今の現代。

あれから1週間がたって、その間に色々知ることができた。

一番驚いたのは、私が住んでいた日本の名前と都道府県すべてが変わっていたこと。

お国の名前は日本から日城にちじょうになっていたし、今いる埼崎さいざきは元埼玉県だ。


あとはダンジョンなるものが世界に現れたらしい。

それに伴って、魔術やら魔法やら……一気にファンタジックな世界になった。

1年前の人間からするとこんなの夢のまた夢だし、目覚めたときに見た空飛ぶクジラとかも魔術で動いているらしいし、とても胸が躍る世界になったなぁと、思う。


けれど昔は、ダンジョン内の魔物が地上に溢れるように出てくる現象―――大逆乱スタンピードや魔物の暴走によるダンジョンの破壊――殺暴走デストラクションetc‥‥ダンジョンによる被害が後を絶たなかったらしい。


だが政府は『ギルド』を立ち上げ異城攻撃者アタッカーズを増やして全面的にサポートし続け、ダンジョンの魔物を国民に討伐させ、ダンジョンが起こす現象――異城現象アクションの要因である魔物の数を減らし、ダンジョンで採れる資源を安定して確保できるようになって、文明が発達し――今の日城があるというわけ。


まーようわからんしうまくまとめられたわけでもないけど。私の時代より政府が優秀ってことはよくわかったわ。

税金下がってるといいなぁ。


「蒼井流歌さーん。起きてますかー。」


んと、どうやら検査が始まるらしい。

私の意識が復活するのは奇跡なことのようで、こうやって何か変化がないか検査されている。

それと同時に、両親が死んだこと明かされた。

……あー。私の両親は人間の屑だったし、別に死んでも何も思わんけどさぁ……。

せめて、今まで苦しませた人の分だけ、是非とも苦しんでくれ。

私の苦しんだ分は二倍でなぁ……(暗黒微笑)

そういや妹は元気かなぁ……。


「流歌さーん?もう、失礼しますよ?」


待たせてしまった。すまぬ。

しびれを切らして入ってきたのは例の泣きじゃくりお姉さん――三月桃佳さんだ。

三月さんは私が起きていたのを知って、少し不機嫌そうだ。


「起きていたなら返事してください!全くもう。」


『もう』ってのが彼女の口癖。

そんなに言うと牛さんになっちゃうぞと私は言いたい。

まあでもその立派な牛さんおっp「なにを考えていらっしゃるのですか??」ひぇっ。


桃佳さんこわすぎ。

ちびる。

私は全力で頭を下げて上げてを繰り返す。


「まったく。ふざけてる余裕があるなら今日はキツめにしてもらいましょうかね。」


桃佳さんはそっぽ向いてしまった。

………それは勘弁してほしいなぁ。

でも行かなければならないので奥の手、使います。


ベットからゆっくり降りて立ち上がる。そして桃佳さんに近づく。

そして耳元で囁く。


「ごめんね、桃佳さん。だから、今日も優しめにしてくれないかな?」

「ひゃぁっ!!?………嫌です…絶対駄目ですっ!」


私はイケボを持っている。それを使って。


全 力 で お 願 い す る 。


けれども、今日の桃佳さんは厳しい。

このままでは限界が来てしまうっ!

くっだがあと一押しだ!

持ってくれよ!俺の声帯!


「お願い。ねっ。私何でもするよ?桃佳さんのために。」

「ひぅっ……そんなこと言ったってぇ!駄目なものは駄目ですっ!!」


何っ!2ターン耐えただと!?

クソッこれ以上はぁ!!


「ねぇおねっ!?ゲホゲホッ゙!!ゲホッゴホッ!!」

「だか――ぁ、ぇ、あ、だ、大丈夫ですか!?」


あーやっぱりこーなったわ。

私の体、事故の影響か虚弱になってるんだよねぇ。

あまり心配はかけたくなかったけど、ちょっとやっちゃたなぁ。

やはり、ワードセンスを磨くしかないか。

数分後になんとか咳が収まった。


「ん゙ん゙……はぁ、あははごめん。変なこと言ったよね。ごめんね。」

「いえ…大丈夫です。」


ん……あ、あれ?なんか様子が?

えぇ、なんかしちゃったかな、謝るしかないかぁ。


「あ…えと、本当に「大丈夫ですよ。」


………なんかほんとにやっちゃったかなぁ!!!

ほら!?なんか目がドロドロしてるよ!?綺麗な空色の目がまっくろくろすけなんですけど!?

出てくんなよ!!


「ほら、早くしてください?今日は流歌さんに合わせていつもより優しくしましょう。」


悲報、桃佳さん病んだ。

この手のタイプは怒らせたらあかんやつや……絶対そうや……。

そそくさと桃佳さんが用意してくれた車椅子に乗って、検査室へ向かう。

その途中でも桃佳さんただならぬオーラをひしひしと浴びている…!!!

チラッと桃佳さんのお顔を伺うと……!

「………ニコッ」

「ヒェッ」


どうやら、私は終わりっぽいです。

いや、めっちゃ嬉しい。嬉しいんだけども……!

何故そんなに私にそんな感情を向けるのかぁ……。私答えられねえよぉ…おほほ。


思わず胃が痛くなって胃を押さえた。そしたら、桃佳さんが、

「胃が痛いのですか?大丈夫ですか?そうだ――」

さっきよりもオーラ全開で私に尋ねてくる。

それに私は答えながら、思った。



――私本当に異世界転生してんじゃね?少なくともこんな激重美女は知らない。


助けてくれぇ………。



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