第8話 失われていた眠気

授業開始から40分経った

俺の眠気はもう限界突破していた

やばい……!

俺は『スキル:シャーペンをぶっ刺す』で

なんとか持ちこたえる

クラスを見渡すと、他にもこの技を使っている生徒はいて、血が出ている生徒もいる。

そこまで寝たくないのか…

苦笑すると、また眠気がやってくる。

ググググ……

おー、ヤバい

そこで俺は『スキル:自分で自分の首を絞める』で、持ちこたえる。

先生から「何こいつ」といった目で見られたが、俺はその目を必死に避ける。

何故ならその視線には催眠術が乗っているからだ。

直視するとゲームオーバー

これまでの努力が水の泡になってしまう

それだけは避けたい

だが、このスキルを使うと視線を浴びてしまう。

しょうがない、次のスキルにしよう。

『スキル:まぶたににテープを貼る』

これは最強スキルだ

必殺技にまでは及ばないが、それなりに寝ることを防げる。

俺はこのときだけのために持ってきていたテープをまぶたに貼ると、顔をパシンと叩き、気合を入れる。



だがそこに……!

「朝祈、何をしているんだ?」

ガァァァァッ!!!

来てしまった

「魔の催眠術師・杉島」の必殺技

【個人に向けた言霊〜魔の視線を添えて〜】

これを食らった生徒は90%の確率で夢の国へぶっ飛んでいく

まぶたに貼ったテープがビチッと音を立てて外れる

…ヤバい…これはっ…耐えられな――


いやまだだ!!!

俺は地球よりも重そうなまぶたをガッと見開き、最後の手段『必殺――――




『起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ起きろ』


眠気という暗闇に包まれた教室に、光が差し込む。

「ぐっ……!うおおおおっ!」

やはり俺の必殺技は強い

眠気がどんどん薄れていく

周りで寝ていた生徒も次々と夢の国から脱出していく

視線は集まる

だがそんな事を気にしている場合ではない

今だッ!


『スキル:シャーペンでぶっ刺す』

『スキル:自分で自分の首を絞める』

『スキル:まぶたにテープを貼る』


俺の全てをぶち込む

「ううううううううああああああああっ!」




――――――――


キーンコーンカーンコーン

教室に勝利の鐘の音が鳴り響く


「「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」」


そして俺達は偉業を達する

他のクラスに行っても信じてくれないだろう

俺達は

「魔の催眠術師・杉島」の授業の最後、寝ている人がゼロだったのだ。


「お前のおかげだ!朝祈!!」

「ああ、今までただの陰キャだと思ってたけどこんなすごいやつだったとはなぁ!!」

「えっ…今さりげなく悪口を…」

「本当、朝祈くん勇者みたいだったわ!!」

「え、そうかな…」


クラスが歓声に包まれる中、ふと奥の方を見ると、少しだけ頬を膨らませた玲夏がいた…ような気がした


―――――――


放課後、俺は隆輝と帰宅しようとすると――


「愁斗に隆輝、これ手伝ってくれない…?」


玲夏が助けを求めてきた。

その手にはクラスに貸し出す用の本の点検表があった

「うん、分かった」

「ああ…悪い、今日はちっと用事があって……」

「じゃあ隆輝は帰ってていいよ、俺が手伝っとくから」

すると隆輝は手を合わせて

「すまん、また困ったことがあったらそん時はたよってくれ!」

と言ってダッシュで去ってしまった

「よし、じゃあ行くか、玲夏」

「うっ、うん!い、行こうか!」

妙にテンションが高い玲夏と次々と点検を終わらせていく



―――――――


「「終わった〜!」」

三十分後、ようやく点検が終わると、俺達は空き教室でホッと一息


すると、失われていた眠気が……


「あっ…ヤバい、ごめん玲夏、俺もう無…」

言い終える前に俺は夢の国へ招待されてしまった


――――――


「あっ…ヤバい、ごめん玲夏、俺もう無…」

「えっ?何?」

なんだかよくわからず聞き返すと

ポンッ

私の肩に答えが返ってきた

「ぇ………」

恐る恐る重い方の肩を見ると………

「――――――――!!!!!!!」

なんと、私の肩に愁斗の頭があったのだ!

私は焦りまくる

なんで!?

どうして!?

わあ、どうしよう!!??

愁斗の顔を見ると

「ん――――――――!?」

顔が熱くなっていく

熱くなって熱くなって……

もう茹でダコより赤いんじゃないかと自分でも思う

誰かに見られてなくてよかった


結局愁斗が起きるまでずっと悶絶していた


――――――


「……んっ」

俺が起きると、目の前には茹でダコがいた。

「………あ!!すまん、玲夏!!」

「ぅ……うん…」

怒っているらしい、玲夏はとても顔が赤くなっていた。

このままでは友情に亀裂がッッッ!!

そう思った俺は

「本当にごめん、玲夏、お詫びに何でもしますから友達やめないでください〜!!!」

「えっ?……あ、いや別に怒ってなんか……むしろご褒……ンンッ、ところでなんでもって言った?」


「あ〜……言っちまった」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る