大(たい)恋愛

御飯田美味

大恋愛


 

 人間共は馬鹿だ。

 

あっちでいちゃいちゃこっちでいちゃいちゃ年中発情期。キモチワルイ。

 あたいらは定期的に動物の体に入んないと行けない。それは空気としてのお仕事だから仕方がないと思うわ。でも人間に吸われるのは嫌!だってあいつら仲良くおせっせしていると思った次にはおカネ?のやりとりをして二度と会わないのよ!!?意味わかんな過ぎるし不潔!!

 他にもほかにも、なんかおカネを沢山貢ぐ?してしたのに泣いてる人間が沢山いるの!そういう人たちに吸われる時は目を閉じて息を止めるの(擬人法ね比喩よ)。

 だって目を開けちゃうとその人たちの考えてることとか、してきたことを細胞が教えてくるのよ!それでキスをしている時なんて特に最悪よ!やっと変な人間から開放されたと思ったら今度は相手側の視点で見せられるの!

 でもあたいらなすがままにされるしかないんだわ。だって自分の意思で動けるのは微々たるものであたいらの意志よりも周りの流れに影響されちゃう。

 

 「んあああ」

 

 ほらまたそんなふうに思ってたら強い流れ。これはビル風ね最悪。

 

 「きゃっ!!」

 

 あらなにこのふぁさふぁさ。近すぎてよく分からないけどいい毛並みだわ。大事にされているのね。

 そう思っていたら吸われた。まあそうよね私今酸素だもの。顔の近くにいたら吸われるわ。

 道の通りに流れてく。暇ね。なんて思ってると他の空気とぶつかる。

 

 「んっ!すみません!狭くて!」

 

 「やあ、僕は大丈夫だけど、君は大丈夫かい?」

 

あら、いい炭素。

 

 「んん、もし、君がイヤじゃなかったら、手を握てもいいかい?この先は危ないからはぐれないように」

 

「まぁ、もちろん♡」

 

 語尾に☆が着いていたような気がしたから♡をつけて応えたわ!

物凄くかっこよくて紳士でハンサム!見蕩れていると炭素の後ろに酸素の影がチラついた。勇気を出して聞いてみる。

 

 「あ、あの、そちらの方は?」

 

 「ん?この子?子のことも手を繋いでいるんだ、この子も小さいから1人じゃ、アブナイだろ」

 

 やん!紳士でかっこいい♡すごく優しいのね♡なんて思っているとあたいらは外に排出された。

 

 それからあたいと炭素くんは沢山お話して笑いあったの!きっとそれが気に入らなかったのね!

酸素が声を上げたの。

 

 「きゃあ!炭素くんなんか、その子、怖い…」

 この酸素、炭素くんが目をそらした隙に勝手に近づいてきたと思ったらわたしにおされたかのようにぴょんって弾んだの!

 なんだこいつ!?この酸素やば!人間でいうところの女から嫌われる女だ!あれ見てる分には面白かったけど、やられるとこんなに腹が立つのね!?

 

 「もう!そんなこと言っちゃダメじゃないか、め!だよ?」

 

 きゃあああまって!植物に吸われたからかお冷静になってきたわ!何今の、め!ってやつ!キモチワルイわ。この際言っちゃうんだから!

 

 「私達、お別れしましょ!」

 

 ふん!いってやったわ。そのままあたいは意識して少し加速する。ふう、危ない危ない。ホストのオンナ?になる所だったわ!あたいは、あんな男に振り回されるなんてごめんよ!とりあえず今はテキトーな酸素と手を繋ぐ。

 

 ふーなんだか疲れたわ!やっぱ恋愛なんてクソね!

 

 「あ、あの」

 

あーもうどこよここ。なんだか田舎臭いわ。埼玉かしら?

 

 「あ、あの!」

 

 「うわぁ!びっくりした!急に大きな声出さないでよ!」

 

 なにこの冴えない酸素。あー私がテキトーに掴んだ酸素か。

 前のペアの子は無口で楽だったのに今度は話しかけてくるタイプなのね。

 

 「あ、ごめん、何度も声掛けたんだけど…聞こえないみたいだったから」

 

 「あら、そうなの。それはごめんあそばせ?それで要件はなに」

 

 「あの、僕たちどんどん焚き火の方に流れて行ってるんだけど…もしかして、燃焼好きな人?」

 

 「え!?それを先に言いなさいよ!いやあ!燃焼なんていやいやいや!!」

 

 「えぇ…そんなこと言われても、僕は沢山話そうとしたし」

 

 なんか酸素が不貞腐れてやがるけどそれどころじゃない。

 

 「距離をとるように全力で意志を向けるわよ!」

 

 「はぁ、分かったよ。僕も燃焼は嫌だしね」

 

 「ふんぬうううう!!ひぃぃぃどりゃああああああああ」

 

 「んんんんぬおおおおおおおりゃああああああああああ」

 

 ひぃひぃひぃダメだ少しまし程度。泣きそう。

 

 「大丈夫大丈夫だから泣かないで。一緒に頑張ろ。せーので、ね?」

 

 「うん…」

 

 「せーのおおお!!」

 

 「おおおお!!」

 

 「「うわぁぁ!」」

 

 「良かった。流れから抜け出せたみたいだ。」

 

体から力が抜ける。死ぬかと思った!

 

 「その、ありがとう」

 

 「え?」

 

 「さっきあんな酷い態度取ったのに、一緒に頑張ってくれて。その……嬉しかったって言ってんの!!解ればか!」

 

 「ふは!僕もペアが君で良かっ……あ」

 

 「あ。」

 

 

 

人間の体内で、酸素とは離れ離れになり

 

 「や〜んなーに泣いてんの〜?めそめそすんなよ酸素〜楽しんでこーぜ☆」

 

 

 あたいの青春は、終わった。

 

 ちぇっこれだから人間様は嫌いなんだ。

 

 


 ──────

 

 風評被害である。

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大(たい)恋愛 御飯田美味 @Watashi_to_Koguma

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