第22話 無いなら私が創る
「ここまで来たことは褒めてやろう。だが私には勝てん」
「私が押し負けたというのですか?私が開眼していれば、どんな能力も理屈も概念も不干渉で、一方的に葬れるというのに!」
「能力?理屈?概念?そんなものを行使して何の価値がある?私の前では理不尽な屁理屈だろうが、言葉の意味がどうとか、森羅万象を無に帰す単純な力量差も関係ない。私から見ればそれは書いてあるだけだからな」
書いてあるだけ?
「海奈、お前も未来を見たなら分かるだろう?遠い未来で神は人間という存在を創る。そしてその人間が創作し、観賞する漫画や小説といった物語というものが誕生する」
「それがなんだというのです?」
「もし、今私たちがいるのが創られた物語だと言えば分かるか?」
「まさか!?」
「この全宇宙に存在する森羅万象、お前たちがしていること、喋っていること、考えていること、これらは全て私が創った物語ということだな。お前たちはその物語の登場人物の1人にすぎない。お前たちがどれだけ滅茶苦茶をしようが、私がそのように創作しただけのこと。物語を読む側には何もできまい」
お姉様が創った物語?
「ではなぜ、私たちと戦うなどという意味の分からない真似をしているのですか?好きなように創作できるのであればいつでも消せるでしょう?」
「私の愛する妹たちだからな。私を倒そうという最低限の意思を尊重したまでだ」
お姉様はまた私たちを一瞥します。
ブシャアッ!
私たちは吹き飛ばされ、血が飛び散りました。
「すまない。苦しいようにはせんと言ったのに血を流させてしまった。海奈の言った通り私は残忍な性格だな」
こんなの、どうやって―――
「お姉ちゃん」
「なんだ、星奈?」
星奈がお姉様に語りかけました。
「お姉ちゃん、物語を読む側には何もできないって言ったよね?」
「それがどうした?」
「お姉ちゃんはこの物語を創り、自分で読んでる。でも自分がそうされることって考えたことある?」
「なに?」
星奈は一歩も動かず、何もしませんでした。
しかし、お姉様は―――
「グハァッ!」
先程の私たちと同じように、身体中から大量に出血していました。
「まだだよ」
星奈は一歩踏み出します。
「ぐ あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
お姉様はボロボロになり、悲鳴を上げました。
「何をした…星奈?」
「物語の創作者は、自分が創作されるだなんて思いもしない。私たちはお姉ちゃんの創った物語。でも“お姉ちゃんの物語”が無いなら私が創る」
― 第23話に続く ―
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