Folge.13:会談―会食②―

人混みの中を暫く進むとそこにはこの国の貴族の令嬢と思われる少女と話しているオレンジ色のワインを持った男がいた。


その男は私の存在に気づいたのかこちらを見て話しかけてきた。


「おっ丁度良いい、お会いしたかった。私はこの帝国で外務大臣を務めております。パウル・ヴェーデル・テュルーエと申します。」


パウルはそう言い、手を出してきた。


私はパウルの手を握りながら言う。


「はじめまして。ドイツ第三帝国外務省を束ねております、ヴィルヘルム・フォン・ライングラーフと言います。」


パウルはニコニコしていた。どうやら宰相のような偽の笑顔ではないようだ。


「貴方がドイツ第三帝国の外務大臣ですか。確かに分かりやすく国旗を腕につけていますね。」


そう急に話しかけてきたのは先程パウルと話していた貴族令嬢だ。


「ええ、この紋章は我が帝国を象徴するとても大切なものです。して貴方は?」


「申し遅れました。私は神聖ヴァルトグロース帝国第二皇女のエカチェリーナ・フォン・ヴァルトグロースといいます。」


なんとこの国の皇女であった。まさかこんな早くに会えるとは・・・・・・運が良い。

しかし、エカチェリーナとはロシア帝国ルッシライヒの女帝を連想させる名だ。先程出たスヴェトリャーナ侯爵もいたことだしもしかするとソ連のような国が存在するのかもしれない。


「エカチェリーナ皇女殿下ですか。少し質問なのですが・・・・・・母方、もしくはこの国の歴代皇帝に他国の王族などいますか?例えばそう、スベトリャーナ侯爵のような。」


エカチェリーナは驚いた顔をして言った。


「貴方、スヴェトリャーナ侯爵をご存知で?」


「いえ、先程クローヴィス公爵と話していましてね。そこで話題に少しだけ上がったのですよ。それでエカチェリーナと言う名を聞いたものですから・・・・・・ほら、発音が似ているじゃないですか。」


「貴方有能ですのね。」


「恐縮です。まぁ伊達に外務大臣を務めているわけではないですが。」


「まぁおっしゃるとおり現帝国皇妃、つまり私の母になります。母は旧スィニエークストリャーナ神聖王国、今のラボーチィ平等主義共和国連邦の王族でした。そして最後の王族でもあります。母は神聖王国時代に父、シュヴァルツェ二世に嫁いできました。そのときは”両国の関係をより深めるため”という名目がありました。そしてその名目通りに結婚し、そのまま皇妃になりました。しかし、その後母の母国である神聖王国で労働者階級、つまり最底辺に位置する階級の人たちによる労働革命が起きてそれが成功してしまい、神聖王国王族は処刑されるか島流しになりました。だから母は神聖王国最後の王族なのです。エカチェリーナという名は神聖王国の王族苗字です。」


「フッw。」


「なっ何がおかしいんですか!」


「失礼、私が知っている国と全く同じみちを歩んだ国があるとは思いもしなかったものでして。何もかもが一緒です。そしてその国は・・・・・・いえ、何でもありません。」


まんまソ連ではないか。まさか異世界に来てもソ連があるとは。そして平等主義とついているがこれはもう隠すことなく社会主義、或いは共産主義ということだろう。ということはだ。この世界にも”カール・マルクス”のような人物がいたことになる。共産主義思想というものすごく危ない爆弾思想を生み出した人物がな。


「・・・・・・知っている国とは?」


「はい。貴方方も御存知の通り私及び我が帝国は俗に言う異世界から来た国です。その世界にはかつて栄華と永遠なる繁栄を誇ったロシア帝国ルッシライヒという国がありました。この国の皇帝愚かなことに生活が苦しすぎるから戦争をやめてくれと言う国民の話を全く聞かずにいえ、聞こえないふりをした結果、革命家によって革命を起こされてしまいました。それにより帝国皇族は全員処刑され血が後世にのこりませんでした。この革命により建国された国はソヴィエト連邦という社会・・・・・・平等主義国家でした。まぁ実際にはそんな桃源郷のような国ではないですが。とまぁとにかく同じでして世界が違えとも歩む未来は同じだったというのと既視感とで笑ってしまったというわけです。気分を害してしまったなら私、ヴィルヘルム”個人”として謝ります。」


「そんな同じような国が・・・・・・しかも血すら残らなかったとは。」


エカチェリーナは心底驚いているようだった。





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