第14話 4歳 旅立ち
「オババ!産まれる!産まれそうだ!ヒッヒッフー!ヒッヒッフー!」
「何馬鹿なこと言ってんだ、シャキっとしな!」
「大丈夫だ落ちついている!乗れ!今日の俺は新幹線ひかり2号だ!!」
「触るんじゃないよエロガキ!あたしはまだ乙女だよ!」
「うぐ!ウェッ!ハァ、急に落ち着いたわ。急いでくれ。オウェェ!」
「失礼なガキだ、これでも昔は薬効のある草花を扱う事から花の聖女と呼ばれて、貴族のボンボンが山盛りの花を抱えて愛を囁いたもんだよ。男どもはみんなあたしを狙ってて何度も襲われたかけたねぇ。ひぇっひぇっひぇっ!」
「おうげぇぇぇ!えぼろろろろろろろ!!」
なんて話しをしやがる!殺す気か!い、いきが、息ができねぇ!
「何だその反応はァァァァ!」
「す、すまん。先に行ってくれ。後から必ずおいつくぅぅエロロロロロロロ」
「チッ!まあいい、あんたは呼ばれるまで絶対に近づくんじゃないよ」
「は?いや何か手伝えることあるだろ?駄目なら邪魔にならない場所で見守るさ」
「あんたはどこに居ても必ず邪魔になるから駄目だ」
はあ?まじはぁなんですけど?ちょっとお話が必要かなぁ。
「今も既に顔がうるさいじゃないか。あんたは離れた所でぬるい湯を用意しときな。そもそも男は外で待つものって決まってんだよ、女衆が来てお前がいたら怖がる。控えな」
「わかったよ。じゃあ畑にいるからな、何かあったら絶対知らせてくれよ」
なんか知らんが排除された。まぁ分からんではないよ?村の人間で俺とまともに話せるのは母者とオババだけだ。0歳の頃から村を走り回る俺は恐怖の対象だった。沢山肉を分けてやったのも感謝はされてると思うが恐怖を助長したかも。
どんな弟妹が産まれるか分からないのに助けに来てくれるだけで御の字だと思うか。
居場所がないので畑に来たがやることがない。俺が弄った畑は育ちが悪くなるんだよなぁ。
もしかして覇気とか出ちゃってるのかもしれん、俺の覇気に当てられて萎縮した野菜が成長を拒むとか。俺が王になった時に毎年不作とか困るわぁ。なんて。
「はぁ、あほくさ」
そわそわして馬鹿な考えしか浮かばない。母者は二回目の出産だしオババも女衆も付いてるんだから平気だとは思うんだが、なんかなぁ。
湯を用意しとけと言われたが使うわけがない、その程度お見通しだ。何かで時間つぶしとけってだけの事。
俺はここに居ないほうがいいのかな。考えてみるとここに残る理由は殆ど無い、他に居場所がないだけとも言える。
これから産まれる子には謎の愛情を感じているが、俺は居ないほうがいいんだろうな。友達も出来にくくなるだろうし、村にも馴染みにくいだろう。
鬼のちっこい姫にソーマを使った後、オババは世界中を探して見つけてみろと言った。ここはファンタジーな変な世界、きっと世界には沢山の神秘が隠されているんだろう。
探しに行くか。ソーマという分かりやすい目的も出来た。転職して魔法も使いたいし、勇者ってのも見つけたい。
勇者の洞窟で伝説の剣を引き抜いたり、禁断の地で12の封印を解いたり、地下遺跡に眠る古代文明の超兵器を破壊したり、深い森に潜む竜王と死闘を繰り広げ、宇宙人のロボット兵器を打ち砕くんだ。うん、いいね!
まず目指すは王都!転職して魔法を使うんだ。回復魔法がいいな、見たこと無いけど多分あるだろう。治療院とかあったし、大体神官が使ったりするんだろ?
「よし!決めた行くぜ!」
まだ見ぬ弟か妹よ!兄は必ず会いに戻るぜ!
思い立ったが吉日。俺は何も告げずに旅立った。
3日後、王都。
「転職したいと言っているだろう」
「で、ですから、誰でも許されているわけじゃないんです。決まりなんです!」
「レベル100を超えているのは見せただろう?誰か殺せばいいのか?」
「ひぃぃぃ!誰か!誰か代わってくださいぃぃ!」
哀れな受付嬢の声が叫ぶが名乗り上げるものはない。窓口の内側では皆が目をそらし、外側では意識を失ったクズ共が転がっているだけだ。
「さっさとその決まりというのを教えろ!手遅れになっても知らんぞ!」
「ひゃいいい!ギルドの信用です!今信用はガンガン下がってます!」
ふむ、もっと優しくするべきだったか。でもぼくいそいでるんです。
「分かった、暴力で解決する気はないので安心してくれ。その信用を得る方法を教えて欲しい。なるべく早く今すぐ達成出来るものがいい」
「あの、暴力で転がってる人が一杯いるんですけど…」
周囲で転がっている雑魚ども20匹。
「よく見ろ、誰も死んでない。これは強力な信用になるだろ。なぁそうだろう?そうだと言え」
「そうです!」
「じゃあ転職だ」
「はい!誰も助けてくれないのでもうOKです!では冒険者登録証を提示してください!」
「なにそれ?」
冒険者登録、そういえば初めて冒険者ギルドに入った時はそういうもんだと思ってたな。田舎の出張所には無かったんだ。
流石に誰を転職させたのか分からないのは物凄く不味いらしく、最低限登録だけはしてくれと泣いて頼まれたので仕方ない。
「あ、本当に子供だったんですね。4歳なら保護者さんの許可が必要です。いないなら孤児院の大人とか、信用できる人でいいですよ」
親、母者か。居ないことにして代理を立てる?それは嫌だな、人の道に外れる気がする。だが戻りたくない、戻るなら半年は経ってから戻りたい。だって格好悪いから。
「すまん、14歳だったわ」
「そうだったんですね!15歳未満は保護者の許可が必要です!」
喜びを全開にしてちょっと跳ねてる受付の女、俺こいつ嫌いだわ。
こうしてやむを得ない理由により、半年間の足踏みが確定してしまった。
狂戦士のレベルが半端だったからいいんだよこれで!山籠りでも何でもやってやるぜ!!
――――――――――
「ねえ、村の裏に洞窟見つけたんだ!一緒に見に見こうよ!」
「あぁあそこな、もう必要なアイテムは取っちゃったからいいよ。特にイベント無いし」
最初の村の側にあるダンジョンはチュートリアル用の小さな洞窟で、雑魚のスライムとボスのゴブリン、そして宝箱のポーションがあるだけだ。でも実は宝箱の後ろ壁を調べた先に経験値が2倍になる隠しアイテムがあるんだ。
周回を楽に進める為のアイテムだが、現実となった今では絶対欲しいチートアイテム、スライムを倒せるようになったらすぐに攻略した。
「えー、ついて来てよう」
「どうしようかなぁ」
幼馴染のミレイはヒロインの一人。既に美少女の片鱗を見せているけど、ミレイは地味なんだよな。
特性は純ヒーラーなんだが、バフが扱えないし武器攻撃も弱い。見た目も純朴な村娘そのままで、可愛いけど俺の推しには遠く及ばないわ。
「まぁ、仕方ないからついていってやるよ」
頭をポンと叩いてやるとニヘラと笑う、やっぱりヒロインは全員確保しておきたいのが男ってもんだろ。
「ありがとー!いこいこ!」
物語が始まるのはまだ先だ、それまでにレベルを上げて、ヒロイン以外の可愛いキャラも惚れさせてやる!
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