第16話 5歳 暴力では何も解決しません!
『冒険者ギルドへの加入を許可します。がんばって稼いでね。果てしなく稼いでね。with母』
というお手紙を手に、再び王都の冒険者ギルドへやってきた。
カランコロン。
いい音でしょう。馬力が違いますよ、余裕の音だ。やはり冒険者ギルドはこうでなくっちゃあな。
入ると一斉に視線が集まる。ガキをダシにしてしょうもない牽制と削り合いをする暇があったら座ってないでスクワットでもしてろってんだ。足をガニ股に大きく広げて脇を締めて上半身を真っ直ぐにハーフスクワット、もしくは休めの体勢からケツを後ろに突き出す形だと膝の負担が軽減できるぞ!負荷が足りない場合は踵を浮かすのもベネ!鍛えたい箇所を意識して最適な形でトレーニングを行って欲しい!
「なんだぁガキ…」
「しゃあ!コブラソード!」
ごちゃごちゃ言い出す前にやっちまうに限る!失敗した事もあるが。
「ゲヒュ」
ガシャーン!
倒れる机、立ち上がる不貞冒険者共(断定)。これは儀式だ、この場に俺の存在を刻み込む儀式。こいつらはその為の贄でしか無い。
「来な、魂まで屈服させてやる」
「あら、僕くんまた来たのね」
「おねえちゃん!僕今日はとうろくしにきたんだよ!母者がそろそろいいよって!」
新姉!そうだここには新姉がいたのだ!くっせぇ冒険者と遊ぶより新姉と遊ぶほうが5000倍有意義である。
「おいガキぃ!このままで済むと思ってんのか!」
色めき立つ荒くれ共。何故暴力を奮おうとするのか、本当に邪魔である。今ここには愛と優しさが必要なのだ。
ビシュシュシュ!
指弾!その弾丸は空気!指を超高速で弾く事で細く激しい空気の流れを生み出し、前方へ集約させる!流体力学を応用した不可視の連撃!
ドドドドン!
「ガヒュッ」
正確に喉を突かれた冒険者共が一斉に膝をつく。頭が高い、王を崇めよ。
「おねえちゃん、この人達変だよぉ。こわいぃ」
「あらあら、んー大丈夫そうだから先に行こうね。後でお姉ちゃんが見ておくから大丈夫よ」
流石新姉!度胸が座ってるぜ!
「ミシャさ~ん、ギルド登録のお客さんですよ~」
新姉が声をかけるその先にいるのは以前見た顔。まずい!
「は~い!いらっしゃい!当ギルドへのご登録ありがとね…ひゃああ!」
「お姉ちゃんはじめまして!はじめまして!!!」
「っ!!……は、はじめまして。ようこそおいでくださいました」
「お姉ちゃんここまでありがとう、僕もう大丈夫だよ!」
「うん、登録しても無茶しちゃ駄目だよ。それじゃあミシャさんお願いしますね」
去ってゆく新姉、危ない所だった。また会おう我が姉よ。おててふりふり。
「………」
「登録を頼む。母者の承認状も取ってきた」
「はい、問題ありません。ではこちらの書類にご記入ください」
「それで、転職はすぐに出来るのか」
「ふ、ふふふ、くふふふふふ!無理でーす!頑張って信用を稼いでくださーい!」
「リストロック!」
「あいたぁ!いたたたたた!」
「俺は舐められるのが大っ嫌いなんだよぉ、一体どういうことだぁ?あぁ?」
「さっきのお姉さんに言っちゃいますよ!」
「うぐ!」
こいつ!俺の癒やしを!ほんの数十秒のおねショタプレイを奪うつもりか!ゆ、許せねぇ!こんな悪は許しちゃあおけねぇ!!
「ふふふ、そんな顔をしても無駄ですよ。手を離しちゃった時点でバレバレです」
「お前俺を脅すつもりか、いい度胸じゃねぇか」
「全然違いますよ!ズルしないでちゃんとギルドに貢献して信用を稼いでください!」
うぐぐぐぐぐ…、まともな事を言いやがる。こいつは正しい、だが面倒くさい!暴力で解決したい!
「ちっ!分かったよ、それで誰を殺せばいいんだ?」
「全然分かってません!これっぽっちも分かってません!」
て事は金か、獲物を取ってこいって事だな。何だかんだ言ってもこいつらも結局組織、金を稼がせなきゃ使わせねぇよって事だろ。
「まずは講習です、その後に最低限の学力テスト。護衛や移送の仕事を頼めるか、法律に則って調査等が出来るかを調べます。何が出来るわかんないと仕事が依頼出来ませんからね。まぁ5歳では無理だと思いますけど!ぷぷっ!」
煽ってくれるじゃねぇかメスガキィ!講習だと?そんなもん握手一発でクリアだ!
「講習してくれるのはさっきのお姉さんですよ。だからサボらずに受けるように!」
「マ?」
嘘だった。
「はい、講習を始めますよ。みんな辞退して今日は一人しか居ないんだからちゃんと聞いて下さい!」
「なんでお前なの?お姉さんじゃなかったの?」
「そう言っておかないとここに来ないし、誰かを脅すと思ったからです」
はい。正解です。こいつなんでこんなに解像度高いの?俺が分かりやすいの?
「あなたが分かりやすいです。はじめますよ」
こいつまじでいい根性してるわ。
仕方ないので講習を受けた。
ギルドは謎の組織じゃなくて冒険者の組合、登録すると依頼が受けられる、成績や態度次第でポイントが溜まって昇級、実績次第で高難易度の依頼が回ってくる。
貴族には関わるな、ギルド職員には従え、敬語を喋れると上手い仕事がある、特技を伸ばせばそれにあわせた仕事が斡旋される。
武器は装備しないと意味が無い、ポーションを持ち歩け、魔道具屋でこういう道具が便利、野営の心得などなど。
正直俺に関係なくね?金なんて獲物狩ってくれば大量に手に入るんだ、SSS級冒険者になっても意味がない。転職しか興味ねぇよ。
という事を伝えると、
「転職出来るのはギルドに貢献した上級冒険者だけです!」
とのこと。
「他に質問ありますか?」
「うーん、そもそも転職ってどうやるんだ?なんでここでだけ出来るんだ?」
「さあ?一部の人達以外は何もかも秘密です。以前、勇者様は自分で簡単に変えていたそうですよ」
「勇者?勇者って何人もいるの?」
「え?一世代に一人と言われてますよ。物語も沢山ありますし。知らないんですか?」
まじかよ、勇者=転生者と考えていたが、沢山いるならその中の一人が転生者だっただけとかもあり得るな。全然関係ない可能性も否定できない。
「転職したらステータスってそのまま?」
「半分になっちゃいます。スキルはそのままですよ」
お?割と最悪かも?狂化は消えないか。
まぁいいか、大事なのは俺の体だ。ステータスが半分になっても素の体力が二倍になれば合計は同じ。
「転職って何度も出来るのか?」
「出来るらしいですよ。何度もレベル100まで上げられるのが勇者様くらいしかいなかったんですけど、アレキサンダーさんなら出来そうですね。2回目の転職でもステータス半分なので、今のステータスは半分の半分になっちゃいますね」
転職を繰り返して最強!と思ってたが難しいんだな。魔法も少し使える戦士とかそういうのが落とし所なのかな。
まぁ俺は魔法使いで賢者無双するからいいか!
「ところで今すぐ転職したいんだけど」
「駄目ですよ!言いつけますよ!まずは上級冒険者になってください!」
「じゃあ今すぐ上級ってのにしてくれよぉ、なぁ、わかるだろう?」
「大丈夫です!そう言うと思ってすぐに成れる作戦を立てておきました!」
「な、なに!ここに来て有能ムーブだと!?」
「ふふふ、ここから南、アンティカ国との国境の山には昔から赤竜が住んでるんです!赤竜は宝物を集めるのが趣味みたいで沢山溜め込んでるんです。これを撃破して溜め込んだ財宝を手に入れてください!」
「えぇぇぇぇ?知性ある生き物を殺して奪ってこいって最低じゃね?」
「なんで急にモラルを発揮するんですか?財宝だけでも大丈夫ですよ、絶対欲しいのはこう、なんていうか、王冠っぽいやつです」
「王冠っぽい?」
「まぁ、そうです。王冠をイメージして探してください。王冠じゃないですよ!でもほぼ王冠です。王冠はちゃんと王様が被ってます」
ほーん、なるほどね。
「わかった、この俺に任せておけ!」
竜退治!するかどうかはわからんが、竜とのバトルには期待だ。
すげぇつえぇのかなぁ?オラわくわくすっぞ!
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