恐るべき才能 その1
「いきます」
僕こと、メルトは赤髪が綺麗な女性。名前はレオーネさんと言ったかな。治療用のベットで辛そうに横になっている彼女の腕を掴み、回復魔法をかける準備をしていた。
「あぁ。補助は任せな」
そう言ってくれるのは、ここ闘技場の回復師の最高責任者兼、元ランカーでもあるアネッサさん。
昔はこの国の中でも1、2を争う回復師だったらしく、そんな彼女が僕の補助に入ってくれるなんて、これ以上最高のパートナーはいないんじゃないんだろうか。
こんなこと言ったらまた拳骨されちゃうから絶対言わないけど。
「よし」
僕は小さく息を吐き、集中力をあげていく。
まずは、抑え目の回復魔法でレオーネさんの体全体をコーティングしていくイメージで気を張り巡らせていく。
最初から全力でいっても効果は半減してしまう。そう、アネッサさんから教わった。
治療は時間との勝負だ。でも、焦らず、自分が出来る最大限の事をしていけばいい。
メルトの手からは緑色に光るエネルギーが見え隠れしており、その本人は目をつぶり、感覚を最大限に有効活用している模様。
毛細血管……細胞まで一つ一つカバーするかのようにエネルギーを循環させていく。
「はぁ……はぁ……」
体中から汗が噴き出て、体力を著しく奪っていく。
きつい……けど、レオーネさんの方が何十倍も。何百倍も辛いはずだ。
まだ回復魔法は十分に使える。
ここからはエネルギーの流す量を多くしていって……
『体力回復』
あっ……
メルトの集中を乱さない程度に肩に手を置き、体力を回復させる魔法をかけるアネッサ。
アネッサさん。ありがとうございます。
「こっちは任せな。『鎮痛』『睡眠』」
次にアネッサはレオーネへと鎮痛の魔法をかけ、少しでも痛みを和らげようと奮闘する。
「はぁ、はぁ……すぅ……」
強者は魔法への耐性が強く、弱い魔法だと跳ね返されてしまう。
その為、込める魔力の量を上げていけば上げていくほど相手にかかりやすくなるのだが、量を増やすと扱いが難しくなるので、そこが初心者のベテランの違いとなってくる。
アネッサのお陰もあり、スイスイと進んでいく治療。
「次に進みます。『再生』」
頑丈に体を守るようにコーティングしたら、次は再生の魔法を用いて、体の修復を行っていく。
ここが回復魔法の一番の鬼門で、使用者の負担はもちろん、かけられている側にも肉体的負担が激しく、途中で命を落としてしまう者も多いのが現状だ。
ここは負担が激しい。一つ一つ的確に終わらせて、時間をかけないようにいく。
脳と心臓は大丈夫。だけど、肺と胃と肝臓……それ以外にも大きなダメージが……
メルトは一段階目の魔力のコーティングを施す際にどの臓器がダメージを多く受け、どれから治療を行うかの優先順位を頭の中でつけていた。
まずはこの臓器から……
「全く……この子の集中力。技術。どれをとってもやっぱり凄いね」
アネッサは魔法の維持をしながら、脇目でメルトの行っている事を確認していた。
「す、凄い。これなら何事もなくレオーネ様が……」
誰かが呟いた一言。そして、皆の気が緩まりかけた次の瞬間。それは起こった。
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