風林サキ
「えっと……さっきぶりですね」
「そうだね。さっきぶりだね」
ファミレスの中に入った竜とサキは一緒の席に座り、話をすることにした。
「まさかこんなに早く会えるなんて思いませんでした」
「私もだよ。こんなに早く会えるなんて……この近くに住んでいるの?」
「はい。そうです」
「実は私もなんだ……ありがとね。本当に」
「なにがです?」
「あのゲームだよ。おかげで私はクリアできた」
「いえ、そんな」
「黒川くんは無事にクリアできた……のよね?」
「はい。ギリギリなんとか」
「よかった~」
ほっと息を吐き、彼女は胸を撫で下ろす。
「私のせいでクリアできなかったらどうしようかと」
「ハハハ……本当にクリアできてよかったですよ。……あの風林さん」
「なに?」
「あの魔女は……一体何者なんでしょうか」
「……分からない。けど一つだけ言えるのは……彼女が言ったことは本当のことだと思う。実際……世界のあちこちで多くの人が亡くなったり、特殊能力が使えたりしている人たちが現れているの」
「世界中!?」
「うん。スマホでニュースを確認してみて」
竜は慌ててスマホで今日のニュースを見た。
ニュース記事には『謎のゲーム機が登場』とか『ゲームによって多くの人が死亡』など書かれていた。
「これは……」
「黒川くん。私達は…最悪なデスゲームに参加しちゃったんだよ」
「……覚悟を決めるしかないんですね」
スキルプレイヤーをやめるには、十種類のゲームをクリアしなければならない。
大切な人たちを死なせないためには、クリアし続けるしかない。
「絶対にクリアしてやる」
「……すごいね。黒川くんは」
「え?」
「私より年下なのにそんなことが言えてすごいよ。私は……怖くて仕方ない」
サキは身体を震わせていた。
「私は…今すぐにでもあのゲームから逃げたい」
「風林さん……」
「いくら一億円が手に入るからってクリアできなければ大切な人が死んじゃうゲームなんて……いやだよ」
サキの気持ちは、竜にも痛いほど理解できた。
「……誰か……助けてほしい」
「……」
少女のように怯える彼女に、竜は何も言うことができなかった。
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