第11話 何この変な物体!?

「モ゙オォォォォォォ!」


叩き割られたカオス山の中から現れたのは、体の半分が炎に包まれ、もう半分は氷を纏っている超巨大な猛牛。

全長は20メートルくらいといったところかな?

二足歩行で、大斧を構えている。

多分、ミノタウロスの突然変異種なんじゃないかな?


縄張りを荒らされたことに怒りを覚えてるのか荒い鼻息でこちらを睨みつけている。

ま、今まで倒してきた奴より全然弱いのは間違いないんだけどねー。

とりあえず、さっさと倒して素材回収を―――


「ワォォォーン!」


突然、キラリンが空高く跳んだ。

そして、主の脳天に拳を振り下ろす。


「食らえワーン!」


ドッゴォォォォォォン!


「モ゙オォォォォォォ!?」


轟音が響き渡り、主は即座に絶命した。

拳にプレスされて体はペシャンコになった。


主が絶命したことにより纏っていた炎と氷も消え、カオス山の魔力も完全に消滅した。

なんなら、キラリンの拳の一振りで世界どころか、多元宇宙まで粉砕された。

キラリン、意外と強いんだね。

アホっぽいから勝手に弱いとか思ってたよ。

やっぱ人って見かけによらないんだね。


「キラリン、すごいです!」

「どうだワン!余の手柄だワン!」


なんかキラリンが調子乗ってる。

ふ、ふん!それくらい俺でもできるもん!

多元宇宙を無限に滅ぼすなんて小指一本あれば余裕だもん!


「んん…?」


あ、リンちゃんが目を覚ましたみたい。

リンちゃんは絶命した主を見ると―――。


「何この変な物体!?」


さっきまでミノタウロスだったものです。


そして、ミノタウロスのレア素材は角。

武器を作るのに最適なんだって。

脳天ぶち抜かれちゃってるけど、角は無事みたいだね!


よかった。これで金になるよ!

よし、ギルドに売却に行こう!



☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 



「あ!アーくん達!いらっしゃい!」


今日は珍しく、姉ちゃんが出迎えてくれた。

姉ちゃん、普段は頭おかしいけど、仕事はちゃんとやってるみたいだから安心したよ。


「これ売ったらいくらになるかな?」


俺はミノタウロスの死体を受付広場に転送して、姉ちゃんに見せた。

ちなみにうちのギルドは超広いので、ミノタウロスもすっぽり入っちゃうんです。


「そうだね〜。まだ新鮮な肉だし、角も原型を保ってるから、食用肉で1万円、角で10万円くらいにはなるんじゃない?」


てことは合計11万円かぁ…。

ん?


「え?それだけ?なんか安すぎない?このサイズだし、しかも牛肉だよ?」


「高く売れるのは国産牛。美味しいから高いけど、ミノタウロスの肉は美味しくないって評判だからこの量でも高くは売れないかもね〜…」


悲報。

20メートルくらいある超大型ミノタウロス、馬鹿デカい身体してるくせに、大した金になりませんでした…。


これはショック。

超絶大ショック!

世の中に存在するクソ要素の1つだね。

売却額が思ったより安値。

これはテストの点数が予想より低かった時の感情と同じだよ。


すると、姉ちゃんがこんなことを言い出した。


「というかアーくん、無限にチート能力持ってるんだから、お金を創造する能力とか使ったり、お金が必要ない世界に改変したりすれば済む話じゃない?」


「それは俺も思ったんだけどさ、なんにでもチート使ってたら人生イージーモードすぎて逆に面白くなくない?」


「そういうもんかなぁ…?」

「そういうもんです」


「アーくん、11万円って安いの?」

「…いや、期待しすぎた俺が悪かったかもね」


やっぱ億万長者は気長に目指そうかな。


「落ち込んでるなら私とホテルに行きましょう!慰めてあげます!」


「どんだけホテル行きたいんですか。それにホテル代って結構かかりますからね?」


あと慰めるって、場合によってはいかがわしく聞こえるのはなんでだろう?


「…てか、余が倒したんだから余1人の手柄じゃないのかワン?」




― 第12話に続く ―

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