます。」
「あ…はい…分かりました。必ず6時には帰ってきて下さい。朝食が用意されているらしいので。」
じゃあ。と言って彼が去っていく。朝食か…まぁ…大丈夫か。別に事故る要素どこにもなさそうだし。
そう楽観的に考え、周りを散策する。というか、自分はいいけど、この時間設定、普通に厳しい人いるだろ…
6時になる。僕は建物の中に入り、食堂に行く。いや、流石に時間設定が厳しいから、そんなに大勢がいないと願いたい!
その考えは、ドアを開けた瞬間にぶち壊された。
100人ぐらいのプレイヤーが、塊となり、所狭しと談笑を楽しんでいる。うっ…吐き気と目眩が…。というか構造的に…ヤバイんじゃ…
『死神の能力が発動しました。半径10mが不幸になる確率は98%です。』
無情にもアナウンスが流れる。中央に何故か扉がある構造だから、確実に全員が巻き込まれる!
「うおっ!」と料理人が言う。油を火にこぼしたようだ。その油は一瞬で引火をし、周りの木に燃え移る。それに触れてしまったプレイヤーが、火のエフェクトを出しながら、暴れ回る。
「熱い!アツイ!痛い!イタイ!」
消すようにして走り回る。だが、それは酸素を取り入れる結果となり、火は勢いを増す。その時点で状況は混沌としていた。叫ぶ者。祈る者。どんなに声を上げようと、どんなに祈りを捧げようと、結果は同じで、どんどん連鎖反応のように、燃え移っていく。
僕はここで違和感を覚える。熱い?痛い?これは、現実世界と痛覚を共有しているのか…?
段々と声が小さくなっていく。そして、完全に声が無くなっていたときには、亡骸がそこら中に散らばっていた。
警察が来る。
「はは…あはは…」
僕は笑うしかなかった。
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