第4話 夜のリチャード


 夜、部屋にやってきたフローリスがなぞなぞを出した。

「年頃の男性がこそこそ隠れてすることって、なーんだ?」

「いきなりどうしたの?」

「ねえねえ、お姉様、いったいなんだと思う?」

「さあ、さっぱりだわ」

 一呼吸置いて、フローリスは答えを明かした。

「ズバリ、ひとりえっちよ」

「えっ!!」


「毎夜義兄様おにいさまを観察して分かったことがあるの」

「毎夜?」

「そう、義兄様おにいさまは夜になるとこっそり地下室に降りていくのよ」

「もう、フローリスったら何をしているの!」

 エディリスは妹の行動にあきれた。

「それにしても、地下室なんてあったかしら?」

 館の中はひととおり案内してもらったが、地下室の話は初めて聞いた。

「礼拝堂の祭壇の裏に入口があって、表からは見えないようになってるの。今から行ってみようよ」

「え? ちょっ、フローリス」

 フローリスに手を引かれてエディリスは一階に降りた。

 礼拝堂へ行くと、いつもは閉じられている地下室への扉が開いていた。

「ほら、あそこ。義兄様おにいさまは今夜も地下室に行ってるみたいよ」

「きっと用事があったのよ」

におうのよ」

「は?」

「あれはにおうから、私たちがいる二階ではなく、わざわざ地下室で行っているのだわ」

「何が臭うの…?」

「お友達から聞いたのよ。男は定期的にひとりえっちをしてスッキリしなければ死んでしまうって。スッキリした際にほとばしる液体、それがにおいの元よ」

「し、知らなかったわ」

 妹が姉の胸を持ち上げて言った。

「こんなにデッカイオッパイをぶら下げておきながら?」

「ちょ、やめなさい」

 突然、男性の声が割り込んできた。

「スッキリ? なんの話だい? しかもこんな夜中にこんな場所で」

 地下室から出て来たリチャードが目の前に立っていた。

「お、義兄様おにいさま、ご、ごきげんよう。スッキリの話なんてしていませんよ」

「男の人の生態の話です」

「ちょっと、フローリス! あわあわわ」

「ふうーん、なるほどね」

 リチャードは目を細めてニヤリと笑った。

「君たちも地下室に来てスッキリするかい?」

「急用を思い出しましたので、失礼します!」

 立ち去ろうとすると腕をガシッと掴まれた。

「まあまあ、遠慮しないで、僕の地下室へおいでよ」

 姉妹はリチャードに腕を掴まれたまま地下室への階段を下りて行った。

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