第17話 5歳 幼女シェルパ

 竜退治かぁ、鬼退治に比べるとスケールが上がった感あるな。

 赤竜と言えば有名なのだと魔竜シューティングスターとか?ゲームだと大体火炎ブレス対策が必要だよな。

 オババに渡した氷晶があれば火炎も平気なんだが、返してくれっていうのもなぁ。まぁ無くてもなんとかなるやろ!


 対策が不安なのでギルドでの教えに従って店を回ってみることにした。

 武具屋を見に行ったがどれも振り回したら壊れそうだ。防具類はサイズが合わないので却下。

 魔道具屋という所にも初めて行ったんだが、貧乏なガキの行く場所じゃなかった。方位磁石が置いてあったのでそれだけ購入。面白そうなので金を作ってから出直そう。


 最後に行ったのが薬屋。ここも初めてだ。折角ファンタジー異世界に転生したのに薬草集めすらしていない事実を自覚して恥じ入るばかりです。

 薬屋と聞いて浮かんだのは傷薬やポーションや毒消しだったんだが、来てみると意外と品揃えが豊富で見ていて楽しい。

 回復薬だけを見ても、軟膏、飲み薬のポーション、傷口に当てる薬草、長時間回復し続ける飴など色々だ。それぞれ味違いがあったり効能も分かれていて、使いこなすにはある程度知識が必要なのかも。

 他にも痛覚麻痺、興奮剤鎮静剤、魔力回復、腰痛や打ち身肩こり、水虫対策に毛生え薬。薬師って結構おもしろいんじゃないか?母者も作れるんだろうか?転職先に薬師も悪くないかもな。

 ちなみにオババも薬師、母者の師匠でもある。


 そんな品揃えの中で目に付いたのが耐火ポーション。炎への抵抗力を得るらしい。

「やあお客さん、今日はお使いかな?」

「俺は正規の冒険者だ。この耐火ポーションの効果を知りたい」

「ええ!?ま、まぁ、この耐火ポーションを飲んでいれば焚き火に手を入れても火傷しませんよ。効果は半刻ほどです。と言っても火事に突っ込んだりしたら息が出来なくて倒れちゃいますよ」

「竜のブレスだとどうだ?」

「さあねぇ、気休めにはなると思いますが」

「他に火炎対策の物はあるか?」

「ウチにあるのは火傷ポーションくらいですかね。防火マントや火除の呪い道具と組み合わせれば効果は上がりますが、竜のブレスとなるとねぇ」


 とりあえず耐火ポーションと火傷ポーション、それと通常のポーションを購入した。装備品類はどうせ今の金では買えないし、今回はこれでいいか。


 しかし、南の山?国境?わかんねぇよ…、群馬と長野の県境の山とか言われて分かるのかって話だ。よく分からん山の何処かにいる竜を探すとか無理やろ。鬼の時は東の森って言われても分かんねぇから商人に同行したんだよな。

 うーん、、、、、あ。



「準備したぞ、そろそろいけるか?」

「ふぇ?何がです?」

「一緒に山行こうねって約束したじゃん!」

「してないです」

「聞け、どうせ持ちきれないから宝を半分やる」

「私も持ち帰れないからいらないです」

「素直になれ、金がほしいんだろう?」

「ほしいけど危険なのでいらないです」

「場所わかんないんです助けてください」

「しょうがないでちゅねぇ!お姉ちゃんが助けてあげまちょうかぁ!」

「ドラァ!!」


 カウンターを叩き割ってきた。

 もう引き返せない、行くしか無い!

 遭難が怖いので水筒と穀物の詰まった非常食を購入した。これが無くなったら野生化するしかない。

 いくぞぉ、闇雲にいくぞぉ、あいつの罠という気もしてきたがもう引けない!いくぜ!

 ……いくぜ!……いこう!……うん、絶対辿り着かねぇだろ。何か、何か策は無いのか。


「あの」

 磁石はあるから南は分かる。なら後は地図か!地図とコンパスが揃ったら隠し部屋もすぐに見つかるはずだ。

「あの」

 そうだ!山を1つずつ消し飛ばせばいいんだ!そのうち竜の山に当たるだろ!

「あの!」

「なんだクソガキ、俺は忙しいのだ」

「同じくらいの歳に見えますけど…」

「俺は年齢が足りない分を筋肉と知能でカバーしているからいいんだ」

「………」

「しっしっしっ、向こうへ行け」


 なんか妙なガキだ。派手な服装じゃないが新品じゃね?所作も綺麗だ。貴族か?

 ギルドの講習で貴族には近づくなと言われたばかりだ、俺は近づかないぜ。

「もしかして案内が必要なんじゃないですか?」

「え?(トゥンク)」

「竜と戦いに行くんですよね?薬屋で聞こえました」

「お、お前は場所がわかるのか?」

「はい。だからわたくしを連れて行ってください!」

 まじか、しらない子供が竜を倒しに行くと言ってたからって本気にしてついていくか?ついていくかもな、だってガキだし。


「お前なぁ、適当について行ってたりすると誘拐されちまうぞ」

「あなたは凄く強い冒険者ですよね?知っている人です」

「んお?」

「お願いします。手伝わせてください」

 うーむ、どう見てもこのガキはアンタッチャブルだ。

 だが馬鹿では無さそうだ。こんなガキが危険を承知でやりたいっていうならやらせてやろうじゃないか。俺はこんなガキの願いも叶えられねぇ男じゃない、偉大な王になる男だぞ。

 俺が守りきればいいんだ。俺は何も怖くない、今度こそ絶対に守りきる。


「そこまで言うならいいだろう。2日後の朝、街の門が開く頃にここに来い。日帰りで行くぞ」

「え?馬車でも2日はかかりますが」

「俺はハチャメチャ強い冒険者だから大丈夫だ。明後日は俺の言う事を聞けよ」

「わかりました。よろしくお願いします」


 さて、明後日の朝までに準備するか。





 2日後の朝、王都

「おうガキ、ちゃんと来たな」

「はい、よろしくお願いします」

「よし。気休めだがこの革鎧を身に着けて上からこのマントを付けておけ、防火になるし移動中に体を包んでおけ」

「?、はい」

「それとこの耐火ポーションは山に着いたら一応飲んでおけ、この火除の腕環もいらないと思うが付けておけ」

「はい」

「それとこれが中級ポーションだ、一応持っておけ」

「はい」

「それとこれは特別なお守りだ。絶対に手放すな」

「はい。え!?これは……」

「あと弁当を用意したから向こうに着いたら食べるぞ」

「は、はぁ」

「トイレは大丈夫か?忘れ物はないか?」

「だ、大丈夫ですよ!」

 防具屋に金を積んで調整させた革鎧と耐火マント、薬屋の耐火ポーションと魔道具屋の火除のまじない、そして謎の氷晶をオババから借り受けてきたのと、ついでに貰った中級ポーションだ。

 戦いになる可能性が高いんだからしっかり準備をしないとな。別にトラウマなんてない、俺は反省して改善できる男。






「よし行くか!ドラゴン狩りじゃ!」











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る