仲間
「なんとか奴らと離れることができた」
ホッと安堵する竜。
そんな彼の耳に「あ、あの」と恥ずかしそうな声が聞こえた。
声が聞こえた方向に視線を向けると、目に映ったのは頬を赤く染めたサキの姿だった。
「どうしました?」
「あの……そろそろ降ろしてもらえると……」
「あ……すみません」
竜は抱えていた彼女を降ろした。
「えっと……またこのゲームで会いましたね」
「そう……だね。また助けてもらっちゃった……ありがとね」
「いえいえ。……あの風林さん」
「なにかしら?」
「よかったら……一緒に行動しませんか?」
「え?それは……ありがたいけど、また迷惑をかけちゃうよ?」
「そんなことないですよ。あの射撃すごかったです。風林さんが一緒なら心強いです」
「アレはスキルのおかげで」
「それでも戦える人がいるのはありがたいです。それに他にもあんなモンスターがいるかもしれません。ここは協力しましょう」
今回の脱出ゲームには、モンスターがいる。
なら一人で行動するよりも二人で行動して、協力し合い、脱出する。
それが最善だと竜は考えた。
「……分かった。一緒にこのゲームをクリアしようか」
「はい!」
竜とサキは握手をした。
その時、
「あの……」
「その……私達も仲間に入れてくれませんか?」
人の声が聞こえた。
声が聞こえた方に視線を向けると、そこには若い男性と女性がいた。
「あなたたちは……?」
「僕は田中レイです」
「大山ユキです。私達もこのゲームに参加して……あの、よろしければ仲間に入れてもらえないでしょうか?」
「もちろんですよ。いいですよね、風林さん?」
「うん。いいと思う」
新たな仲間ができるのは、竜達にとってありがたかった。
「俺は黒川竜です。で、こっちは風林サキさんです」
「よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「さて、とりあえず出口を探そう……と、する前にやらなくちゃいけないことがあるな」
「「「やらなくちゃいけないこと?」
首を傾げる三人。
「スキルですよ。お互いどんなスキルを持っているか知らない。だからお互いスキルを教えて、どの人がどんな役目をするのか話し合いましょう」
今回の脱出ゲームでは、仲間との協力が重要だと竜は考えた。
ゲームでいうとアッタカ―、タンク、ヒーラーなどに分かれて各々役目を果たすということ。
「確かにそれは重要だね」
「そうですね」
「必要な事だと思います」
「ではまず。俺から……俺は鎧を纏って身体能力を強化するスキルと防御力を上げる外殻を生成することができるスキルを持っています」
「私、風林サキは銃を生み出すスキルと狙撃能力を向上させるスキルかな」
「で、お二人は?」
竜が尋ねると、田中レイは恥ずかしそうに答える。
「えっと……僕は双剣を生み出せるスキルと兎耳を生やすスキルを持っています」
「兎耳?」
「はい。どんな小さな音でも反応して察知することができます」
「それはすごい」
この脱出ゲームではできる限りモンスターとの戦闘を回避し、体力を温存をするのが一番だろう。
田中レイのスキルのような察知系は戦闘回避に役に立つ。
「で、大山さんは何のスキルを?」
「私は弓矢を生み出すスキルと矢を強化スキルを持っています」
「なるほど……遠距離攻撃系スキルですか」
竜は顎に手を当てて、考える。
「よし……なら俺は皆さんを守る防御役とモンスターを倒す攻撃役をします。田中さんは索敵……風林さんと大山さんは援護射撃をお願いします」
「「「……」」」
「あの……どうしました?」
「いや…僕達ではそんな考え思いつかなかったから……君、慣れてない?」
「慣れてる……というより、脱出ゲームはよくやっていたので」
竜はバカだが、ただのバカじゃない。
アニメや漫画などが好きなオタク。
特にゲームバカ。
デスゲームは初めてだが、竜は多くの脱出ゲームやRPGなどはやってきた。
そのおかげで大抵のゲームの攻略方法は普通の人より知っている。
「みなさん。絶対にクリアしましょう」
竜の言葉に三人は頷く。
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