第3話
「遅いッ!!」
終わりの時間はとっくに過ぎているのに、店主が帰って来ない。あいつ、俺に店番を任せて、どこかで酒を飲んで潰れているんじゃないだろうな?
俺はカウンター席を立ち、出入り口に向かって歩き出す。すると、ドアがガチャっと開いた。
入って来たのは「……村長? 何故、村長さんが?」
「その理由を説明しに来た。実は今日、武器屋の店主が不正取引をしているのが発覚してな。村から追放したのだ」
「なんだって……じゃあこの店は?」
「お前さんの好きに使うと良い」
「え? 好きにってあの人の持ち物なんじゃ……」
「いや、村の持ち物であいつに貸していただけじゃ。だから今度からお前さんに貸すことにした」
「あ……ありがとうございます!」
「うむ」
村長はそれだけ伝えて、出て行ってしまった。あの店主なら不正取引をしていたって有り得そうだけど……俺の都合のいい様に次々と人が追放されるのは不自然じゃないか?
──もしかして……俺って人を追放できるスキルを持ってる? だとしたら、ヤバくないかッ!? 俺は嬉しさのあまり店の中でガッツポーズや飛び跳ねたりしてしまう。
「でも、本当にそうなのか!? 実際にやって試してみなきゃ分からない……だけど、どうやって? ん~……」
腕を組みながら考えていると、駆け出しの洞窟の事を思い出す。
「そういえば、追放できるスキルとして、効くのは人だけなのか? 魔物には効かないのだろうか?」
それを知るには試してみるしかない。確か冒険者のリーダーは明日に駆け出しの洞窟に行くと言っていた。その前にゴブリンを追放できれば、俺のスキルだと分かるはず──今のところ、何のリスクも感じないし試してみるか……。
発動条件は分からないけど、とりあえず「駆け出しの洞窟にいるゴブリン達すべてを洞窟内から追放する」
これで良いのか? 駆け出しの洞窟に行って、自分の目で確かめてみたいけど、俺は戦闘経験は全く無いし、鍛えてないから弱いに決まっている。危険だから明日の朝、冒険者の様子を見に行ってみよう。
※※※
次の日の朝。冒険者たちは依頼の報告をするため、村長の家に立ち寄るという情報を仕入れた俺は、村長の家の近くで冒険者たちを待っていた。
──少しして冒険者達が向かってくるのが目に入り、俺は近づくため、ゆっくりと歩き出す。
「おはようございます」と、俺が挨拶をすると、冒険者たちは足を止めてくれる。
「あぁ、武器屋の青年か。おはよう」
「駆け出しの洞窟に向かわれたのですか?」
「あぁ、そうだよ」
「どうでした?」
「それがおかしな事に、ゴブリン達が一切、居なくなっていたんだ」
「へぇー……それは不思議ですね」
「あぁ。まぁ誰かがボスを倒して、雑魚どもが逃げていったのかもしれないがな。とりあえず任務は達成したから、村長の家に行く所なんだ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
俺はサラッとお辞儀をして、その場を離れる。リーダーの言う通り、ボスの話もありそうだけど、話が出来過ぎている。間違いない、俺は今まで気付かなかっただけで、人も魔物も関係なく、追放できるチートなスキルを手に入れていたのだっ!!
こうしちゃいられない……まずは色々を試してみて、発動条件やリスクを見つけて、有効に使えるようにしなくては。
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