第31話 現実は世知辛いなぁ

プルルル…


「もしもし、お父さん?今電話大丈夫?今アーくんといるんだけど」


「有沙、有澄、どうした?」


父さんだ。


「アーちゃんとアーくん!?電話してくるなんてどうしたの!?まさかお母さんが恋しくなっちゃった!?」


母さんがめちゃくちゃ突っかかってきた。

母さんは心配性な性格だから、俺たちのこと気にかけてるんだろうね。


結論を言おう。

めちゃくちゃ恋しい!

なんだかんだで両親がいないと寂しいんだよ!


「実はね、お金なくなっちゃって…だからちょっと貸してくれない?」


「それはいいけど、ギルドの仕事は?」

「仕事全然入ってこない…」

「そっか、やっぱり現実は世知辛いなぁ」


「安心して!愛する子どものためならお母さんお金ならいくらでもあげるから!」


まるで姉ちゃんが俺に対して言うセリフ。

姉ちゃんの性格って母さん譲りなのかなぁ?


「いいよ、仕送りしようか」

「いいの?やったー!」


やったー!

小遣いがもらえるぞぉ!


「今は父さんたち、そっち行けないけど」

「行けない?仕事忙しいの?」

「ううん、むしろ暇」


暇なのに行けないの?

どゆこと?


「お父さん、お母さん、今どこにいるの?」

「「未知なる異界」」


は?


「いや〜、海外出張のついでにハワイ行ってたら、いきなり変な場所に飛ばされたんだよ〜」


いや、なんでそんな平気そうでいられるの!?


「そこはね、どんな魔法使っても出られないから出るの諦めてたんだけど、なんかそこにいた男の人がお母さんたちに話しかけてきたの〜」


「男の人?」


「その人が言うにはね〜『姫と会っていただければこの異界から解放します』だって〜。よく分かんないけど、その姫って人に会ったら帰れると思うわ〜」


姫?

それってもしかして…


「その人の名前は…“万事休す”とか言ってたわね〜。失礼だけど変な名前ね〜」


「「万事…休す?」」


海奈さんとバカアホンが同時に反応した。

ということはつまり…


「バンジキュウス、全神未到の一到です。どうやら有澄くんたちのご両親は捕らえられているようですね」

「なっ!?」


すると、さっきまで遊んでいた皆が立ち上がった。


「ようやく暴れられるのかワン」

「怖いけど、あたし頑張る!」

「ウチもだらだらライフのために頑張るよ〜」


やる気十分みたいだね。


「有沙、有澄?どうかした?」

おっと、電話の途中だった。

「ううん、なんでもない!お姉ちゃんとアーくん、今からそっち行くね!」

「行くって…どうやって…?」


ブチン。

あ、姉ちゃんが話の途中で電話切った。


まぁいいや。

ついに「海奈さんの魔法使いパーティ」本格的に活動開始だね。


「皆さん、準備はいいですか?」

「はい、いつでも」

「お姉ちゃんも頑張っちゃう!」

「いつでも行けます!」

「ぶちのめすワン!」

「いいよ〜」


「それでは…超絶異界転移!」


海奈さんが俺たちを異界へ転移した。




― 第32話に続く ―

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