第20話 この私に刃を向けるか

帝王の名は果那輝王奈(はてなきおうな)。

そう。帝王というのは海奈たちの実の姉のことなのである。


「ほう…。まだ姉だと思ってくれているのか。私は嬉しいぞ」


「ええ、あなたのような残虐な性格の持ち主を姉だとは認めたくありませんが」


「言ってくれるではないか」


海奈は顕現させた剣を王奈の首元に突きつけた。


「ほぅ、この私に刃を向けるか。いい度胸だ」


そして、星奈が王奈の後ろから首に剣を突きつけ、問いかけた。


「ねぇ…王奈お姉ちゃん。どうしてこんなことをするの?」


「こんなこと、とはなんだ?」


「自分勝手に何もかも好き放題にして!一体何がしたいの!?」


「私は自分の本能に従っているだけだ。それがお前たちにとって悪だと言うのならば…、好きなだけかかってくるがいい」


「では遠慮なく」


海奈は剣で王奈の首を斬り落とした。

そして、宙を舞った王奈の生首を掴み取り、握り潰して粉砕した。


「すごい!やったね!お姉ちゃん!」

「いえ、この程度では何の意味もありません」

「え?」


「素晴らしい。この私の首を斬り落とすとは」

「お姉ちゃん!?な、なんで!?」


星奈が驚くのも無理はないだろう。

完全に消え失せたはずの王奈が、まるで何事も無かったかのように海奈たちの後ろに立っていたのだから。


「一体何をしたのですか?」


「私は何もしていない。身体が完全に消え失せた程度では私は倒せない。それだけだ」


「そうですか。…では倒せるようにしてあげましょう」


海奈は、全宇宙森羅万象改変ワレノイノママを発動し、全てを自分の思うがままに書き換えた。

これで王奈を消し去れば、確実に勝利できると見込んだ。

即座に海奈は王奈の身体を粉砕した。

王奈の身体は完全に消え失せた。


しかし――――――。


「こんなくだらんもので私に勝てると思っているのか?」


やはり、王奈は何事もなかったようにそこにいたのである。


これには流石の海奈も驚いたようだ。

海奈の好き勝手な改変すらも無意味だったのだから。


「これでも駄目ですか。ならば――――――」


「なぁ。もうやめにしないか?お前たちとはやり合いたくない」


突然、王奈が戦いをやめようなどと言い出したのだ。


「いきなり何を言い出すのですか?」


「私たちは姉妹なんだ。妹たちを傷つけるような真似はしたくない」


実は海奈は気付いていた。

王奈が一度も海奈たちに手を出していないということを。

そのため、王奈が海奈たちと敵対したくないことも分かっていた。

しかし―――。


「お姉様を放っておけば、全ての神々、悪魔、あらゆる生物、その他あらゆる種族を完全滅亡させてしまうかもしれません。やはり見過ごしておくわけにはいきません」


「そうか…、ではゆくぞ。安心しろ。お前たちは私の大切な妹だ。苦しいようにはせん」


「ではいきますよ。お姉様」

「いくよ!」


海奈と星奈は無限に大剣を顕現させ、王奈に向けて一斉に放出した。

大剣の大群が王奈に降りかかり、突き刺していく。

しかし―――。


「なんて脆い剣だ」


王奈に触れた剣は悉く砕け散ってしまった。


「…やっぱり王奈お姉ちゃんは強いね」

「まぁ、このくらいは想定内ですが」


剣撃は全くの無意味のようだ。


「次は私の剣を受けてみろ」


王奈も大剣を顕現させるが―――。


「させませんよ?」


海奈は両目を開眼し、その力を解放した。

そして―――――。


ドサッ…。

王奈は何の前触れもなく倒れ、全く動かなくなった。


「え?お姉ちゃん何をしたの?」

「葬りました。これで私たちの完全勝利です」


「もしかして、その眼の力で?」


「はい。この眼は見たものを絶対に葬ります。破滅や必殺などの力とは格が違いますので」


「それ、何が違うの?」


「自分で言うのもなんですが、私が強すぎるだけだと思ってください」


「そっか!そういうもんなんだね!」


そして海奈は、倒れ伏した王奈に向かって別れを告げようとする。


「これで終わりですね。さようなら、お姉様」

「誰に別れを告げている?」

「「!?」」


なんと、またも王奈は何事もなかったかのようにそこに立っていたのである。


「そんな!?この眼は不老不死、不朽不滅、全知全能、死すらも葬るというのですよ!?」


「これもつまらんな。まさかこれが奥の手とは言うまいな?…しかし、こんなものを受けたのも初めてだ。海奈…これは何だ?」


「死を葬る眼です。遥か遠い未来を見た結果ですが、こういったものは“チート能力”と呼ばれるもののようですね」


「“チート能力”?フハハハハ!…そうか。それは私も知っているぞ。我々には雑魚すぎる能力だな」


「雑魚すぎる…?」


「あぁ、ふと気になって私もそのチート能力とやらを掌握してみたが、時空操作、多次元結界、万物創造、悉くを滅ぼす、全知全能などのくだらないものばかりだった」


海奈は思った。

チート能力が雑魚すぎるなら、単純な力でねじ伏せるだけだと。

海奈は掌に全身全霊を込めて一気に解き放った。

これだけで全世界・全宇宙・森羅万象・未知なる異界・全ての神々・悪魔・全神未到すらも葬り去る力がある。


しかし―――。


「そんな、これでも…!?」

「ほう、これは悪くないな」


王奈はそれすらも指一本で消し潰していた。


「私を倒したいのだろう?ならば本気で来い。

お前たちはまだ本気を出しきっていないだろう…ん?」


突如、王奈の片目が爆ぜ、消し飛んだ。


「私を忘れてもらっちゃ困るんだけどなぁ~?」

「やるではないか、星奈。素晴らしいぞ」


どうやら、星奈の眼がお姉様の眼を討ち破ったようだ。


「…だが、ここまでだ」


王奈は海奈たちを一瞥し―――、


「…ガハッ!」

「…グフッ!」


海奈たちは吹き飛ばされ、血を吐いていた。


「一体…何が…」




― 第21話に続く ―

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