討伐

「ハアァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」


 薄暗い森の中、竜は拳を振るい、次々とゴブリンを倒した。

 血と肉の臭いにも慣れ、戦い続けて三十分。


「残るは……一体」


 なんとか八体のゴブリンを見つけ、倒すことに成功した竜。

 これで討伐数は九体。

 残るは……一体のみ。


「しかし……倒すのは簡単だが、見つけるのが大変だな」


 予想以上にゴブリンを探すのに苦労した竜。

 だが時間はまだある。

 そしてあと一体を倒せばゲームはクリア。


「よし、がんばるか」


 残りの一体を探そうとした時、


「もう……いや」


 どこかで人の声が聞こえた。

 気になった竜は声が聞こえた方向に向かう。

 するとそこには一人の女性がいた。


 ポニーテイルにした長い茶色の髪。

 大きな胸。そして可愛らしい眼鏡を掛けていた。

 見た目は二十歳ぐらいに見えた。


「あの……大丈夫ですか?」


 竜が声を掛けると、女性はビクッと身体を震わせた。


「ヒッ!」

「ま、待ってください。敵ではありません」


 竜がそう言うと、女性はホッと安堵する。


「よかった……ゴブリンじゃないんですね」

「あなたも……スキルプレイヤーですか?」

「はい。私もスキルプレイヤーです」

「そうなんですか。俺以外にもいたんですね」


 まさか自分以外にもこのゲームに参加している人がいるとは思わなかった竜は驚いていた。


「はい……私以外にもいますよ」

「そうなんですか……あの、大丈夫ですか?本当に?」


 女性はとても泣きそうな顔をしており、竜は見て見ぬふりをすることができなかった。


「すみません……突然このゲームに参加させられて……その……戸惑って」

「……気持ちはわかりますが、まずこのゲームをクリアしないと」

「無理ですよ、私には。ゴブリンは怖いし、頑張って倒そうとしたら他の人には倒されて……」

「なんというか、大変ですね………あの、もしよかったら俺が協力しますよ」

「え?」


 女性は顔を上げて、竜を見る。


「俺……あと一体を倒せばクリアなんです。だから」

「いいん……ですか?」

「はい。あ、俺……黒川竜といいます」

「……サキ。風林かぜばやしサキです」


 竜とサキは握手した。


<<<>>>


「では、サキさん。あなたのスキルを教えてくれませんか?」


 ゴブリンを探しながら、竜はサキに尋ねた。


「わ、私のスキルは『銃生成じゅうせいせい』……銃であればなんでも生み出せます」

「え?なにそれ、すっご」

「で、でも銃なんて初めてで……全然、当たらなくて」

「なるほど……」


 竜は顎に手を当てて、考える。

 

「あの……こういうのはどうです?」


 竜は自分が考えた作戦をサキに伝える。


「どうですか?」

「確かにその方法なら……いいかもしれません」

「ならこの作戦で……と……見つけました」


 竜とサキはゴブリンを見つけた。

 だがゴブリンは竜達に気付いていない。


「じゃあ作戦通りに」


 そう言って竜はゴブリンに素早く近づいた。

 そしてゴブリンの首を掴み、地面に叩きつける。


「今です」


 竜が合図すると、サキは自分の掌から拳銃を生み出した。

 そして拳銃の銃口をゴブリンの頭を押し当て、引き金を引く。


 パァン!


 発砲音が鳴り響き、空薬莢が地面に落ちる。

 弾丸に撃ち抜かれたゴブリンは動かなくなった。血が流れ、地面を赤くする。


「う……おええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 サキは口に手を当てるが、吐き気を抑えることはできなかった。

 血の臭い……そして生物を殺したリアルな感覚が彼女を苦しめる。


「風林さん。辛いでしょうが慣れてください。じゃないと……大切な人たちが死にます」

「……はい。そうですね」


 口を腕で拭ったサキは、深呼吸をした。


「よろしくお願いします。黒川…くん……でいいのかな?」

「はい。見た感じ俺の方が年下でしょうから」


 それから竜がゴブリンの動きを封じ、サキが殺すを繰り返した。

 そして、


「や、やりました!」


 サキは十体のゴブリンを討伐することに成功した。


「おめでとうございます。風林さん」

「ありがとう。黒川くんのおかげだよ」


 少女のように喜ぶサキを見て、竜は微笑んだ。

 その時、サキの身体が光り出した。


「これは……」

「きっと……現実世界に帰るんでしょうね。クリアしたから」

「黒川くん!」


 サキは竜の手を両手で握る。


「本当に……本当にありがとう。必お礼……お礼するか―――」


 サキの身体は光となり、消えた。


「行っちゃったか。さて……俺も頑張らないとな」


 俺が気合を入れたその時、彼のウィンドウが出現。

 そのウィンドウには『残り時間、五分』と表示されていた。

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2024年9月20日 12:00
2024年9月21日 12:00
2024年9月22日 12:00

スキルプレイヤー~大切な人達が死ぬVRデスゲームに参加した少年は、ゲームクリアをし続ける!~ @gurenn1950

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