Folge.14:会談―資料―

私はあの後皇女と政治事情も絡まないお互いの趣味など当たり障りのない話しをし、別れた。会食は特に式目がないのか皆各々のしたいことを成していた。当然私はこの会食の中心人物なので勝手に帰ったりはしてはいけない。一応料理も口にしてみたがはっきり言って味が薄い。そのせいもあってなのかとても不味く感じた。早くドイツに帰ってシュヴァイネハクセシュヴァインスハクセ(※ローストした豚脚。ドイツ料理)を食べたい。


まぁ私が感じた料理の感想などというどうでもいいものは一旦置いておく。


会食はシュヴァルツェ二世の下手くそな演説で幕を閉じた。あんなの心を全く揺さぶられない。やはり我が総統マイン・フューラーは偉大である。

内容的には「我が帝国とドイツ第三帝国の会談が成功するよう我が神に祈るとともに永遠なる帝国の拡大と繁栄を願う」という帝国主義国らしいものだった。全く馬鹿らしい。


さて、今やるべきことに集中しよう。


今私は部屋で我が国防軍がまとめたこの神聖ヴァルトグロース帝国の地図を広げている。普通なら領空侵犯などとなり一気に国際問題になるのだが、送迎機ならば私をこの国に送ると言う名目があるので入っても特に領空侵犯とはならない。この資料はこの送迎機が帰りにこの帝国の上空を9時間かけて旋回して入手したものをドイツに一旦送り、そこから私側に急ピッチで送られてきたものである。


地名などは我が帝国の親衛隊が明日この帝国の各地に派遣される予定なので追々埋めていけばいいだろう。今は形、国土、植生がわかっただけでも大儲けである。


地図によるとこの帝国の領土は210,000km²。つまり、大体英国ブリタニアンとほぼ同じ領土である。帝国を名乗るには小さい領土だが帝国主義時代ならば他国に植民地を持っているだろう。フッ、そう考えると正に大英帝国ブリティッシュ・エンパイアそのものではないか。この世界でもバトル・オブ・ブリテンならぬバトル・オブ・ヴァルトグロースをするか?

まぁそれは冗談として、地形だ。地形は周りが山脈と大森林に囲まれた自然の要塞だ。

我がドイツの位置がその大森林に連なるような形にいる。大森林はその国境のみならずぐるりと国を囲むような形となっている。山脈はそれに食い込んで存在している様だ。領土を大きくして大森林を追加したスイスシュヴァイツを想像してくれたほうがいい例えだ。


はっきり言って我が帝国の最大の強みである電撃戦は使えないと言っても過言ではない。確かに寒くはないがあまりにも山と森で入り組みすぎており、侵入することすら容易ではない。やるならば英国ブリタニアンと同じ空中戦になるだろう。


―コンコンコン


「ヴィルヘルム様、お取り込み中のところ申し訳ございませんが間もなく会談の時間です。なるべく急いで準備してくださいますようお願い申し上げます。」


扉越しにマリアの声が聞こえる。


「わかった。すぐに準備する。」


私は地図と資料をバッグの中に入れ、協定書類や宣戦布告書などの確認をした。


さぁ、既に戦争は始まっている。




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