第3話 またかよぉぉぉぉぉ!

ピンポーン。


海奈さんが何か言いかけた時、家のインターホンが鳴った。


「誰か来たみたいですよ」

「あ、多分姉ちゃんですね」


俺には、巫有沙(かんなぎありさ)という6個上の姉がおり、冒険者ギルドの受付嬢として働いている。

俺も、かつてはそのギルドの冒険者だったけど、討伐クエストを攻略し続けて、功績を上げまくったので今は勇者に昇格している。


ガチャリ。

俺は玄関の鍵を開ける。


「おかえり、姉ちゃ…」

「アーくぅぅぅん!ただいまぁぁぁ!」

「グヘェッッッ!」


その瞬間、姉ちゃんが勢いよく俺に飛びついてきた。そのまま吹っ飛ばされ、押し倒される。


ドッスーン!


そして俺の上に馬乗りになった状態で、姉ちゃんは俺に頬をスリスリしてきた。


「お姉ちゃん仕事疲れたよぉ~ん!♡癒やしてぇ〜ん!♡」


これだけでもう分かると思うけど、姉ちゃんはすごいブラコン…。


「どうしたんですか!?すごい音が…」


海奈さんが様子を見に来た。

必然的に姉ちゃんと目が合った。

そして、姉ちゃんと海奈さんはしばらく見つめ合って…。


「アーくんがぁぁぁぁっ!女の子お持ち帰りしてるぅぅぅぅっ――――!!!」


「変な言い方やめてぇぇぇぇ!?」 


―――――――――――――――――――――



「へぇ〜!じゃあ海奈ちゃんは家がなくてここに住むことにしたんだね!」


姉ちゃんは海奈さんが作ったご飯を一瞬で貪った後、海奈さんがウチに住むという話をあっさりOKした。

理由は料理が上手いからだそう。

…いや、それだけでいいんかーい!


「はい、不束者ですがよろしくお願いします!」


それ、嫁入りの時に言う台詞じゃない?


「そ・れ・で、どうしてアーくんのこと好きになったの?」


え、俺のことを好き?

あ、そういえばホテルのお誘い受けたっけ。


「それは〜…、一目惚れです♡」


一目惚れ!?

てことは、…俺って超絶イケメンなんじゃね?


「キャー!一目惚れだって!アーくんも隅に置けないなぁっ!あれ?アーくんどこ?」


一目惚れと言われても、にわかには信じがたいので、俺が本当に超絶イケメンかどうかを確認するために、洗面台の鏡とにらめっこすることにした。


…そして、キメ顔しまくる!

キラーン☆!キラーン☆!


ついでに右目に眼帯をつけて、右腕に包帯を巻いて、手で右目を抑える。

俗に言う厨二病ポーズというやつ。


俺の右目と右腕が疼くぜっ…!

くっ!静まれ!俺の右目!


「くっ!静まれ!俺の右目!」

「さっきから有澄くんは何してるんです?」

「アーくんってあんな変な感じだったっけ?」


…中二病全開の俺を蔑むような2人の視線がとても痛かったです。 



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



翌朝、俺は仕事に出かける準備をする。ちなみにギルドに依頼は全然来てない。でも仕事はしないとお金は入ってこない。

クソが!


仕方ないね。

素材でも集めて適当に売却するかな。

だが、やっぱりここでも海奈さんはついてくる。

どんだけ俺のこと好きなんだよ。 


「有澄くん、どこに行くんですか?」

「冒険者ギルドです。仕事ですよ」


 私も一緒に行きますっ!とか言いそうだね。


「私も一緒に行きますっ!」


 やった!

一言一句間違わず正解だ!


「…まぁいいですよ。一緒に行きましょうか」

「やったぁ!ありがとうございます!」


…ガチャリ。


「姉ちゃん、行ってきまーす」


「いってらっしゃい、アーくん!なるべく早く帰ってきてね!あんまり遅いとお姉ちゃん心配しちゃうから!もしもアーくんが無茶してるようならお姉ちゃんがギルドに文句言って…」


…バタン!

姉ちゃん話長いよ…。



「あっ、アーくんおはよー!」


そう言って声をかけてきたのは幼馴染の緋詠凜華(ひよみりんか)。

家が隣同士で昔から仲が良く、アーくん、リンちゃんとあだ名で呼び合っている。ちなみに彼女も冒険者ギルドに所属しており、役割としては魔法使いである。


「リンちゃんも今からギルドに行くの?」

「うん!依頼がたくさん来てるみたいだから…誰その女の人?」


リンちゃんは海奈さんを見て、すごい表情をしてた。


「まさかアーくん、昨日その人を家に連れ込んでいかがわしいことをっ!?」


「またかよぉぉぉぉぉぉ!」


―――――――――――――――――――――


「なーんだ、そういうことかぁ…」


リンちゃんに海奈さんとの事情を説明したら、すんなり受け入れてくれた。


「お騒がせしてごめんなさい、凜華ちゃん」


「あっ、いえ!気にしないでください!あたしが勝手に勘違いしちゃっただけなので!」

『どうしよう…!まさかアーくんがこんな美人と住んでるなんて!このままじゃあたしのアーくんが奪われちゃうかも…!』


「リンちゃん、どうかした?」

「あ、ううん、なんでもない!早く行こ!」


…今日のリンちゃん、なんか様子がおかしいような気がするだけど気のせいかなぁ?




 ― 第4話に続く ―








〈 キャラプロフィール 〉


 名前  緋詠凜華(ひよみりんか)

 年齢  18歳

 誕生日 7/7

 身長  156cm

 職業   魔法使い






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