第三帝国異世界戦記

黒くて白色の赤いみかん

Folge.1:紋章

1945年5月7日。アドルフ・ヒトラー総統率いるドイツ国、通称ナチス・ドイツはアメリカ、イギリス、フランスなどの連合国とソヴィエト連邦に無条件降伏した。ドイツ国内は戦争でボロボロ、肝心なヒトラーは自殺。そんな歴史が訪れるはずだった。


















――あの出来事がなければ・・・・・・


◆◇


1941年2月28日のフランスを占領して間もない頃だった。


「マイン・フューラー、第30SS武装擲弾兵師団 からの報告です。ソヴィエト連邦国境地域付近の地下で正体不明の列車砲が発見されました。ソ連軍に問い合わせましたが一致する大きさで無いのと未知のマークが付けられているためソ連軍の列車砲では無いことが判明しました。」


「廃棄の列車砲ではないのか?」


ヒトラーは静かに問う。


「その線も確認しましたがソ連軍の廃棄予定の兵器につけるマークとは異なっていました。勿論我が国防軍並びに親衛隊のマークとも違います。」


「どんなマークなんだ?資料があるだろう。」


「こちらになります。フューラー」


そこに出された一枚の紙には黒い双頭鷲の紋章の裏に縁が金色で内側が赤色の盾が描かれた写真が乗っていた。


ヒトラーはゆっくりと語り始めた。


「確かに見たことのない紋章だ。まるで中世期の国章や家紋のようではないか。少なくとも今現在にこのような紋章を使うのはせいぜいブリタニアンくらいだが・・・・・・あやつらは鷲の紋章を使わないのでな。う〜ん、全くわからん。何なのだ。」


「ええ、私達も調べたのですが一致する紋章は存在しませんでした。ヴィシーにも問い合わせたのですがフランス王家にもそのような紋章は存在しないとのことで・・・・・・」


紋章の謎はどんどん深まっていった。


時は進み1941年4月6日。ドイツ軍率いる枢軸国がユーゴスラビア、ギリシャに侵攻した。更に時は進んだ4月8日のことだった。


「ハイル・ヒットラー!第一装甲集団が敵の防衛戦を突破しました。」


「良いぞ。その調子で諸君らの進軍を祈る。この戦いは我が連合国の威厳に関わる重要な戦争だ。」


「はい。精進してまいります。続けての報告ですが、またもや例のマークが貼られた列車砲がヴィシーで発見されました。今回の列車砲の違いは大きさが事なる事のみです。勿論ですがこのような列車砲を所持しているあるいはしていた国は存在しません。」


ヒトラーは難しい顔をしていった。


「思ったのだが・・・・・・その列車砲は使用できるのか?」


「実は・・・・・・」


どうやら報告によると列車砲とは言うもの弾を装弾することもできず、中に侵入することもできない見た目だけのフェイクなのだとか。しかもところどころ錆びており到底使えたものでは無いのだという。中に侵入できないため列車砲を動かすことも不可能らしい。


「成る程・・・・・・一応残しておけ。そのようなものでも鉄にはできる。資料通りならば相当大きい鉄塊だ。」


ヒトラーがそう言い放った瞬間だった。


――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!!!!!!


けたたましい轟音があたりに響く。それと同時に建物が地面がミシミシと音を立てる。


そして、


――ピカッ!


誰もの目の前が白く光った。まるで爆弾が目の前で炸裂したかの様だった。




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