どうすりゃいい?

「結果は良好です。よく頑張ってきましたね。来週には、無事に退院できるでしょう。」

「え?まじすか?」


目覚めてかれこれ3週間、リハビリと検査の毎日を送った私だがようやく退院できるまで回復したらしい。

これでようやく、私もダンジョンとかに行くことができるのか。

まだ見ぬ知らない世界に、私は期待を胸に膨らませた。


「ではでは、私もダンジョンとかにいけるようになるんですね!?」

「行けませんよ?」

「なんで?」


なんでや。



「ダンジョンは魔力、または気力オーラを解放した人しか入れませんから。それ以外の人が入るとダンジョン内の魔力に押し潰されて死にます。」


えぇ………。

なら、私も魔力を解放すればいいのではないのですか!?


「魔力を解放するにはある程度の魔力の負荷に耐える体と適性と魔力のコントロールが必要ですし、気力に到ってはまず今の流歌さんには無理でしょう。」


なんでや、世界。

今の説明を聞いて胸がぺしゃんこになった私は、そこの机にへばりつく。


「んあああんもぉーーーどうしてだよぉ………」

「でも、流歌さんの適性値はとても高いです。もしかすると、初期観測値は一番上の『黒』を叩き出すでしょうね。」

「んぇ!?それホントですかぁ!?」


思わず私は飛び上がる。

黒適性は、世界に0.2%の逸材である。

この世界はダンジョン関係は全てにランクがあって、ランクの区分付けは色だ。

一番下から、銅、緑、黃、水色、青、赤、深紅、白、黒。

その上には『特色』がいるのだが……それはまた別の話。

というか、『特色』は人外の集まりだし、私がその一歩手前とか実感が湧かない。


「というか、それ嘘ですよね。1年前に事故って最近目覚めたばっかの人間ですよ?

そこまできたら転生チートもらってる域というか……」

「いえ、本当ですよ。ほら。」

「……うわぁ、マジじゃん……えぇ……?」


差し出してくれたタブレットを恐る恐る見ると、私のステータスが記録されてあった。

そこにはなんと明らかに突出しているグラフが……。

私のステータスを数値にすると、こうなる。



◇□◇□◇□◇□


蒼井流歌  十四才


称号【隱ソ蠕玖????逾樊?シ縺ョ逅???邇九?逵シxxx】

※レベルが不足しているため、情報開示はできません。

尚、称号は第三者には閲覧不可。


能力観測値

生力:500 銅

筋力:150 測定不可

硬力:1200 緑

魔力:13690 黒(檳榔子黒)

抗力:5000 水

気力:5060 水


魔術·魔法

なし


◇□◇□◇□◇□


「ほら、すごいステータスしてるでしょう?」

「いやいやそんなので収めちゃいけませんよ!?これ水色どころか青級くらいあるじゃないですか!?やっぱおかしいですって!?」

「んー?私は貴方がしてきたことを考えれば妥当だとは思うけどねぇ?」

「そんなことないですって!私一体なにしたらこうなんですかぁ!?」


やっぱり転生チートじゃんかぁ!1年後の世界じゃなかったんだってぇ!

何か意味わからん文字化けしてるしぃ!

やばい、最近見た転生チートを手に入れた主人公がなんやかんやあって鬱になる漫画の内容が脳内リフレインしてくるぅ………。

ゔぁぁ、頭がぁ。

友達だった子に友達じゃないって言われるくらいの脳破壊がぁ!


「というより、貴方は覚えていないのですか?」

「うぐぅぅ……んぇ?何をですかぁ?私やっぱ違法なもんに手を染めてたり?」

「――――!いえ、なんでもないわ。」


――――これは、シリアススイッチ踏んじまった予感。

というより、桃佳さんがああなったり、今みたいに深刻な顔させてしまったり、私は一体何してたんだ?

因みに、桃佳さんは気付いたら横にいたり呼び出そうとしたら1秒以内現れるという、いわゆるヤンデレになってしまった。

最近聞いた言葉は『もう絶対に話しませんからね………♡』という典型文。

……愛ほど歪んだ呪いはないよ(遠い目)


「でも、お金も無いので学園やギルドの強化特訓も受けられませんし、働くしかありませんよねぇ。」


はぁ、とまた私は机にへばりついた。

チラッと、私は顔を覗き込む。

そこにはとてもとてもお可愛いお顔が―――――


「…………………スゥッ…」


なんか気まずそうな顔をしていた。

え?何?なんかあったんですか?これ。


「あー、なんか、私が悪いことしたんなら謝ります。

この前プリンこっそり食べたことも謝ります。

ですからお願いします。この空気はなにがどうしたんでしょうか!?」

「貴方だったんかい!あれ高かったんだぞ!まったく!

……いやでも、この件に関しては私も悪いですしね…

怒らないでくださいよ?冷静に聞いてください。








実は貴方は死んでいることになっていて、戸籍が無いんです。

貴方の両親が、貴方を死んだことにしていたようです。」


………え?

怒らないでって言われたからなんとか耐えたけど、普通にガチギレである。

許せん。やっぱクソゴミだわ。地獄で畜生の餌にでもなってくれ。

というかそれってなんだか碌なことにならない予感……

そしてなんで私死んでんだよ。

やっぱり転生やんけ。


「……私どうすれば?」


目の前の残念系美人が意を決したように告げた。


「――である私、神野司の養子になりなさい、なに、悪いようにはしませんよ。」


oh.........OMG......

やっぱり、碌でもないじゃねーか!

なんで私が世界10%しかいないの英雄様の養子なるんだよ!?


「あ…あはは……」

「笑ってる場合じゃあないですよ?」


女神は慈愛の微笑みで私に尋ねてくる。


「私の養子になりますよね?選んでください。無論ならなくてもいいんですよ?そのときには

―――ふふっ。」

「アッハイナリマスヨウシニシテクダサイ。」


反射で答えてしまった。

もしここで断るもんなら、あの微笑みが恐ろしいことになると一瞬で察した。

ということで、私は残念系美人の養子になってしまいました。


「……ッッッッ!!これからよろしくお願いしますね!」


残念ながら、私はよろしくしたくありません先生。

何故死人扱いされ、何故この残念系美人の養子になってしまうのか。

もう考えるのをやめてしまおう。現実逃避できない。

一年の間に、現実は苦く苦しいもんになったもんだ………。


「これから、どうすりゃいいんだよ……。」

「そんなの私の養子として、暮らしていけばいいのです!」


そうじゃないよ。先生。

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