Folge.10:会談―謁見―調査①―

私は、一番奥に座っている皇帝カイザーを目掛けて歩く。


周りには貴族位だと思われる身なりの良い人々が座っており、私を見てくる。どうやら値踏みしているようだ。はっきり言ってものすごく気持ち悪い。


「はじめまして、ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーから任を任されました。外務大臣のヴィルヘルム・フォン・ライングラーフと申します。」


私は特に跪いたりせず堂々と立って言う。敬礼すらしない。周りの貴族共はそれに対し無礼だの品がないだのコソコソと話しているが正直言って私が他国の王なんぞに跪く意味が分からない。私が跪くのは唯一人、総統フューラーのみだ。


「皆、静粛に。皇帝陛下の御膳であるぞ。」


クライツがそう言うと、周りの貴族は静かになった。


「ありがとう、クライツ。どうもはじめまして、儂は神聖ヴァルトグロース帝国の皇帝、シュヴァルツェ二世である。ナチ・・・・・・ドイツ第三帝国との此度の会談を心より待っていた。いい話ができる事を祈っている。」


このシュヴァルツェ二世とか言う皇帝一瞬我が党を侮辱する略称を言おうとした?まさかな、気のせいだろう。ここは異世界であって地球ではない。蔑称なんぞ知るはずが無いのだ。


「ええ、私どもとしても良い会談ができればと思っています。今日から3日間よろしくお願いします。」


私はそう言って手を差し出した。


するとシュヴァルツェ二世は立ち上がり、私の手を握った。


◆◇


私は王城内の今回泊まる部屋に案内された。私は城下町の宿屋に泊まる予定だったがどうやらそれはこの国の伝統を蔑ろにする行為らしい。


そんなことで今私は部屋にいる。会談はいつからやるのかという話だがそれは夜の会食が終了した後にやる。つまり、それまでフリーだという事だ。

私は1938年からドイツ第三帝国を代表する外務大臣として外交に励んでいた。そんな仕事の中、調査という外務項目が私にとっての楽しみだ。調査という名目がついているが言ってしまえば観光になる。何故私が初日にしかも早めに派遣されたかと言うとこの調査を遂行するためにある。


ということで今から、城下町に出かける。


因みに部屋の内装は決して質素と言えたものじゃない。完全に客に権威をアピールするようなもので飾られている。どこの絵画師が書いたか分からない絵画に、国を象徴する国章と国旗を壁に掲げてある。流石は権威国家だ。


◆◇


今、私は馬車に乗り、この帝国の専用案内人であるシュトルという方に案内してもらっている。


「ここが城下町です。都市名を帝都ケーニヒスグラードと言い、この帝国内で最も発展している都市です。他国からの商人や観光客、同盟国からの軍隊や軍事用品などが毎日毎時間ひっきりなしにやってきます。今いるここは城下街王族区です。貴族街の更に上の地区という事になっています。貴族位の人でさえ通常は出入りできません。」


道理で建っている邸宅が豪華で人がいないわけだ。英国ブリタニアンのタウンハウスを思い出すな。まぁタウンハウスには人はいたが。


しばらく馬車に揺られ、王族区を眺めていると人がポツポツ現れ始めた。


「ここから貴族街になります。正式区名を帝都ケーニヒスグラード城下街貴族区と言います。ここは貴族位を持っている人ならば貴族位の位に関わらず行き来することが可能です。」


王族区に建っていた邸宅よりかは小さいがそれでも豪華だ。建物の雰囲気は中世を感じる。文化圏的には我が帝国に近いはずなんだが。


更に馬車に揺られる事数十分、人が急に増え始め、明らかに家の質が落ちた。


「ここから平民街。つまりはここからがれっきとした城下街と言う事になります。因みに今いるところは帝都ケーニヒスグラード城下街ギルド区といい、軍事関係の建物などが密集している地区になります。」


「成る程・・・・・・降りることは可能か?」


「勿論です。」


そうシュトルは言い、どうやったのか馬車は勢いを落とし、止まった。


馬車からは見えなかったが、地面は石畳で舗装されていた。


「さて、どこへ行かれますか?」


「そうだな、まずは戦闘機関連の建物に行きたい。」


「畏まりました。ついてきてください。」


シュトルは私の先を歩き始めた。


まずは、相手の戦力をできるだけ把握しておきたい。少しの情報でも大きな戦果につながることになるからな。


少し歩くとそこにはドイツ語でこう書かれた建物があった。


✣―✣

Heilig waldgroß ReichHauptquartier der Luftwaffe(神聖ヴァルトグロース帝国空軍本部)

✣―✣


「ここです。では入りましょう。」


そこまで大きくない木の扉をくぐるとそこには我が帝国にあるホテルの受付と大差ないような受付らしき場所があった。


シュトルは受付の前まで行き、言った。


「シュトル帝国名誉空軍将校です。今回は他国からの外務大臣の観光で来ました。」


受付にいたガタイの良い、男の人は何かをシュトルにしか聞こえないように言った。


シュトル頷き、私の方へ来た。


「ヴィクヘルム外務大臣殿、今回は入れるところと入れないところがございますがよろしいですか?」


「入れないところとは?」


「軍事機密や失礼ですが得体のしれない貴国に見せることのできない資料などがある場所ですね。入れるところは博物室と旧空軍が使用していた翼竜から機種までです。その中でも軍の中枢に関わるところは入ることができないということです。」


「分かりました、仕方のないことです。行きましょう。」


本当はそこが見たかったのだが仕方ない。そこまで馬鹿では無いということだ。


さて、気を取り直してこの国の旧空軍がどれだけの軍事力を保持していたか拝見するとしよう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る