第53話 お米食べる!
「……はやく、食べたい」
「そうですね。では、食べる準備をしましょうか」
ということで、携帯型の魔道コンロに鍋をセッティングし、それぞれに取り皿と箸を配った。
「……それじゃ、いただくことにする」
メイは、待ちきれないと言わんばかりに自分の
「……これ、すごくおししい。……よかった」
メイは、初めて自分で作ったものだからか、とっても美味しそうにしているな。
どれ、俺もさっそく食べるとするか。
「おお、美味しい。臭みとかも全くない感じだし、あのやり方は正解だったな」
「そうですね。闇魔法を使い煮込む時間が少なくなったからでしょうか。出汁には雑味がなく、透き通った味になっていました。この出汁でラーメンを作ってもおいしそうです」
流石ソフィア、次の料理に関してもさっそく考えているな。
ソフィアからお鍋のシメも用意しています、と言われたため、出汁を残しつつほとんどの具材を皆で分け合った。
「では、今回は
おお、シメは雑炊か!
この出汁の効いたスープで雑炊を作るなんて、想像しただけでよだれが出てきそうだ。
ソフィアは残った出汁にご飯を入れて加熱し、温まったところで卵を溶いて回し入れると少しして火を止めた。
そして最後にネギを散らして、雑炊が完成した。
「これで完成ですね。さっそく取り分けましょう」
と、ソフィアが雑炊を取り分けてくれた。
さて、絶対美味しいこの雑炊をいただきますか。
「おお、想像以上にうまい……。シメで雑炊をすると、なんとなくネチッとしちゃうんだけど、これはサラっといけるな」
「
やはりソフィアの漫画知識は
……基本的に食事関係で、だけど。
「……おいしい」
メイは一言そういうと、喋らなくなってしまった。
うん、おいしさを噛みしめているんだろうな。
◇
「……大満足。……ソフィア、今日もおいしかった。……ありがと」
「ふぅ、ごちそうさまでした。今日食べた鍋は、今まで食べた中で一番かもしれないな」
「よい出汁が取れましたし、とてもおいしい鍋ができたと思います。今回はメイさんにお願いしたために出来ましたが、闇属性の魔法を使い続けなくてはいけないため、一般の方にはおすすめできる調理法ではないですね」
「……それなら、アオイに相談してみる」
魔道具といえばやっぱりアオイになるよな。
……ただ、この調子でいくと、アオイが作る魔道具がどんどん増えていきそうな気がする。
本人としては、新しい魔道具が増えるなんて大歓迎! って感じだろうけどさ。
「まあでも、ヒカリの手伝いをするって目的は達成できそうだな。メイの得意な闇属性の魔法を使って、煮込む時間を短縮できるんだから。前に魔界のお城で出てきた料理には、煮込む料理が何種類もあったしな」
「……確かに、ヒカリはよく、煮込む料理を作ってる。……これなら、ヒカリを手伝える。……よかった」
鍋がおいしくてちょっと忘れかけてたけど、そもそもメイが今日料理を手伝おうとした目的は、ヒカリの手伝いをするためだったからな。
「ヒカリさんと言えば、昨日の会話で気になることがありました。魔界では、法律などはどのようになっているのでしょうか?」
あっ、確かに。
俺以外は既に知っているから話題に出なかったんだろうけど、魔界の法律はどうなっているんだろう。
本か何かにまとめてあるなら見たいかもな。
……
「……人間界と魔界の間では色々な法律を決めた。……でも、魔界では細かい法律はない。……他人をむやみに攻撃してはいけない、とか、力で言うことを聞かせてはいけない、とか、そんな感じ」
なんというか、法律ってよりもざっくりとしたルールって感じな気がする。
しかも攻撃してはいけない、じゃなくて、むやみになんだな……。
「……そもそも、難しい法律、というかルールを作っても、理解できない魔族がいっぱい」
……やっぱり魔族って、脳筋な人が多いのでは?
「なるほどな。でも、理解できそうな魔族もいるんだよな? だったら、そういった魔族に裁判官になってもらうのはどうだ? あ、裁判官で通じるかな?」
「……本に書いてあったから、しってる。……確かに、信頼できる魔族を裁判官にするのは、いいかも。……前にヒカリの手伝いをした魔族とか」
魔皇全員が魔界の城に集まった時に、ヒカリが手伝いを頼んだ人かな?
「……裁判官は魔皇が任命するから、魔皇に従っているだけ、ってことになる。……それなら、弱い魔族でも大丈夫そう、かも」
そういえば魔界では、強い人が偉い、みたいな風潮があるんだっけ。
魔皇が作ったルールに文句があるってことになるから、魔皇に抗議するしかないってことか。
確かにそれはいいかもな。
「ソフィア。この国の法律とかをまとめた本とかはあるか? 今日の整理が終わったらちょっと読んでみたいかも。それと、読んでもわからなかった内容について質問しても大丈夫か?」
「本であれば、この教会の書庫に置いてありますね。ただ、質問には答えられないかもしれません。この国の法律に関しましては、ほとんど知りませんので」
えっ、どういうこと?
「ソフィアはこの教会、というかこの国にずっといるんだよね? それなのに、知らないってことがあるのか?」
「そうですね。私の巫女という立場は特殊なもので、国の法律とは違うルールに従いますので」
あー。
たまに、というかよく忘れるけど、ソフィアは大聖堂から巫女として派遣されてる、ってことになってるんだよな。
「この国に関しては、クレアさんに聞いてみるのがよいかと思います。ハクトさんのお知り合いの中で、一番詳しく知っていると思いますので」
まあ、王族だからな。
ただ、王族の人に、本を読んだけどここがわからないから教えてー、って言うのはどうなんだろう?
まあ、クレア本人は喜んで教えてくれそうな感じだけどさ。
うーん。次にクレアに会う時にそれとなく聞いてみるかな。
この前皆でパンケーキとかを食べた後で、
「今度は
と言っていたし。
◇
午後も手伝いの続きをやり、今日のノルマと決めた所まで終わった。
とりあえず、教会の書庫からこの国の法律が書かれた本を借りてみるか。
あっ、そういえば、本を外に持ちだそうとすると音が鳴るって大分前に言われたような気が……。
「ソフィア。書庫にある本を読みたいんだけど、この部屋に持ってくることってできる? 確か、持ち出し禁止だったよね?」
「そうですね。……では、こちらを渡しておきましょう」
と、ソフィアからカード状の何かを渡された。
「こちらと一緒に本を持っていますと、部屋の外に本を持ち出すことができます。基本的に教会で働く方に渡されています」
「俺、この教会で働いてないけど大丈夫なのか?」
「ハクトさんも働いていますので、大丈夫です。それと、メイさんにも渡しておきます」
……あっ!
でも、それでいいんだろうか。
「それに、あくまでも盗難防止が目的ですので」
それならいっか。
「それじゃ、さっそく取ってくるか」
◇
それっぽい本を探して読んでみたが、全然頭に入ってこなかった……。
やっぱり、詳しい人に話を聞く方がよさそうだな。
一度書庫に戻って本をしまったら、こんがらがった頭を漫画でも読んでほぐすか。
なんて考えたらリーン、という音が鳴った。
ん? 誰からだろう。
……もしかして、クレアからかな?
それなら丁度かも、なんて思いながら確認してみると、アキナからだった。
本を戻しがてらリンフォンを確認してみると、
『アオイから聞いたわ! 何でも魔皇の皆とデートしたらしいわね? それなら、わたしともデートしない? 予定はいつ開いているかしら?』
という内容が来ていた。
……そうか、アオイが伝えちゃったか。
というか、それならデートしよう、って流れに違和感しかない。それなら、って。
これも異世界ギャップとでもいうのだろうか?
まあ、決まった予定なんてないし、いつでも大丈夫、って伝えておくか。
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