国際法のない世界
Folge.16:コード20
―マリア銃殺事件から7日後。
『”ドイツ第三帝国武装親衛隊よりドイツ国時間今日、16時30分。我が帝国はドイツ国時間昨日、隣国神聖ヴァルトグロース帝国と戦争状態に入ったことが発表されました。それに伴い、帝国国防軍総司令部は今日19時にルイトポルト・アレーナ展開区域にてヒトラー総統の公開演説を開園することを発表。既に会場では―”』
俺はラジオを聞きながらタバコを吸う。
やれやれ、アルデンヌから帰ってきてちょっとしたらまた新たに戦場か・・・・・・どうせ直ぐにでも俺に召集がかかるだろうな。
その時、胸に付けている無線機がジジッと音を鳴らした。
「”ホーエン中佐、帝国国防軍総司令部参謀本部よりコード20の応援要請が発せられました。今すぐに向かうようお願いします”」
ほらな?言ったそばから。
「”こちらホーエン。要請を受理する。」
俺はタバコの火を消し、乱雑に置かれていたStG44を背中に背負った。
「はぁ、平和的安寧はこの世には無いのか?」
気が滅入るが本部の命には逆らえない。俺は玄関の扉を押して外へ出た。
『”―とのことです。ドイツ国防軍総司令部の臨時戦線発表によりますと既にポーランド・ソヴィエト大森林に侵攻しており、半分以上を占領済みとのこと。武装親衛隊は帝都からヴィルヘルム外務大臣を救出し、戦略支部へ撤退したとの戦線発表がありました。”』
◆◇
―同刻、ドイツ第三帝国総統官邸会議室にて。
「ドイツ第三帝国ヴァルトグロース戦略戦線本部には現在我が国防軍総司令部参謀本部より指令の本土より陸軍兵を輸送する輸送作戦、コード20を空路にて実施中。報告によりますと戦闘機との交戦は全部で37件。人兵との航空戦は138件で、被害はMe 323が約7機、Do 17が2機、同K型が4機、Fw 190 F-8が3機の撃墜で人的被害は574人の損失です。コード20の輸送完了兵力は陸軍歩兵隊が約七千人です。」
ドイツ第三帝国国防軍最高司令部参謀総長のフランク・ハルターは椅子から立ち、資料を見ながら言う。
儂は質問した。
「輸送しているのは流石に歩兵のみでは無いよな?勿論兵器、武器、兵站も並行しているのだろう?後、七千人もその戦線本部に入るのか?」
フランクは顔色を変えず淡々と言った。
「勿論その他の物資も並行して輸送しております。そのため、撃墜された輸送機分の物資は損失しております。うまくご報告できず申し訳ございません。戦線本部は神聖ヴァルトグロース帝国・・・・・・略名”第一帝国”領内の都市を少数精鋭で制圧し、その都市・・・・・・名をベルテンベルクと名付けました。まぁその都市を活用しております。」
「なるほど、把握した。
立ち上がったのはオットー・フォン・アイゼンベルク。帝国国防軍最高司令部総長で
ある。
「はっ。PSWには我が帝国陸軍、空軍で編隊して現在はラジオ放送より発表された戦線よりもはるか先の目標D地点まで制圧しました。目標
「では優勢なのだな?」
「はい。しかし、本当ならば今すでに最終目標地点Fまでたどり着けているはずなのですが地点Dで第一帝国軍が援軍が押し寄せているのであまり好ましくありません。現在、ドイツ本国にいるアルデンヌ帰りの兵士及び将校やヴィシー駐屯兵士に参謀本部名で応援要請をかけました。」
「全く、これは貸しだからな?」
フランクは呆れたように言った。
「ええ、今度何か奢らせてください。っと以上になります。」
応援要請をかけた、か。人員が少ないのか?でないと古い王政帝国主義国なんぞに足止めを食らうはずがない。
「PSWの人員配当と現時点での損害は。」
「人員は陸軍240人、戦車30台。空軍140人、戦機70機の内、人的被害約50人、兵器被害6台。空軍人的被害約20人。戦機10機、です。」
やはり正面突破作戦で最前線のはずなのに明らかに少なすぎる。流石に舐め過ぎではないだろうか。
「それでは流石に少なすぎるぞ。召集するよりも先に人的制限についての見直しをせよ。」
「わかりました。各上級将校と共に人的改革案を創案します。」
「頼んだぞ?舐めるのは良くない。さて、次に領内に居る親衛隊の状況について教えてもらおうか、クラウスよ。」
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