第16話 意外と初心なんですねぇ〜

「…くん、有澄くん!」


あれ?

海奈さんの声が聞こえる…?


「うぉぉっ!」


おっと、しまった。

呆然としてたみたい。

人間界に戻ってきたのかな?


「大丈夫でしたか?」

「あぁ、はい。なんとか」


「アーくん、心配したよぉ!」

「ウ◯コ踏ん張ってきたのかワン?」


こらこらー。女の子がそういうこと言っちゃダメでしょー。


「キラリンも一応女の子なんだから!」

「一応!?有澄も凜華と同じ反応だワン!?」


「アーくんっ!」

「グへェッッッ!」


姉ちゃんが飛びついてきた。(2回目)


「大丈夫だった!?お姉ちゃんすっごく心配したんだよ!」


「大丈夫だって!なんかいきなりわけ分かんないとこに飛ばされて、一回ぶっ殺されただけだから!☆」


「全然大丈夫じゃないよね!?」


それが大丈夫だったんだよ。

あの…星奈?って子のおかげでね。


「有澄くん、飛ばされた場所に全神未到がいませんでしたか?」


「はい、カイジンニキスってやつでしたね。ヤバい奴でしたよ。倒しましたけど」


「カイジンニキス…そうですか。とにかく有澄くんが無事に戻ってきてよかったです」


「?」


そういえばカイジンニキスは海奈さんのことを裏切り者だとか言ってたっけ。

やっぱり過去に何か ――――。


「よーし、アーくん帰還記念に今日はお姉ちゃんがみんなに晩ごはん作ってあげるね!」


なんか姉ちゃんがすごい張り切ってた。


「有沙お姉ちゃんの手料理なんて久しぶりに食べるかも!」


「有沙、料理なんてできるのかワン?」


「失礼だね!これでもお米は世界一美味しく炊ける自信があるんだから!」


米だけかーい!



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 



「あたし、今日アーくんの家泊まるね!」


夕食後、リンちゃんがこんなこと言い出した。


「どうしたの急に?」


「だってさっきみたいに、アーくんがいきなり連れ去られないか心配だから、あたしも見張っておきたいの!」


「お、おぉう…」


リンちゃんのゴリ押しに思わず了承してしまう。

そういや小学生の頃までは、お互いの家でお泊りなんてよくやってたっけ。

久しぶりにお泊まり会もいいかもね。


「先に4人でお風呂入ってきていいよ。俺は最後でいいからさ」


俺は女性陣に先にお風呂に入るよう勧めた。

ウチの風呂は広くないけど、頑張れば4人入れないこともない。


すると、海奈さんが変なことを言い出した。


「何言ってるんですか?有澄くんは私と一緒にお風呂入るんですよ?」


…Why?


「いやいや!?それはダメでしょ!」

「どうしてですか?」


「それは…その…色々丸見えになっちゃいますし…」

「有澄くん…意外と初心なんですねぇ~」


しまった!

これでは俺がまるで童貞みたいに思われてしまうではないか!

…実際童貞なんだけど。


「アーくん、童貞だもんね!」


リンちゃん!?

今ちょうど気にしてたことをピンポイントで!

てか、女の子が童貞とか気軽に言っちゃダメよ!?


「それじゃあ…お姉ちゃんと一緒に入っちゃうぅ〜?」

「いや、なんでそうなるの!?」 


「アーく〜ん…?今日は特別にお姉ちゃんが背中流してあげ…」

「ふざけてないでさっさと入っちゃって!」


俺は4人を風呂にぶち込む。

全員入ったのを確認して―――

…よし。


俺は足音を立てないように、風呂の扉に近づいていく。


「フフフ…、フハハハハ!」


…さぁ、楽しい時間の始まりだぜ。




― 第17話に続く ―





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