第26話 “万事休す”とか言ってたわね〜
プルルル…。
「もしもし、お父さん?今電話大丈夫?今アーくんと一緒にいるんだけど…」
「有沙、有澄、どうしたの?」
父さんが出たみたい。
「アーちゃんとアーくん!?電話してくるなんてどうしたの!?まさかお母さんが恋しくなっちゃった!?」
母さんがめちゃくちゃ突っかかってきた。
母さんは心配性な性格だから、俺たちのこと気にかけてるんだろうね。
…結論を言おう。
めちゃくちゃ恋しいよ!寂しいよ!
なんだかんだで両親がいないと寂しいんだよ!
「実はね…、お金なくなっちゃってね…だからちょっとだけ貸してくれない?」
「それはいいけど…、ギルドの仕事は?」
「仕事全然入ってこないよぉ…」
「そっか、やっぱり現実は世知辛いなぁ」
「安心して!愛する子どもたちのためならお母さんお金ならいくらでもあげるから!」
まるで姉ちゃんが俺に対して言うセリフだね。
もしかして姉ちゃんの性格って母さん譲りなのかなぁ?
「いいよ、仕送りしようか」
「いいの?やったー!」
やったあぁぁぁぁ!
小遣いがもらえるぞぉぉぉぉ!
「今は父さんたち、そっち行けないけどね」
「え?行けない?仕事忙しいの?」
「ううん、むしろ暇だよ?超暇すぎるよ?」
超暇なのに行けないの?
どゆこと?
「お父さん、お母さん、今どこにいるの?」
「「なんかよく分かんない変な場所」」
…は?
「いやぁ〜。海外出張のついでにハワイ行ってたら、いきなり変な場所に飛ばされちゃったんだよねぇ〜」
いや、なんでそんな平気そうでいられるの!?
てか、出張終わったらさっさと帰ってきてよ!
なにハワイ満喫してんだよ!
「そこはね、どんな魔法使っても出られないの〜。だから脱出は諦めてたんだけど、なんかそこにいた男の人がお母さんたちに話しかけてきたの〜」
「男の人?」
「その人が言うにはね〜、『帝王と会っていただければこの領域から解放します』だって〜。よく分かんないけど、その姫って人に会ったら帰れると思うわ〜」
帝王?
それってもしかして…。
「その人の名前は確か…“万事休す”とか言ってたわね〜。失礼だけど変な名前ね〜」
「「万事…休す?」」
海奈さんとマジダルイが同時に反応した。
ということはつまり…。
「バンジキュウス、全神未到の一到です。どうやら有澄くんたちのご両親は捕らえられているようですね…」
「なんですとぉ!?」
すると、さっきまで遊んでいた皆が立ち上がった。
「ようやく暴れられるのかワン」
「怖いけど、あたし頑張る!」
「ウチもだらだらライフのために頑張るよ〜」
やる気は十分みたいだね。
「有沙、有澄?どうかした?」
おっと、電話の途中だったね。
「ううん、なんでもない!お姉ちゃんとアーくん、今からそっち行くね!」
「行くって…どうやって…?場所分かるの?」
ブチン。
あ、姉ちゃんが話の途中で電話切りやがった。
…まぁいいや。
ついに「海奈さんの魔法使いパーティ」本格的に活動開始だね。
「皆さん、準備はいいですか?」
「はい、いつでも」
「お姉ちゃんも頑張っちゃう!」
「いつでも行けます!」
「ぶちのめすワン!」
「いつでもいいよ〜」
「それではいきますよ…超絶異界転移!」
海奈さんが俺たちを異界へ転移した。
― 第27話に続く ―
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