第19話 バカだねぇ〜!

「皆さんお集まりのようですね」


海奈さんは大事な話をするということで、皆を集めた。


「それじゃ、私と星奈の話をしましょうか」


そして海奈さんは語り始めた。



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 



それは遠い遠い昔、人間が誕生する遥か昔の話である。


あらゆる全世界・全宇宙・森羅万象・未知なる異界・全ての神々・全神未到を完全征服支配し、全ての頂点に君臨していたのは〈帝王〉と呼ばれる存在であった。


そして、全神未到というのは、かつて帝王を取り巻き、従属していた存在。

いわゆる下僕(しもべ)である。


そんな帝王の性格は、非常に自分勝手で残虐でおり、自分に叛逆の意を示した者はもちろん、自分の機嫌を少しでも損ねた者ですら無慈悲に叩き潰し、思いのままに支配していた。


そして、帝王は恐ろしいほどの強さを持ち、どんな神々も悪魔もまるで手も足も出なかった。


さらに全神未到という、神々を超越した下僕もいたため、やがて帝王に逆らう者はいなくなり、全ては帝王の思い通りとなってしまった。


そんな帝王の存在を脅威だと感じ、姫を倒そうと立ち上がったのが海奈と星奈であった。


「星奈、私たちで帝王を倒しましょう!」


「えっ?帝王を倒す?そんなことできるの…?お姉ちゃん?」


「はい!私たちならできるはずです!帝王を倒して、神々や悪魔たちを救いましょう!」


「…うん!お姉ちゃんと一緒ならやれる!」



―――――――――――――――――――――



「ここですか」

「ついに来たね」


海奈たちは、帝王のいる未知の領域に繋がる扉の前まで辿り着いた。

その時 ――――。


「帝王に挑もうなんてバカだねぇ〜!」


とある少年が現れた。

銀髪で背丈は星奈と同じくらい。

整った顔立ちだが、非常に挑発的な目をしていた。


「あなたは…帝王の下僕…、全神未到ですか」


「よくわかったね。僕は全神未到の一到、バカアホウだよ。君たちを帝王の元へ行かせるわけにはいかないね」


「プッ…!バカアホウだって…!変な名前!」


彼の名前を聞いた星奈が吹いたようである。

海奈はそれほど面白い名前だとは思っていないようだが。


「私たちは帝王以外に興味はありません。ここを通していただけるのなら、あなたには一切手出しは致しません」


「それは無理だね〜。君たちを行かせたら僕が姫にやられちゃうからさ」


「そうですか。ではあなたはもう用済みです」

「僕に楯突くとはなんてアホだ!面白いね!」


するとバカアホウは、彼の背丈の倍以上はあるほど巨大な大剣を顕現させた。


「それじゃあ…会ったばっかりだけど、バイバーイ!」


バカアホウが大剣を振り翳す。

その剣で海奈を斬りつけようとするも―――。


「こんなものですか?」


海奈も即座に剣を顕現させ、バカアホウを大剣ごと引き裂いた。


「がはぁっ…!」


彼の身体は真っ二つになり、地に倒れ伏した。

普通なら身体が真っ二つになった程度ではどうともないのだが、海奈の剣は特殊な力を持っているので海奈の完全勝利である。


「どういうこと?」など「何が起きた?」など考える必要はない。

単純に海奈が強すぎるだけだと思えばいいだろう。


「すごいね…君たち…、でも…帝王には勝てない…よ」


やがてバカアホウは微動だにしなくなり、完全に消え失せた。


「それでは行きますよ、星奈」

「うん!」


海奈たちは扉を開けた。



―――――――――――――――――――――



そして、その扉の先には姫が待っていた。

海奈は帝王を睨みつける。


「やはり来たか。待っていたぞ。海奈、星奈」

「随分と余裕ですね、帝王。いえ、お姉様」




― 第20話に続く ―

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