第3話 変な言い方やめてぇぇぇぇぇぇ!?

ピンポーン。


海奈さんが何か言いかけた時、家のインターホンが鳴った。


「誰か来たみたいですよ」

「あ、多分姉ちゃんですね」


俺には巫有沙かんなぎありさという姉がおり、冒険者ギルドの受付嬢として働いている。


俺も前まではそのギルドの冒険者だったけど、討伐クエストを攻略し続けて、功績を上げまくったので今は勇者に昇格している。


ガチャリ…。

俺は玄関の鍵を開ける。


「おかえり、姉ちゃ…」

「アーくぅぅぅん!ただいまぁぁぁ!」

「グヘェッッッ!」


その瞬間、姉ちゃんが勢いよく俺に飛びついてきた。そのまま吹っ飛ばされ、押し倒される。


ドッスーン!


そして俺の上に馬乗りになった状態で、姉ちゃんは俺に頬をスリスリしてきた。


「お姉ちゃん仕事疲れたよぉ~ん!♡癒やしてぇ〜ん!♡」


これだけでもう分かると思うけど、姉ちゃんはすごいブラコン…。


「どうしたんですか!?すごい音が…」


海奈さんが様子を見に来た。

必然的に姉ちゃんと目が合った。

そして、姉ちゃんと海奈さんはしばらく見つめ合って…。


「アーくんがぁぁぁぁっ!女の子お持ち帰りしてるぅぅぅぅっ――――!!!」


「変な言い方やめてぇぇぇぇぇぇ!?」 


―――――――――――――――――――――



「へぇ〜!じゃあ海奈ちゃんは家がなくてここに住むことにしたんだね!」


姉ちゃんは海奈さんが作ったご飯を一瞬で貪った後、海奈さんがウチに住むという話をあっさりOKした。

理由は料理が上手いからだそう。

…いや、それだけでいいんかーい!


「はい、不束者ですがよろしくお願いします!」


それ、嫁入りの時に言う台詞じゃない?


「そ・れ・で、どうしてアーくんのこと好きになったの?」


え、俺のことを好き?

あ、そういえばホテルのお誘い受けたっけ。


「それは〜…、一目惚れです♡」


一目惚れ!?

てことは、…俺って超絶イケメンなんじゃね?


「キャー!一目惚れだって!アーくんも隅に置けないなぁっ!あれ?アーくんどこ?」


一目惚れと言われても、にわかには信じがたいので、俺が本当に超絶イケメンかどうかを確認するために、洗面台の鏡とにらめっこすることにした。


…そして、キメ顔しまくる!

キラーン☆!キラーン☆!


ついでに右目に眼帯をつけて、右腕に包帯を巻いて、手で右目を抑える。

俗に言う厨二病ポーズというやつ。


俺の右目と右腕が疼くぜっ…!

くっ!静まれ!俺の右目!


「くっ!静まれ!俺の右目!」

「さっきから有澄くんは何してるんです?」

「アーくんってあんな変な感じだったっけ?」


…中二病全開の俺を蔑むような2人の視線がとても痛かったです。 



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



翌朝、俺は仕事に出かける準備をする。ちなみにギルドに依頼は全然来てない。でも仕事はしないとお金は入ってこない。

クソが!


仕方ないね。

素材でも集めて適当に売却するかな。

だが、やっぱりここでも海奈さんはついてくる。

どんだけ俺のこと好きなんだよ。 


「有澄くん、どこに行くんですか?」

「冒険者ギルドです。仕事ですよ」


 私も一緒に行きますっ!とか言いそうだね。


「私も一緒に行きますっ!」


 やった!

一言一句間違わず正解だ!


「…まぁいいですよ。一緒に行きましょうか」

「やったぁ!ありがとうございます!」


…ガチャリ。


「姉ちゃん、行ってきまーす」


「いってらっしゃい、アーくん!なるべく早く帰ってきてね!あんまり遅いとお姉ちゃん心配しちゃうから!もしもアーくんが無茶してるようならお姉ちゃんがギルドに文句言って…」


…バタン!

姉ちゃん話長いよ…。



「あっ!アーくん!おはよー!」


そう言って俺に声をかけてきたのは幼馴染の緋詠凜華ひよみりんか


家が隣同士で昔から仲が良く、アーくん、リンちゃんとあだ名で呼び合っている。ちなみに彼女も冒険者ギルドに所属しており、役割としては魔法使いである。


「リンちゃんも今からギルドに行くの?」

「うん!依頼がたくさん来てるみたいだから…誰その女の人?」


リンちゃんは海奈さんを見て、すごい表情をしてた。


「まさかアーくん、昨日その人を家に連れ込んでいかがわしいことをっ!?」


「またかよぉぉぉぉぉぉ!」


―――――――――――――――――――――


「なーんだ、そういうことかぁ…」


リンちゃんに海奈さんとの事情を説明したら、すんなり受け入れてくれた。


「お騒がせしてごめんなさい、凜華ちゃん」


「あっ、いえ!気にしないでください!あたしが勝手に勘違いしちゃっただけなので!」


『どうしよう…!まさかアーくんがこんな美人と住んでるなんて!このままじゃあたしのアーくんが奪われちゃうかも…!』←心の声です。


「リンちゃん、どうかした?」

「あ、ううん、なんでもない!早く行こ!」


…今日のリンちゃん、なんか様子がおかしいような気がするだけど気のせいかなぁ?




 ― 第4話に続く ―








〈 キャラプロフィール 〉


 名前  緋詠凜華

 年齢  18歳

 誕生日 7/7

 身長  156cm

 職業   魔法使い






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