助けて

 竜と別れた後、サキは一人で出口を探していた。

 どこから敵が来るのか警戒しながら、彼女は歩く。

 そんなサキは暗い顔をしていた。


「私……最低だな。なにが『見損なった』よ。見損なったのは私じゃない」


 確かに竜は共にクリアしようとした仲間二人を見捨てた。

 だがそれは好きでやった事ではない。

 助けられないとすぐ分かったから、見捨てたのだ。

 それに逃げるなら一人のほうが一番よかったはず。

 だというのに竜はサキを助けた。


(怒りに任せてあんなことを……一番辛かったのは黒川くんだったのに)


 自分の発言に後悔するサキ。


「あとで……謝らないと」


 彼女がポツリと呟いた時、ドスドスという大きな足音が聞こえた。


「この足音って……」


 一筋の汗を流しながら、サキは音が聞こえた方に視線を向ける。

 そして……目を大きく見開いた。


「なに…アレ……」


 今、彼女の視線の先にいたのは、不気味な……そして恐ろしい生物だった。

 獅子のような体と顔。

 背中から生えた無数の黒い触手。

 大きく、そして鋭い爪。

 ギョロギョロと動く三つの赤い目。


 オークやゴブリンよりもモンスターらしいその生物は涎を垂らしながら、サキを見ていた。


「ヒッ!」


 とっさにサキはマシンガンを生み出し、連射。

 銃口から無数の弾丸が飛び出し、空薬莢が地面にカランカランと転がる。

 弾丸はモンスターに全て直撃する。

 しかし……モンスターの皮膚は傷一つつかない。


「な…なんで!」


 身体を震わせながら、後退るサキ。

 そんな彼女が持っていたマシンガンをモンスターは爪で切り裂く。


「イ…イヤアァァァァァァァァァァァァァ!!」


 サキは逃げた。勝てないと分かったから。

 しかしモンスターは……彼女を逃がさない。


「ガアアアアァァァァァァァァァァ!」


 モンスターは地面が揺れるほどの声で吠えた。

 すると先の身体が動かなくなった。


「イ、イヤ!動いて!!」


 サキは必死に動かそうとするが、身体は言うことを聞かない。

 そんな彼女にモンスターは無数の黒い触手を伸ばす。


「だ……誰か……」


 涙を流しながら、彼女は叫ぶ。


「誰か……助けて!」


 この状況で都合よく彼女を救おうとする者は誰もいない。


 


「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 猛スピードで鎧を纏った一人の少年がモンスターに突撃。

 そして力強く拳を放ち、モンスターを殴り飛ばす。


 ワンパンで気色悪いモンスターを吹き飛ばした少年を見て、サキは目を見開く。


「黒…川……くん?」

「助けます」

「え?」

「絶対に……あなたを助けます!」

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