第15話 5歳 知恵無き者
「オレ、ハラ、ヘッタ、オマエ、クウ」
ウマ、ウマ、ヘビ、ウマイ、デモ、カラダ、カユイ、トテモ、カユイ
ナンデカユイ?フロ、フロ?、フロ・・・半年体洗ってねぇじゃねぇか!!
危ない危ない、ソロ山籠りで野生に馴染みすぎてしまったようだ。もう少しで引き返せない場所まで行ってしまう所だった。
今も体長1000mはありそうな馬鹿げた巨大ヘビ?をぶちのめして生でいただいている。とても文明人とは思えないぜ!まぁド田舎生まれで機械も何もない生活しかしてないが。
辛い冬が明けて春、獲物が多くなるので没頭してしまったな。暖かくなって痒くなってきたか。そろそろ一度帰ろう、母者も寂しがっているだろうし産まれた子にも会いたい。
手土産は……、そうだ、ずっと冷たいままの謎の氷晶でいいか、これから暑くなるだろうしな。氷の結晶を大きくした様な綺麗な宝石?置いておくと周囲を冷やしてしまうんだが、身に付けると寒さも暑さも感じなくなる不思議アイテム。これは俺が求めた神秘の1つと言っていいんじゃね?
冬に出会った雪だるまの親玉を倒して手に入れた。吹雪を吐き出すわ氷を飛ばすわでいかにも氷属性って感じだったが、今の俺は物理しか使わないので特に影響がなかった。寒い時は筋肉を震わせるシバリングで熱を生み出せるのだ。逆に熱い敵なら危なかったな。
早く魔法使いたいです。
「ステータス」
―――――――――
アレキサンダー
5歳
ジョブ 狂戦士
レベル 532
体力 53466
魔力 532
スキル
狂化ρ
体力+5%
体力+20%
体力+50%
体力+100%
体力+200%
体力+300%
体力+400%
体力+500%
鍛錬ω
天壌無窮
スキルアーツ
狂戦士化
――――――――――
レベルは500を超えた。強い敵を求めて彷徨ったがそれでも成長速度は鈍化している。
スキルアーツが増えないのは狂戦士の特徴なのかね、俺もかっこいいスキルぶっぱしたいです。好きなのは下り飛龍、地ずり斬月、菩薩掌とかですお願いします。
狂化はもう段階が分からん、俺はとっくに狂ってるって事なんだろう。まともなら山籠りなんてしないよな。俺がおかしいのはこのスキルのせいだ。
転職したら引き継ぎになるのかなぁ、だが全部消えて狂化も消えるならそれはそれでアリだと思う。
有り余る体力を使って地道なトレーニングを積んでるんだ、レベルシステムの恩恵が無くても俺はウルトラ強いぜ。システムは遊び、本当の強さは人の肉体と精神に宿るのだ!たぶん。
早速帰り支度をする。簡単な拠点には色々な不思議便利アイテムがあるが、氷晶程のものはない。また来るかもしれないし埋めておこうかな?でも場所がわからなくなりそう。持ち帰って売ろうかな?でも袋も何も無い、うーん・・・あ。
蛇の皮を剥いで袋代わりにすることにした。あれなら高く売れそうだし、普段から這いずってるんだから多少引きずって持って帰ってもたぶん大丈夫だろ。
まってろよー、兄ちゃん大急ぎで帰るからな。
翌日、王都。
カランコロン。
あぁいい音だ。文明の音がするぜ。冒険者ギルドはこうでなくちゃな。
綺麗な王都に不釣り合いな血と酒と汗の混ざり合う匂い。くっせぇな、折角昨日は体を綺麗にしてきたってのに。
(むぅ、ば、馬鹿な、し、信じられん。この王都に伝説のデビルチルドレンが)
(知っているのかライガン!)
なんか見たような顔がいるな、何もかもみな懐かしい。
「あら、君って前に他の町で会った魔物を売りに来ていた子じゃない?王都に来ているなんてお姉ちゃんビックリしちゃった!」
し、新姉!新姉じゃないか!
「あ!お姉ちゃん!どうしてここに?ぼくはここに引っ越したんだよ!」
「そうなのね。でも、あんまりここに来ちゃ危ないって言ったでしょ?」
「ごめんなさ~い、でも売りに来ないと弟と妹が困っちゃうから」
「あらあらお兄ちゃんなのね、それじゃ買取のおじさんのところに行こうね」
新姉が手を差し出してくるので食い気味に握りしめる。はぁ、癒やされるぅ!僕と契約してお姉ちゃんになってよ!
「おいおい!いつからここはガキのお守りをするようになったんだよ!」
「うろちょろするんじゃねぇよガキィ!」
昼間から酔っ払った不貞冒険者共が絡んできた。よくある事なんだが、子供を脅して何か得るものがあるんだろうか?実に不思議である。
「お姉ちゃんこわいぃ…」
「大丈夫よ、待っててね。ギランさん、アントンさん、相手は子供ですよ。引かないなら罰則がありますよ」
「ちっ!覚えてろよ」
不満たらたらで引き下がった。いや下がるのかよ、何しに来たんだ。まぁ大体あんなのは後で襲ってくるんだ。俺が金を得たのを見てついてきたら始末してしまえばいい。だがお前らのお陰で新姉に甘えることに成功したからな!優しく叩きのめしてやるぜ。
「僕くんこっちよ。ヤムさ~ん買取のお客さんです、よろしくおねがいしますね」
新姉は窓口まで案内して去ってしまった。さようなら温かい手のお姉ちゃん、また会おう。おててふりふり。
「随分小さいお客さんだね。買取っていうのは?」
「あぁ、デカいから表に置いてある。来てくれ」
「え、えぇ?君さっきと雰囲気違わない?」
表にはクソデカ蛇皮が置いてある。とてもパンピーに運べる重さじゃないしそこらのナイフで刃が立つ代物じゃないので安心して置いといた。
これでも取ってきたのはほんの一部だ。艷やかで伸縮性があり硬い。一級品の皮だろ。
買取のオッサンがはしゃいでいたがおっさんにはしゃがれてもな……。5トン程の皮はオークションが云々と言っていたが面倒なので買い取ってもらった。金貨3500枚なら十分だろ、足りなかったらまた取ってきたらいい。
適当な袋を買って小物を突っ込んだ。力を込めると水が出る水差しとか、馬鹿みたいに丈夫な金属を叩いて作った鍋とか、ずっと綺麗なままで寝心地ばつギュンふわふわ水色羊毛とか、金は十分だし捨てるのも勿体ないので持って行く。
金は出来た、土産もある。よし、兄ちゃん帰るぜ!
「おい待てガキィ!それ置いていけや」
「知るかぼけが!」
両手両足をへし折って出発した。やっぱ俺ってこんなもんだ、家には長居しないようにしよう。
その日の午後。
「ただいま!今もどりました!」
「ア、アレキサンダー!」
「母者、ご無沙汰しました。金を持ってきので産まれた子に会わせて欲しい。大丈夫、すぐに出ていきます」
「何を言ってるの、ここはあなたの家でしょ」
「ですが、俺がここにいるとみんなに迷惑が」
「大丈夫よ、村のみんなにはお金を撒いたから、誰もあなたを怖がったりしないわ」
「は、母者!あの金で買収を!?」
「そうよ、人の心はお金で買えるの。ここはあなたの家だからね、安心して帰ってきなさい」
「母者ー!」
「ところでいくら持って帰ってきたの?」
やっぱり金なんだよなぁ!うじうじ悩んでいたが母者は金で全てを解決してしまっていた。これからも安心して金を運んでこよう!母者が上手く金を使ってくれる!
「イエス!」
母者も俺の帰還を喜んでガッツポーズを決めている。家族ってあったけぇ。
産まれた子は弟だった。かわいい、かわいいんだが、寝てるだけだな…。起きててもまだ話せないし、正直言うと思ってたほど面白味はない。まぁ赤ん坊ってこんなもんだよな、普通の赤ちゃんでみんな安心だろう。
謎の氷晶を渡したが怖がって返されてしまった。危ないことは無いと思うんだが、あまり価値が高いものを置いとくのもよくないかな?代わりに汚れないモコモコ羊毛を渡しておいたので弟と一緒に楽しんで欲しい。
「オババー、オルカー」
「なんだクソガキ、帰ってきたのかい。まだまだママが恋しいのかい?ケェッケッケ」
うぜぇ。
「オババ、まだまだだが色々見て回ってるよ。これは土産だ」
実家で返された謎の氷晶と、元々用意していた洗濯不要の羊毛を渡した。羊毛はガッツリ圧縮してもふんわり戻るので結構沢山持ってるんだ。
「ふん、なかなかの物じゃないか。だが魔物から奪うだけじゃ目的は果たせないよ。これらが手に入る場所なら他にも沢山の価値ある物があったはずだ。学びな、今のあんたじゃ取りこぼしが多すぎる」
「学び、学びかぁ。俺天才だからなぁ」
「こりゃ駄目だね」
一日ゆっくりした後、ギルド加入のために一筆書いてもらって家を出た。
母者が文字を書けてよかったよ。
とにかくこれでギルドに所属できる。もう一度ギルド職員を説得して転職だ!
魔法使いてぇぇぇぇ!
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