track05:夜、帰宅しても妹がいない。無言の着信に胸騒ぎがする…迎えに行くか

SE |玄関ドアの開閉音


(だが室内は真っ暗)


SE |パチンと、電気をつける音


(妹の靴がない。夜遅いのに、まだ帰っていないようだ)


SE |シンプルな着信音


(着信画面に『結依』と書いてある)


SE |電話を取るタップ音

SE |ツー、ツー


(胸騒ぎがする……迎えに行ってみるか)


SE |再び、玄関ドアの開閉音

SE |最寄り駅への道を戻る足音


(しばらく歩くと、行く先に不審者につきまとわれている妹の姿が!)


結依 |// 前方遠くから聞こえる声。切羽詰まっている様子

「えっ、だから、無理です。

 兄が待ってるので……あの、ほんと困ります!」


結依 |// 怯えるように、悲痛な声

「や……いやっ、いたい、離してっ!」


SE |主人公が駆け寄る足音


結依 |// 必死に

「……あ、おにいちゃん! たすけて……!」


(結依、主人公の登場で隙ができた不審者の手を振り払う)


SE |主人公がドンッと不審者に体当たりする音

SE |どさっと不審者がしりもちをつく

SE |すぐに立ち上がり、走って逃げる音


結依 |// 恐怖にまだ怯えつつも、安堵した様子で

「おにい、きてくれた……!

 かどのとこからずっとついてくるひといて、おにいにでんわしようとしたら、スマホとられそうになって、すぐかくしてにげたんだけど、ずっとずっとついてきてっ……。

 怖かった、こわかったよぉ……」


SE |主人公の胸に縋って泣く、衣擦れの音

SE |グスグスとしゃくりあげながら泣く音が、しばらく続く


結依 |// 静かに

「……うん、落ち着いた。

 昔から、結依がピンチのときは、いつも走ってきてくれたよね」


結依 |// 兄を心配させないように、少しだけ冗談めかして

「必殺技が体当たりって、小学生のときからぜんぜん変わってないし!」


結依 |// 冗談めかしたまま

「あは、そうだね、タックルって強いもんね」


結依 |// 小さいが嬉しそうな笑い声

「ふふふ」


結依 |// しんみりと、だが嬉しそうに

「ううん、体当たり、カッコわるくなんてないよ。

 いつもさっそうと守ってくれる、おにいは、ずっと結依だけのヒーローだから」


結依 |// 元気づけようと冗談を言う兄の気遣いに、ノリ良く返す

「え、アイツおにいがモヒカンだからビビってた?

 あはは、なにそれ! じゃあ次はツーブロックにしてみよっか?

 おにいの好きなへいちょーっぽいやつ!」


結依 |// ちょっぴりがっかりした様子で

「んん、もうかんべんしてくれ?

 じゃあ次は……え、いつもの普通のショートがいいの!?

 ええー、メンズの髪型いろいろ練習したいのに……」


結依 |// 驚いたように

「ふぇ、いつもの、そんなに気に入ってくれてたの!?」


結依 |// 照れ隠しをするように、明るく

「えへへ、仕方ないにゃあ。かしこまりましたー!」


結依 |// 一転して静かに

「……うん、もうだいじょうぶ。……帰ろっか」


結依 |// 心細そうに見上げながら

「でもね、あのね……」


結依 |// もじもじとしながら

「その……手、つないでもらってもいい?」


(主人公、「仕方ないな」と笑って手を差しだす)


結依 |// きゅっと手をつかんで、照れ隠しで笑いつつ

「えへへ」


SE |連れ立ってゆっくり歩く足音


結依 |// 嬉しそうに

「こーやって手つないで帰るの、久しぶりだねぇ」


結依 |// しみじみと

「でも……やっぱり安心するな。

 おにいの手、おっきくなったんだねぇ……」


SE |連れ立ってゆっくり歩く足音


結依 |// 静かに

「えっとね、今日はいつものバイトだったんだけど、遅出の子の具合が悪くなっちゃって。そのぶんのシフト引き取ったら、すっかり遅くなっちゃったの。今夜はさっとお鍋にするね」


結依 |// ちょっぴり焦るように

「あ、やばっ!

 そういやちょっと良いお肉買ったのに、痛んじゃう!」


SE |腕にかけていたスーパーの袋をガサガサして、中身を見る音


結依 |// 明るく

「おうちへいっそげー!」


SE |手をつないだまま家へと走り出す、二人の足音


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