Der 1 Tag

Folge.9:会談―入国―

会談日当日。私、ヴィルヘルムは初めてこの異界の地の他国の土を踏んだ。


空港は軍服を着用した兵士が私の歩く道を開けて整列しており、敬礼していた。何故ローマ式敬礼では無いのか。それはまぁ異界の他国だから仕方ないと腹をくくって、兵士の装備に着目した。腰にはリボルバーのような小さな銃を携帯していたがどうやら武器と呼べる装備はこれだけの様だった。もしかすると他に武器と呼べる手段があるのかもしれない。


「これが神聖ヴァルトグロース帝国の帝都ケーニヒスグラードか・・・・・・」


私はそうつぶやいた。


私の正直な気持ち、あまり発展しているとは言い難かった。発展具合とすれば確かに中世期よりは発展しているが現代までとは程遠い一昔前の祖国のような具合だ。空港と言えば聞こえは良いが、土を少し舗装した程度の質素なものだ。良く我が空軍のパイロットは着陸できたな。流石だ。


私は兵士に囲まれながら歩く。


少しすると、位の高そうな軍服を着用した人が貼り付けたような笑顔でこちらを見ていた。


そして、そばまで行った。


「どうもはじめまして。私は神聖ヴァルトグロース帝国宰相のクライツ・フェン・ホーエンバッハと申します。」


「これはこれははじめまして、私はドイツ第三帝国の外務省を束ねる地位を我が総統フューラーに任されております。外務大臣のヴィルヘルム・フォン・ライングラーフと申します。」


私達はそう自己紹介をして握手した。


◆◇

私は王城に招待された。


はっきり言って王城は何回も見たヴィシーのヴェルサイユ宮殿や英国ブリタニアンのウェンストミンスター寺院のような実に王族という権力の塊が住んでいそうなゲルトに物を言わせた城だった。


大きな廊下を歩いているときにクライツは言ってきた。


「では、ヴィルヘルム殿。早速会談と行きたいところであるのですが我が国の伝統で先に皇帝陛下への謁見をして頂きたいと思います。謁見の態度ですが・・・・・・平民ならいざ知らず、ヴィルヘルム殿のような位ならば心得ておりますよね?」


「勿論です。クライツ殿。さぁ、早く済ませましょう。」


私のこの言葉にムッと来たのかクライツは少し顔を顰めた。


「失礼ですがヴィルヘルム殿。謁見というのは早く済ませる様なものではなくてですね。もしかして貴殿は平民の出であるのでらっしゃいますか?」


「いえ、これでも私は陸軍中尉の父と地主の娘であった母を持っています。まぁそれなりに平民に近いですが。」


正直貴族身分なんぞどうでもいい。流石政治体制の古い国だ。


そんな事を話しているうちに、豪華な扉の前まで来た。


「こちらが玉座の間であります。そこであるべき態度でお願いしますよ。」


「ええ、任せてください。」



―ギギギィィ・・・・・・



扉が開くとそこはヴェルサイユ宮殿の鏡の間の様な場所だった。




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