第12話 灰燼に帰してやる

「回収ってどういうことだい?」

「果那輝海奈をアタシに引き渡せ」

馬鹿言うな、海奈さんはお前らを敵対視してるんだぞ。


「海奈さんを渡すなんて俺にはできないね」

「なら力ずくでいくぜ!」


カイジンニキスが手を振った瞬間、超絶爆破が起こった。

なんて威力だ。

武器なんか使うより素手のほうが強いのか。

俺がまともにぶつかって勝てる相手じゃない。


なんたって全神未到には、俺のチート能力が全くの無意味であることがわかっている。

これは逃げるしかない。


「逃げられると思ってんのか?」

全力で逃げに徹したが、奴は追いかけるまでもなく俺の頭を掴む。

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」

「逃げるなんて無駄だぜ。大人しく降参しろ」


「嫌…だね」

俺は〈超絶森羅万象制覇斬断〉を発動し、奴の腕を斬り落とす。

「へぇ、いいね」


さらに、俺は掌にパワーを込めて一気に解き放つ。特にこれといった名称はない。

これはどんなチート能力だろうが理不尽な屁理屈だろうが、単純なパワーでねじ伏せる。

圧倒的なパワーの上に、掌だけでお手軽に発動できるため、よく使っていた。


俺の最大出力をを奴にぶち込む。効果アリだ。

奴の体は吹き飛び、吐血している。

もしかしたら、やれる…かも?


「やるじゃねぇか…でも!」

奴がもう片方の腕を大きく振ると、さっきの爆破とは比べものにならない威力の爆破が起こり、全てを灰燼に帰した。


俺もそれに巻き込まれ、全身に深傷を負う。

まさに名前の通り、「灰燼に帰す」だね。


「これでわかっただろ?テメェじゃアタシには勝てねぇ。さっさと果那輝海奈を渡せ」

「そもそも何で俺に?海奈さんに直接挑めばいいじゃん」

「それは無理だ。アイツは強い。テメェを人質にして誘き出す」

「なんて卑怯な奴」

「卑怯?おいおい、一番卑怯なのは果那輝海奈だぜ?」


「海奈さんが卑怯?」

「あぁ、アイツはアタシら全神未到を裏切ったんだよ!」

「裏切った?海奈さんは全神未到とはどういう関係?」

「協力すんなら何でも話してやるよ。これが最後のチャンスだ。仲間にならないなら今すぐ灰燼に帰してやる」


全神未到ってなんなんだ?

海奈さんとはどういう関係なんだ?

すごく気になる。

でも今はそんなことどうでもいい。


「仲間にはなる気はないね。海奈さんは俺の…俺たちの仲間だから」

「そうか、残念だな。なら失せろ!」


奴はまた爆破を起こし、灰燼に帰そうとする。

俺もさっきの掌のパワー解放を発動するが、相殺しきれなかった。

それどころか押し返され、俺の身体はボロボロにされる。


強すぎるね。

もう戦う余力は残ってない。

またこれか。前は海奈さんが助けに来てくれたっけ。今回は…無理か。

今度こそ本当に一巻の終わりだね。


「じゃあな。楽しかったぜ」


姉ちゃん、リンちゃん、キラリン、海奈さん、俺はここまでみたい。

最後に会えなかったのが心残りだよ。


奴が爆破を起こす。

そこで俺の意識は途切れた。




― 第13話に続く ―


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