昼食の話 続

 そしてまた話は変わり、今度は高校時代となる。


 高校では毎日がお弁当だ。一応カフェテリアは営業していてお昼ごはんは買えるのだが、諸事情によってあまり利用していない。まぁ、諸事情と言っても 面倒くさい やら お金がかかる というようなしょうもない理由だ。


 前回の話などでわかる通り、私は主に校舎の三階から四階で生活している。今年になってやや地上に近くなったけれども、それでも一階にあるカフェテリアへ行くのは億劫である。さらに厄介なことに、カフェテリアは教室から行きづらい場所にあるため、それも拍車をかけている。


 そして、たとえ辿り着いたとしても、私のケチな性分によってできるだけ安いものを食べようとしてしまう。本当は食べたい四〇〇円のからあげ弁当でも、たった一食分の四〇〇円を出し渋り、母に作ってもらったおにぎりと一〇〇円のコロッケと共にお昼の時間を過ごすことがよくある。そんな現状なのでカフェテリアはあまり利用していない。


 だが、カフェテリアには色々とおいしいメニューがある。自分が好きなのは、サイドメニューのフライドポテトとコロッケだ。どちらも一〇〇円と安く、ケチな私にとって優しい価格設定となっている。もちろん味もおいしくて好みに合っており、おにぎりのお供としてちょうどいいというのもあるが、何より温かい!温かいのだ!温かいものを食べれる喜びがここ、カフェテリアにある。


 他にも、自分が食べた中では油淋鶏ユーリンチー弁当がおいしかった。個人的に弁当に入っているポテトサラダが好きなのと、お肉とそれにかかっている酸っぱいタレがおいしいからである。たまに食べるからあげ(単品一〇〇円)もおいしいが、それと引けを取らないほどのおいしさでどちらも甲乙つけ難い。さらに、すでに開発されていると思うが、あのタレにご飯を絡めて食べるのもまたよい。タレの酸味とご飯の相性がなんとも言えずおいしい。一食四五〇円と少し高め(主観)の値段だが、そのなかにはおいしいが何個もあり、かなり推せる。


 そんな私がおにぎりとそのお供を引き連れて行く場所は学校のテラスだ。ウッドデッキとも言うかもしれないが、私の学校には北と南に分かれた校舎と校舎の間に広いスペースがある。二階から四階までの階にテーブルとベンチがついておりそこで弁当を食べたり勉強をする人も度々見かける。


 けれども、私はそのまま地面に座ってお昼を食べる。夏は日差しが強いのでどこにも座れず、お昼ごはんどころではないこともしばしばだが、暖かい太陽の光を浴びてのんびりお昼ご飯を食べるのも心地がよい。周りに人が大勢いる時は遠慮して床は避けるが、そんなに汚れてもいないので人がいない時限定の私だけの特別な場所だと密かに思っている。


 しかし、去年の十二月の終わり、悲しい手紙が届く。『テラス改修工事のお知らせ』。この手紙は我々生徒にショックを与えた。冬は寒くてあまりテラスに出なかったものの、いざ工事が始まると「あぁ、使えなくなるのか」と寂しい気持ちに包まれた。徐々に外されていく床の木のパネル、無造作にけられたテーブルとベンチ。取り壊されるわけではないのに、使えなくなるわけではないのに、なんだかもの悲しい。


 冬休みが明け、結局テラスが使えなくなって三ヶ月が経った。三ヶ月も経つと悲しみも薄れていくであろう。昼食運が氷河期の中、その間「使えないから仕方ないや」と軽く思いながら寂しいお昼を過ごしていたところ、四月に入る頃にようやく工事が終わった。


 使えない時は使えない時であまり気にしていなかったけれど、いざ使えるようになるとやはり嬉しい。前までのように日向ぼっこをしながらお昼ごはんを食べることができるし、テラスに期待してた新入生たちをがっかりさせずに済んで学校側も安心しているだろう。そうしてめでたくテラスは開放され、自由に使えるようになった。


 そんなこんなで激動の昼食の時間を過ごしてきた私だが、ここのところ、少しずつ昼食運が上がってきているのを感じる。お昼ごはんが温かくなり、テラスも改修され、おかわりじゃんけんは…………ないけれど、だんだん昼食の時間が良くなっているのを感じている。この調子で、大学でもまたおいしい昼食にありつきたいという願望を胸に、今日もお昼ごはんを食べる。

                               布団   

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