ゲルマンの悪魔

Folge.2:転移

儂が次に目を覚ますとそこには白い天井があった。


「目を覚まされましたか総統マイン・フューラー。」


「あぁ、クラウス。してここはどこだ?」


クラウス。クラウス・エーベルハイト。称号ライヒスフューラー-SS-(親衛隊全国指導者)は我が親衛隊を統括するトップである。


「ここは緊急救護室でございます。フューラー、何があったか気になるとお思いででしょうがもう少々お待ち下さい。ですが今現在分かっている確実な情報をお伝えいたします。」


クラウスは順番に説明し始めた。


まずあの轟音と白い光の正体は前から話題に上がっていたかの列車砲から放たれた可能性が高いのだという。しかし、仮にそうだとして何故放たれたか、どう放たれたかは不明。

次に今現在の被害は特に確認されていない。国民将校その他諸々も無事だという。しかし、国境付近の親衛隊、国防軍からの報告によるとガラリと景色が一変した模様。ソ連近くでは急に暖かくなり、ソ連占領下のポーランドがあった場所は森になり、ヴィシーのドーバ海峡付近の海軍の報告からはブリタニアンの陸地がなくなったという。また、オーストリアに駐屯する陸軍からはスイスにあるはずの山脈が消え、海になったらしい。


こんな摩訶不思議なあり得ないことがあり得るのか。


儂は言った。


「流石におかしすぎないか。いくら儂でも騙されんぞ?今は真面目な話をしているんだ。」


「ええ、ですから私は至って真面目です。実際に5日前に見てきましたから。」


ん?5日前・・・・・・?


「もしかして儂・・・・・・」


「ええ、ご察しの通り総統フューラー。あなたは10日間ほど眠っておりました。手腕の医師からは生きている。総統は再び目を覚ますと聞きましたのでこうして私は見ているのです。」


そんな寝ていたのか・・・・・・御老体には少々きつい。とは言ってもまだ60にすらなっていないのだが。


「まぁいい、話を戻そう。クラウス、実際に見てきたと言ったが・・・・・・?」


「はい、ソ連国境を見てきました。あれは異常です。ソ連近くのはずなのにありえないほど暖かく、旧ポーランドに入る道は途中で必ず森になっていました。そこから推測されるにヴィシー、オーストリアの報告も虚偽報告では無いでしょう。」


なんてことだ。どうなっている?


「列車砲はどうなった?」


「現在調査中ですが状態は変わらず。しかし、高エネルギー物質と放射線物質が確認されたため厳重になっております。」


「ということはあるんだな?」


総統フューラーの言う通り存在は消えたり爆発したりしていません。」


まぁ百発百中その列車砲がこのような異常事態を引き起こしているのだろうが。


「国内の詳しい内情は?」


「それなのですが・・・・・・国民は不安に仰がれています。今は親衛隊と国防軍が臨時的に連合してSSWとなり協力して抑制しています。総統フューラーあなたの演説があれば一旦は落ち着くと思います。ご様態が良くなればすぐにでも演説してもらいます。」


はぁ、これは国家存亡の危機と言ってもおかしくない。まさか戦時中にこのような自体になるとは・・・・・・しかし、景色が変わったとは言え国は変わらないかもしれない。さらに言えばこれに乗じて攻めてくるかもしれない。よし、ここは、


「私、アドルフ・ヒトラー総統は全権委任法によって宣言する今ここにドイツ国家存亡緊急事態宣言を発令する。明日にこれに関する演説を行う。場所はアーヘン大聖堂だ。クラウス、今すぐに布告せよ。」


「ハイル!我が総統、ヒトラーの命のままに。」


異常事態よ、儂との勝負だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る