第4話 獲物は3匹だな

「それじゃ、いきますよ」

はぁ、行きたくねぇー。

海奈さんに無理矢理クエストに連れてこられた俺とリンちゃんは無気力だった。


だって俺は昨日、全神未到の一到であるシコエロンにぶちのめされて、全神未到の恐ろしさを思い知ったから。

そのことをリンちゃんに話したら一気に青ざめてた。

特に海奈さんの強さにはドン引きだった。


「ご安心ください!2人がピンチになることはありません!私が瞬殺してあげますから!」 

サラッと怖いこと言うのやめて。


「超絶異界転移!」


海奈さんがそう言った瞬間、俺たちは未知の場所にいた。

なんとも名状しがたい、森羅万象のような一切虚無のような。

まるで矛盾が矛盾してない場所。


「ここどこですか?」

「メッソウモナイが住む未開の域です。どの神々も一度も立ち入ったことはありません」


ここにそのメッソウモナイって奴がいるの?見た感じ誰もいないんだけど。


「獲物は3匹だな」

「「!?」」

誰かいる。声が聞こえるが姿は見えない。


俺は、全てを見通す神眼〈プロビデンス・アイ〉を開眼したが、声の主の姿を見ることはできない。

まさか、実体がない?


「実体がないと思うか?」


背後から聞こえる。咄嗟に振り向くとそこには

黒髪と金髪のメッシュに赤色の瞳に鋭い目つきをした長身の男が立っていた。こいつがメッソウモナイ?


「な、なんで?〈プロビデンス・アイ〉でも見えなかったのに!?」

「簡単なことだ。貴様のその眼では俺を捉えることができなかっただけのこと」

やっぱりこいつらにはチート能力そのものが雑魚扱いされるのか。


「あなたがメッソウモナイですね?」

「なんだ、知っていて来たのか?愚か者だな」

「当然です。あなたを倒すために来ましたから」

「俺を倒す?面白い冗談だ。」

奴は嘲笑し、巨大な鎌を顕現させた。

「どこまでやれるか見せてもらおう」


すると、リンちゃんが俺と海奈さんの後ろに隠れてなんか言ってた。


「ねぇ、こいつヤバいよ、やっぱり帰ろうよ」

リンちゃん、俺もそうしたいよ、したいけど…


「俺から逃げられると思うか?」


 無理なんです。


「ゆくぞ」

「来なくていいよ!」


…なんて聞いてもらえるわけもないので、俺はシコエロン戦に使用した時より強力な防御を誇る〈超絶多次元不可侵結界〉を展開すると同時に、多元宇宙を超えたオムニバースを無限に消滅させるほどの威力を誇る斬撃〈超絶森羅万象制覇斬断〉を手で放つ。


「全知全能滅殺剣!」

俺に合わせて、リンちゃんは、〈全知全能滅殺剣〉という剣を無数に顕現させ、一気に放出する。彼女の持つ魔法の中でも最強格だ。


この剣は名前の通り、永久不滅、命なき者、全知全能だろうと確実に葬る。

よし、勝った!これは勝った!

ざまあみやがれバカヤロー!


しかし、それに対抗するようにメッソウモナイが大鎌を振り下ろす。すると、俺が展開した〈超絶多次元不可侵結界〉は即座に崩壊し、〈超絶森羅万象制覇斬断〉と〈全知全能滅殺剣〉も完全に相殺されてしまった。


「ふむ、人間にしてはやるな。だがこんなもので俺を葬るつもりでいたのはなかろうな?」


あっれぇ〜、おっかしいなぁ〜?(⁠・ั⁠ω⁠・ั⁠)

渾身の一撃放ったのに。

やっぱり俺YOEEEじゃん!


「こんな薄い結界、何度展開しようが無駄だ。

今度は貴様らもまとめて引き裂いてやろう」

奴がまた大鎌を振る。


再び〈超絶森羅万象制覇斬断〉を発動し威力を相殺しようとするも、押し負けた。

奴の斬撃が俺の斬撃を引き千切り、俺とリンちゃんに襲いかかる。

ヤバい斬られる…


と思ったその時、海奈さんが奴の放った斬撃を小指で押し潰していた。


「おぉ!やっぱ海奈さんTUEEEEEEF!」

「最後Fになってませんでした?」


「ほう、俺の斬撃を受け止めるとは」

「有澄くんと凜華ちゃんを斬ろうとしたということは、あなたも斬られても文句は言えませんね?」

「俺を斬る?やれるものならやってみ―」


言い終わる前に、海奈さんは武器どころか、手すら使わずに奴の身体をバラバラに切り裂いていた。


「少しはやるようだな」

なんだコイツ余裕だな。俺も身体斬られたくらいじゃ死なないけどさ。


「だが、これで終いだ」

突如、奴の赤い瞳が不気味に光り、とんでもない殺気を放つ。

これは…ちょっとまずいですね。




 ― 第5話に続く ―






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