第15話 悲しいこと言うのやめて?

「誰の胸と尻がぺったんこですって〜💢!?」


あれ?

あの子が喋ってる?


「びっくりしたぁ!君はどこにいるの?」


「君の中にいるから大丈夫。私といれば絶対に負けないから」


「すごい自信だね」


でも、本当に滅茶苦茶強くなってる気がする。

この子が何者かは知らないけど、今は力を借りるとしようか。


「さっきから1人でゴチャゴチャうるせぇんだよ!さっさと灰になりやがれ!」


また奴は超絶爆破を起こす。

それに対し、俺はそれを小指で消し潰した。


うん、やっぱり全然手応えがないね。

さっきの爆破で大ダメージを受けたのが嘘みたいだよ。


「1人?君とは普通に会話してるけど、俺の声って今どうなってるの?」


「声は変わってないよ。私の声は君にしか聞こえてないからね。つまりあっちから見たら君は独り言の激しいイタい人に見えてるってわけ」


「そういう悲しいこと言うのやめて?」


この子、見た目の割に意外と毒舌だなぁ…。


「は!?なんだよ!テメェ、さっきとは強さが全然違えじゃねぇか!」


「なんでだろうね、俺には分かんないや」


「強いのは“君”の方じゃなくて“私”。勘違いしないでね」


わかってるよ。

悪かったね雑魚で。


「面白ぇ。アタシも本気でいくぜ!」 


そう言うと、奴の全身に力が込められる。

さっき俺が掌でやったみたいに、全身から力を放出する感じかな?


「灰燼に帰す」


うん、やっぱり今までの爆破がショボいと思えるほどの威力。

この子が宿ってない状態でこれ喰らったら、完全に終わってたわ俺。

でもこれも小指1本で軽く押し潰せる。


「この程度かい?全神未到」


全神未到に対してドヤれるとか気持ちいぃ〜!


「君の力、本当にすごいね」


「そうでしょ、すごいでしょ!あ、そうだ!

試しに指パッチンでもやってみてよ!」


「指パッチン?なんで?」

「いいからいいから!」


言われるがままやってみる。

すると、意味不明な威力の超絶爆破が発生し、カイジンニキスは灰燼に帰した。

身体中ボロボロであちこちから血が出ている。

多分立ってるのもやっとな状態だね。


「…舐めやがってっ!もう許さねぇ!」


奴はブチ切れたようで、全身に灰燼を纏った。

すると、奴が負った傷は治癒されて元通りになり、爆発的に力が増していく。


今度こそ、全身全霊を込めた一撃が来そう。

てかこの灰燼、治癒能力まであるんだ。

なんという便利な機能。

ま、治しても意味ないんだけどね。


「それじゃ有澄!やっちゃうよ〜!」

「やっちゃおうか」


俺は左眼を開眼する。

右眼は開眼しなくていいや。

片目の力だけで十分でしょ。

…いわゆる舐めプです。


そして、俺と彼女の水色に煌めく瞳から、凄まじくも美しい光が放たれる。

そんな俺たちを見た奴は恐れ慄いていた。


「な、なんだよソレ…」

「俺たちに喧嘩売ったこと、後悔するんだね」


今までの俺は完全に俺YOEEEEだった。

でも、今は違う。

目の前にいるカイジンニキスって奴を倒す。

それだけだ。


「テメェ、絶対許さねぇ!くたばりやがれぇっ!」

「もう理性を保ってないね」


奴は俺に飛びかかり、爆破をぶち込もうとする。


「愚かなものだね」


俺は奴の顔を一発殴りつける。


「ガハァッ!」


そして天高く吹っ飛ばし、地に叩き落とす。


「降参するかい?」

「調子に…乗るんじゃねぇぇぇっ!」


来るね。

奴の最大級の一撃が。


「これで終わりだ!巫有澄!」


あ、放ってきた。

でも、やっぱこんなもんか。


「有澄、君ならできるよね?」

「もちろんだよ」


さっき開眼した左眼から青い光を解放する。

その光で奴を爆破ごと飲み込む。

奴の身体が、灰燼に帰して散っていく。


「消え失せろ」


「があぁぁぁ!このアタシがぁぁぁっ!テメェごときにぃぃぃっ…!」


カイジンニキスは完全に消え失せた。

メッソウモナイ討伐の時と同じように、同時に支配領域も崩壊した。


―――――――――――――――――――――


支配領域が消滅し、俺はあの子と会った真っ白な場所に戻ってきた。

てか、俺の姿も戻ってる。

あの子は…いた。


「私たちの勝ちだね」

「ありがとう。君のおかげで助かったよ」


「助けるのは当たり前。君がいなくなると私が困るからね」


ん?君が困るの?


「そういえば、ここは君の世界の中なんだよね?」


「そうだよ。厳密には君と私は一心同体って言った方がいいかな?」


俺の中にいる?


「君は誰?海奈さんとはどういう関係なの?」

なぜか俺の名前も知ってたし。


「ん〜、そうだねぇ〜。私のことは海奈ちゃんから直接聞いて」


自分では言いたくないのかな?

それは別にいいんだけど。


「それじゃ、ここで一旦お別れだね。何かあったらいつでも呼んでくれていいから」


そう言って彼女は歩き出す。


「あっ待って!君、名前は?」

「あ、そうだったね。私の名前は…星奈だよ」


「星奈…」

「うん!またね〜有澄〜!」


彼女は手を振る。

俺も手を振り返す。

やがて、彼女の姿は見えなくなった。


結局なんだったんだろうあの子。

俺の中にいるってどういうこと?

それにめちゃくちゃ強かった。


海奈さんのことも知ってるみたいだったし、帰ったら海奈さんに聞いてみようか。


その瞬間、俺の視界は光に包まれた。




― 第16話に続く ―

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