track06:深夜、二人で囲むお鍋はうまい

SE |ザクザクと軽快に白菜を切る音


結依 |// 部屋の向こうからこちらへ呼びかけるように

「おにいごめん、テーブルにカセットコンロ出してー!」


SE |木の戸棚をパカッと開ける音

SE |カセットコンロのボンベをガチャッとセットする音

SE |火をつけるカチッカチッ、ボウッ音


結依 |// 近づきながら

「お待たせ~、コンロ助かる~」


SE |コンロに重たい土鍋をガチャっと置く音


結依 |// 申し訳なさそうに

「ごめんね、手抜きメニューで」


結依 |// 驚きから、嬉しそうに

「え、いつもそんなに美味しい?

 へへっ、ありがと!」


SE |お鍋のグツグツ音がだんだん大きくなる


結依 |// 楽しげに

「そろそろかな~?」


SE |鍋の中身をお玉ですくい、汁物を小鉢につぐ水音


結依 |// 明るく

「はい、どうぞ」


SE |小鉢をテーブルにコトっと置く音


結依 |// 明るく

「めしあがれ!」


結依 |// 心配そうに

「おにいさ、最近クーラーと外気温の差が激しくて疲れやすいって言ってたでしょ?

 だから季節外れの鍋ものも、たまには身体にいいかなって思ったんだ」


結依 |// 照れ隠しで笑いながら

「にゃーんてね、結依がたまにはあったかいもの食べたかっただけなんだけど!

 へへへ」


SE |鍋の中身をお玉ですくい、汁物をもう一つの小鉢につぐ音


結依 |// 明るく

「そんじゃ、いっただっきまーす!」


SE |すかさず「はくっ」と口に含む音


結依 |// 驚いたように

「あっつ!

 夏場のお鍋、なんか冬より冷めにくくない!?

 ま、そこが美味しいんだけどさぁ……」


結依 |// 慎重に

「ふーっ、ふーっ、ふーっ」


SE |再び「はくっ」と口に含む音

SE |「んぐんぐ……」(咀嚼音)


結依 |// 幸せそうに両手をグーにしながら

「んんーっ!」


結依 |// 明るく

「ほらおにい、ここにもお肉あるよ、はい!」


結依 |// 困ったように

「あ、野菜ぜんぜんたべてないじゃん!

 ごはんはちゃんとバランスよく、だよぉ」


結依 |// 嬉しそうに

「お肉美味しい? よかった!

 すっごくいいカンジの霜降りだったから、思い切って買っちゃったの♪」


結依 |// 嬉しそうに

「閉店ギリギリで半額だったんだけど、なんだかすっごく美味しいね。

 良い買い物した~♪

 それとも、おにいと一緒にたべてるからかなぁ?」


結依 |// ほっぺに手を当てながら幸せそうに

「んふふふふ♪」


SE |しばし鍋のグツグツ音と、結依が食べる音が続く


結依 |// 困ったように顔を手で仰ぎながら

「うーん、さすがにポカポカしすぎだなぁ……。

 いっぱい汗出てきちゃった」


SE |パサッと、薄手のパーカーを脱ぐ音


結依 |// さも心外そうに

「え、下着じゃないよ、キャミソールだし!」


結依 |// 情けない声で

「外じゃ絶対にこんなことしないから、うちの中でくらいダラけるの許してよ~」


結依 |// 兄の真意を聞いて、ちょっとしょんぼりした声音で

「あ、そっか……あんなことがあったばかりだもん、心配して当然だよね。

 ごめん……」


SE |ゴソゴソと薄手のパーカーを再び羽織る音


結依 |// ちょっとしょげたまま、小さな声で

「ううん、もうだいじょうぶ。

 でも、おにいの前以外では絶対にやらないっていうのはね、本当だよ……?」


(気まずい間)


SE |鍋のグツグツという音だけが続く


結依 |// 気まずさを振り払うように

「あ、それじゃ、そろそろお鍋に締めのごはん入れちゃおっか!」


SE |鍋にご飯の塊がちゃぽっと落とされる

SE |グツグツ音が続く中、ご飯の塊を崩すように鍋をかき混ぜる音


結依 |// 真剣そうに

「あとは卵を割り入れてっと……」


SE |コンコン、パカッ

SE |グツグツ音と共に、鍋をお玉でかき混ぜる音


結依 |// 明るく

「はい、どうぞ!

 さ、結依も食べよーっと」


結依 |幸せそうに

「ハフハフ……うん。

 霜降りからほどよく落ちた脂がごはんに染みて、いい旨味がでてるぅ〜♪」


結依 |// おどけたように

「ん、なぁに?」


結依 |// しみじみと、でも嬉しそうに

「……うん、元気でたよ。おにい、ありがとね」


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