6話「優しくて困る」

(チャイムの音)


「せんぱい来ましたよ~。大丈夫ですか?」


(扉の開く音)


「あらら、これは重症ですね。ささ、寝てて寝てて。」


(歩く音 とことこ)


「それにしても、びっくりしましたよ~。病気って何ですかって感じのせんぱいが急にお休みだったんで。」


「なんか食べました?朝から何も食べてないんですね、食欲ないですもんね。」


「ゼリーとプリンとアイスも買ってきたし、あとうどんと......。」


「なになら食べれそうですか?」


「雑炊ですか?いいですよ。作りますよ。冷蔵庫開けてもいいいですか?」


(冷蔵庫を開けてがさがさする。)


「ん~卵あるしたまご雑炊かな~。大丈夫そうですか?」


「あ~せんぱいこっち来なくっていいですから!せめてそのソファーで寝ててください。ベッドでもいいですよ。」


「私が心配なのはわかりますけど、自炊するので雑炊くらい作れますよ~。

そんな顔しないでください。」


(ふふふと控えめに笑う)


「じゃあ作るんで、先輩寝ててくだいね。こっち来ちゃダメですからね。」


(卵をかき混ぜる音、ねぎを切る音、ぐつぐつと煮る音が聞こえる。)


「せんぱい、せんぱい。あれほんとに寝ちゃったかな。」


「あ、起きてる。目つぶってたんですか?偉いですね。」


「雑炊で来たんであつあつのほうがいいかなと思って起こしちゃいました。ごめんなさい。でも、起きててよかった。」


「ほ、ほんとは寝たほうがいいんですからね?寝れてますか?」


「寝れてるなら早く治りますね。よかった。これ食べたら、寝てくださいね。」


「じゃあ」


(ふーふーする。)


「はい、あーんしてくださいね。」


「あれ?あーんしてくださいってば。自分で食べれるからいい?やだな~せんぱい。病人は言うこと聞くもんですよ。」


「はい改めて。あーーん。」


(ぱくり)


「おいしいですか?それはよかったです。もっと食べますか?」


「いっぱい食べて偉いですね。」


「あまり冷蔵庫に入れておくので温めて食べてくださいね。ゼリー、せんぱいの好きなやつにしといたのでこれも入れときますね。食べれるときに食べといてください。」


「じゃあ本格的に寝てくださいね。はいこっちですよ~。」


(歩き、扉を開ける音。)


「よし!おふとんしっかりかけて寝てくださいね。私帰りますんで。」


「そんなにみられると帰れなくなっちゃうじゃないですか。さみしいんですか、せんぱい。」


「こういうときくらい素直になっていいんですよ。」


「もうわかりましたよ。私が心配なのでせんぱいが寝るまで、いてもいいですか?」


「せんぱい素直じゃないんだから。」


「じゃあ手かしてください。握っといてあげますよ。素直じゃない先輩のために。」


「はいはい恥ずかしがらないで。病人は精神も滅入るものですよ。」


「おまけにトントンもしてあげます。あ、子守歌も歌ってあげましょうか?」


「あはは、子守歌は冗談ですよ。静かにしときますから。」


「いつもはよくしゃべったってこういうときくらいは静かにできますからね。安心してください。」


「え、声聞いてたい?」


「そういう不意打ちずるいですからね?わかってやってます?」


「はいはい、わかりましたよ。じゃあなんでもないたわいもない話でもします?」


「??子守歌をご所望ですか、せんぱい。」


「まじですか、冗談のつもりだったんですけど。」


「でも、先輩にはいつも助けられてるので、お返しですよ。」


(子守歌♪~~~)

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