ゲームクリア

「ヤバイヤバイヤバイヤバイ!」


 森の中を全力で走ってゴブリンを探す竜。

 だが見つからない。

 そして残り時間が一分になってしまった。


「クソ……このままじゃあ!」


 クリアできなければ友人や家族が死ぬ。

 それを想像した竜は必死に探す。

 だが……見つからなかった。


「ああ……ダメだ。残り時間が…十秒しかない」


 絶望した竜は地面に両膝をつける。


「俺は…大切な人を……」


 もう間に合わない。

 そう思った。


 その時……奇跡チャンスが起きた。


「グギャギャ!」


 醜い声が聞こえ、振り返るとそこにはゴブリンがいた。

 そのゴブリンの姿を視界に捉えた竜は立ち上がり、駆け出す。

 残り時間……七秒。


(間に合え!間に合え!!間に合え!!!)


 竜は拳を強く握り締める。

 残り時間……四秒。


「うおおおおおおおおおおおお!!」


 竜は拳を放ち、ゴブリンの顔を殴った。

 残り時間……二秒。


「グギャ!?」


 ゴブリンの頭はトマトのように潰れ、血が飛び散る。

 その直後、竜の身体が光り出す。


「間に…あったぞ!」


 そう言った時、竜の意識が白く染まった。


<<<>>>


「ハッ!」


 気が付くと竜は現実世界に戻っていた。

 竜はサングラスを外し、ハァーと深いため息を吐いた。


「ゲームクリア……なんとかできたな」


 今の竜にゲームクリアした喜びも達成感もない。

 あるのはクリアできて良かったという安堵感と疲労感のみ。


「もう無理……なんなんだよ。本当に」


 ただのゲームかと思いきや、まさかのデスゲーム。それも大切な人が死ぬというもの。


「あの魔女……いったいなんなんだ」


 そう呟いた時、彼の耳にピンポートというインターホンの音が聞こえた。


「なんだよ、疲れている時に」


 チッと舌打ちした竜は玄関のドアを開けた。

 だが誰いない。

 あるのは……黒いスーツケースのみ。


「なんだこのスーツケース?」


 竜はスーツケースを家の中に運び、中身を確認した。

 そして……言葉を失う。


「嘘…だろ」


 スーツケースの中に入っていたのは、大量の札束だった。


「なんでこんな大金……ハッ、そういえばあの魔女…ゲームに参加する度に一億が手に入るとか言ってたよな。アレ本当だったのか。いや待て、もしあの魔女が言ったことがすべて事実なら」


 まさかと思った竜は告げる。


「スキル発動」


 次の瞬間、彼の身体が機械の鎧に覆われた。


「ハハハ……マジかよ」


 本当に現実でもスキルが使えるとは思わなかった竜は、頬を引き攣った。


「魔女……本当に何者なんだ?」


 竜がそう言った時、彼のお腹がグゥ~と鳴った。


「……考えるのはいったんやめるか。それより飯だな」


<<<>>>


 家を出た竜はお気に入りのファミレスに向かって歩いていた。

 外はもう暗く、建物の窓から光が発生していた。


「今日……なに喰うかな」


 そう言いながら竜はファミレスの中に入ろうとした。

 その時、


「あの…黒川くん……だよね?」


 後ろから聞いたことのある声が聞こえた。

 振り返った竜は目を見開く。


「あなたは……」


 彼の視線の先にいたのは、ゲームの中で助けた女性—――風林サキだった。

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