第10話 失われていたフラグ

俺達はデパートに着いた

「着いたけど何すんの?」

「えーっと…買い物とか?」

「そうか」

長くならないといいけど…

デパートの中は人や人や人でいっぱいだった

今日って平日だよな

今日は平日、しかも放課後で夕方な時間である。しかしこの人通りは休日の昼なみである

つまり運が悪い…と

俺はまだ神社で引いた大吉を疑っている

なんてことを考えながら玲夏と手を繋ぎ歩いていると――――え、今なんつった?

…………確認してみよう

俺は恐る恐る下を見る

「おいッ」

俺の手はガッチリ握られていた

横を見ると少し赤面した玲夏

「…なにしてんの」

「えっ!?あ、いや!その…」

俺がジト目で玲夏を見ると

「ま、迷子にならないように…ね」

「いや高校生にもなって迷子になるか?」

「う……わ、私すぐ迷子になっちゃうから」

「そうなのか?じゃあいいけど」

いや何も良くない

こんなところを同じ学校の人に見られでもしたら―――


明日いじめをうけて

明後日不登校になって

1週間後バイトにもいかなくなり

半年後後死亡

となってしまう


「あの、俺の命のためにその手放してくれ」

「え……命のため?」

「ああ、このままこうしていると半年後には命を落としてしまうんだ。」

「えっ……私と…て、手を繋ぐのそんなに嫌なの…?」

玲夏は涙目になっている

いや、そんなに迷子になるの嫌なの…?

「いや、俺は別にいいんだけど」

「じゃあなんで…」

あれやばい友情にひびが…!

俺の命と友情、どちらが大切か…

………

………

………

いやどう考えても命だろ、俺アニメの主人公じゃねぇし。

あ、でも待てよ?

別にいじめられても殴り返せばいいのでは?

俺、天才説

俺は心の中の不安を消し去り、玲夏の手を握る。

「はあ、しょうがない。」

「あ…あの…」

玲夏が消え入りそうな声で話しかけてくる

「ん?」

「あ、ありが…と…う…」

ありがとう?

まあいいか

「で、どこ行くんだ?」

ガン無視した

「ちょっとお腹空いちゃったから…フードコートに…行きたい」

「分かった」

ガン無視したことはバレていない

フードコートの場所は分からないので玲夏のすこ〜し後を歩き、悟られないようにする。

「そういえばお前なんで学校ではいつも敬語使ってんだ?」

「―――!?い、いや…別に…」

玲夏の顔が一瞬で曇る

なにやら何か事情があるらしい

「あ、いやごめん、言いにくいことなら言わなくていい。」

「…うん、ごめん……」


エスカレーターを上がり、少し歩くと目的地のフードコートが見えてきたので、俺は少し歩く速度を上げて玲夏の前に出ると、俺がここまで連れてきた的な雰囲気をかもしだしていく

「まずは席とるか」

「うん、そうだね」

俺達は空いている席を探し…探し………

フードコートをぐるっと一周

二周

三周

四周

「いや空いてねぇし」

全く席が空いていなかった

「じゃあアイスでも買ってベンチとかで食べよ」

「そうだな」

そして玲夏はアイスを買い

俺は水をウォーターサーバーで取ってきて

ベンチを探した


「あ、あった!」

玲夏がベンチを見つけ、俺はついていく。


ベンチに座ると、水をゴクリと一口。

「冷たっ!?」

フードコートにある水はこんなに冷たくなくていいだろと思うほど冷たいのだ。

キィィンと痛む頭に顔をしかめて、ちびちびと水を飲んでいると

「あ、あの!一口…いる…?」

玲夏がアイスを差し出して問いかけてきた

「いや別にいらない」

「え……そ、そう…」

なんだろう、空気が重くなった気が…

なんか気まずかったので水のおかわりを取りに行った。


俺は水が少しでも温かくなるように紙コップを手で包むようにして持つと、玲夏のいるベンチに戻ろうと…


「おい、いねぇじゃねぇか…」

「いや、そんなはずは…」


やばい、同じ学校のやつと遭遇してしまった

ここは音を消してそろりとベンチに戻――


「お、朝祈くんじゃん」

緑の髪の毛の女生徒が話しかけてきた

「…………」

チクショオオゥゥェェ…!!!

何故だぁぁ!!

俺は大吉の男だぞ

こんなことになるなんて少なくとも凶、いや大凶だろ。

「ねぇ朝祈くん、凪さん見なかった?」

「…俺は大吉の男だ」

「ん、何言ってるの…?」

「え……あ、ああすまん、なんだって?」

「えっと、凪さん見なかった?」

「凪さん…、なんで?」

「すまん、なんかコイツが男と一緒にいる凪さんを見つけたとか言ってて…」

そこに緑髪女(命名俺)の連れの赤髪の男(命名俺)が来た

「そ、そうか…ちなみに見つけてどうするんだ?」

「そりゃあ女子会のときの話のネタですよ」

「へ、へえ…」

危ねー、俺が玲夏のこと言ってたら学校の男子だけでなく女子からもいじめられることになっていたかもしれない…

「ごめん、分からない…じゃあ俺はこれで」

何も知らないやつのふりをして帰ろうと―


「あ、愁………朝祈さんに田中さんと山田さん?」

遅くなっていたので探しに来たのか玲夏がこちらへ来てしまった

タイミング悪すぎてもう大吉は嘘だな

「みなさん、どうしたんですか?」

「あ、凪さんじゃないですか!あなたを探してたんです!」

「え、私?な、何でしょうか…?」

「単刀直入に聞きます、あなた、デートに来ているのですか!?」

「――ぇ!?な、何言ってるんですか!?」

玲夏は顔を真っ赤にしている

「私、あなたが男の方と一緒に歩いているのを見ました。まあその人の顔は見えなかったんですけど…」

「ち、違いますよ!!」

よく嘘だってバレないな…あ、でもデートに来てるわけじゃないし嘘じゃないのか

「見つかったならよかったです、じゃあさよなら〜」

よし帰ろう、めんどくさいことになる前に帰ろう。

「あ、朝祈さん…」

玲夏が呼び止めてくるがここで反応してしまったらバレるかもしれない

俺は無視して歩き去っていく


明日謝っておかないと

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