第7話 あ、余お金ないワン
「アーくん、海奈ちゃん、行ってきま〜す♡」
「いってらっしゃいませ♪」
「いってらっしゃーい」
今日は姉ちゃんが仕事に行く。
昨日買った地雷コーデを着て…。
それにしてもめっちゃ際どい格好だね…。
たまに地雷コーデの人は見かけるんだけど、実の姉がその格好してるとなると複雑な気分になる。
一方俺たちは、ギルドメンバーの中でヒマワリの種を買い取ってくれそうな人を探してみる。
さっき食ってみたら、別に食えなくもなかったけど、こんなにあったら流石に飽きが来る。
「有澄くん、買ってくれそうな人は見つかりましたか?」
「いえ、全然です。ヒマワリの種、食用としてはあんまり人気ないですね」
「そうですか、中々難しいですね…って見てくださいこれ!」
「え…?なんじゃコイツぅぅぅぅぅぅぉ!」
「最後「お」になってませんでした?」
見つけたのは、なんとハムスターの耳が生えた女の子。
この人なら買い取ってくれるでしょ!
早速ギルドに連絡して、この人に話を通しておいてもらおう。
―――――――――――――――――――――
翌日、俺たちはギルドにやってきた。
そこには、あのハムスターの少女がヒマワリの種をかじりながら、腕と足を組んで偉そうに座っていた。
「待ってたワン!随分と遅かったなワン!」
見た目の割に傲慢な性格だね…。
あとハムスターなのに語尾ワンなんだ…。
「えっと…、君の名前は?」
「は?いきなりタメ口かワン!?」
君もタメ口だよねぇ…?
「私は果那輝海奈です!」
「俺は巫有澄」
「余の名は、天上院輝羅莉(てんじょういんきらり)だワン!」
「わぁ!かっこいい名前ですね!」
「て、天上院輝羅莉!?それってまさか…あの大人気アイドルの!?」
天上院輝羅莉。
大人気アイドルグループ「ゲキカラチョコレート」(通称ゲキチョコ)のセンターを務めている。圧倒的な歌唱力に、圧倒的な顔面偏差値、圧倒的に魅惑的なボディ。
そんな人が目の前に ――― 。
…いや、やっぱ同姓同名の別人だったわ。
だってこの人、アイドルの方の天上院輝羅莉と比べて絶壁なんだもの。
「おいお前…なんか今すごく失礼なこと考えなかったかワン?」
バレただと!?
「ソイツは関係ないワン。それに余の方が無限倍かわいいワン」
なんだ無限倍って。
てか、大人気アイドルよりかわいいって自信満々に言い切れるアンタすげぇな。
「そんなことより!今日はヒマワリの種を大量にくれると聞いたから来てやったワン!」
「あ、そうそう。ほら」
俺は空間転移で、家にあったヒマワリの種をギルドに転送した。
「おぉ!大量だワン!これ本当に全部もらっていいワン?」
「いや…あげるんじゃなくて買い取ってもらうんだけど?」
「あ、余お金ないワン」
は?
「おかしいですね…。ギルドからは何と聞いていたんですか?」
「頭のおかしい男がヒマワリの種をいっぱいくれるみたいだからおいでって言ってたワン」
やっぱギルドの言い方が悪いわ。
あと、誰が頭おかしい男やねん。
「じゃあ…今日はお金払えませんか?」
「今日だけじゃなく今後もだワン。余、所持金0円だワン」
うん、コイツを当てにしたのが間違いだったね。
「それじゃさよならー」
「待ってくれワン!」
帰ろうとしたら、引き止められた。
「なに?」
「余、お金も家もないんだワン!何も買えないんだワン!食べ物もないから生きていけないんだワン!」
あれ?この流れってもしかして…?
「お金の代わりに、余がお前たちのパーティーに入って、稼ぐのを手伝うワン!だからお前たちの家に住まわせてくれワン!」
またかよぉぉぉぉぉぉ!
「いや、無理だから!君がいても騒がしくなるだけだろうし、パーティーも海奈さん1人いればいいし!俺弱いし!」
自分で言ってて悲しくなってきた。
「そんな…ひどいです!有澄くん!」
え?海奈さん?
「住む場所がない女の子が泣いているのに放っておくんですか!?」
そうだった!海奈さんピュアなんだった!
「わかった…、ウチに来なよ。輝羅莉」
「ありがとワン!あとできれば呼び捨てはしないでほしいワン!」
どんだけ図々しいんだよ!
「じゃあ輝羅莉…ちゃん?」
「それはちょっとキモいワン」
この野郎!!!
「なんかあだ名とか付けて欲しいワン」
「あだ名かぁ…。輝羅莉…あっ!キラリンなんてどうかな?」
「キラリン!それがいいワン!これからよろしくだワン!有澄!海奈!」
「お前は呼び捨てすんのかよぉぉぉぉぉぉ!」
こうして、天上院輝羅莉ことキラリンが仲間になった。
― 第8話に続く ―
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