第13話 灰燼に帰してやる

「回収ってどういうことだい?」

「果那輝海奈をアタシに引き渡せ。それだけだ」


海奈さんを引き渡す?

いきなりなに言ってんの?

しかもなんで俺に?

とにかく、こんな怪しい奴に海奈さんは渡せないね。

お断りだよ。


「海奈さんを渡すなんて、俺にはできないね」

「なら力ずくでいくぜ!」


カイジンニキスが手を振った瞬間、異常なほど強力な爆破が起こった。

なんて威力だ。


この一撃だけで全ての神々ですら余裕で滅ぼせるだろうね。

武器なんか使うより素手のほうが強いのか。

俺がまともにぶつかって勝てる相手じゃない。


なんたって全神未到には、俺のチート能力が全くの無意味であることがわかっている。

これは逃げるしかない。


「逃げられるとでも思ってんのか?」


俺は逃げようとしたが、奴は追いかけるまでもなく俺の頭を掴み、すごい力で握り潰す。


「…っ!」

「逃げるなんて無駄だぜ。大人しく降参しろ」

「嫌…だね」


俺は〈超絶森羅万象制覇斬断〉を発動し、奴の腕を斬り落とす。


「へぇ…、いいねぇ」


さらに、俺は掌にパワーを込めて一気に解き放つ。

特にこれといった名称はない。

これはどんなチート能力だろうが理不尽な屁理屈だろうが、単純なパワーでねじ伏せる。

圧倒的なパワーの上に、掌だけでお手軽に発動できるため、無双してた頃はよく使っていた。


そして、俺の最大出力をを奴にぶち込んだ。

結構効果はあるみたいだね。

奴の体は吹き飛び、吐血している。

もしかしたら、やれる…かも?


「やるじゃねぇか…でも!」


奴がもう片方の腕を大きく振ると、さっきの爆破とは比べものにならない威力の爆破が起こり、全てを灰燼に帰した。


俺もそれに巻き込まれ、全身に深傷を負う。

まさに名前の通り、「灰燼に帰す」だね。


「これでわかっただろ?テメェじゃアタシには勝てねぇ。さっさと果那輝海奈を渡せ」


「そもそも何で俺に?海奈さんに直接挑めばいいじゃん?」


「それは無理だ。アイツは強すぎるからな。テメェを人質にして誘き出す」


「何かと思えばそんなことかい。なんて卑怯な奴だ」


「卑怯だぁ?オイオイ!一番卑怯なのは果那輝海奈だぜ?」


「海奈さんが…卑怯?」


「あぁ、アイツはアタシら全神未到を裏切ったんだよ!」


「海奈さんが…裏切った?海奈さんは全神未到とはどういう関係?」


「協力すんなら何でも教えてやるよ。これが最後のチャンスだ。仲間にならないなら今すぐ灰燼に帰してやる」


全神未到ってなんなんだ?

海奈さんとはどういう関係なんだ?

すごく気になる。

…でも今はそんなことどうでもいい。


「アンタたちの仲間にはなる気はないね。海奈さんは俺の…俺たちの仲間だから」


「そうか…残念だな。なら失せろ!」


奴はまた爆破を起こし、灰燼に帰そうとする。

俺もさっきの掌のパワー解放を発動するが、相殺しきれなかった。

それどころか押し返され、俺の身体はボロボロにされる。


「マジか…」


コイツは強すぎるね。

もう俺に戦う余力は残ってない。

またこれか。

前は海奈さんが助けに来てくれたっけ。

今回は…流石に無理かな。

今度こそ本当に一巻の終わりだね。


「じゃあな。楽しかったぜ」


海奈さん、リンちゃん、キラリン、姉ちゃん。どうやら俺はここまでみたい。

最後に会えなかったのが心残りだよ。


奴が爆破を起こす。

そこで俺の意識は途切れた。




― 第14話に続く ―






〈掌パワー解放〉

別に名称はないのでこんな呼び方にしてる。

掌にパワーを込めて一気に解放する。

チート能力だろうが理不尽な屁理屈だろうが、単純なパワーでねじ伏せる。






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