第45話ガーター

りんちゃんは赤く燃え上がるようなイメージを持つボールを両手で持ち上げる


「あれなんで三本指をいれないんだ」


「だって重くて持ち上がらないんですよ」


「そうか」


そして俺はふときづく


「……なあ十川スポーツ苦手だとか言ってたよな普通に投げてなかったかそれも勢いよく」


「いや……その……まあはいやりましたよだって甘えたかったんだもん」


「そうかまあそれが普通の恋人なのかもしれないしな」


りんちゃんが俺たちの話が終わったと思ったタイミングで話しかけてくる


「あの話し終わりましたか自分の番なんで見ててほしいんすよ」


「ほいよ見てるって」


「そうですかなら投げますよ」


りんちゃんはそういって両手で赤色のボールを転がす


ボールは勢いよくおちていく


そしてやがてガーターになるのだった


「まあなんだドンマイ」


「なんですかドンマイって可哀想な目で見ないでくださいよ」


「可哀想だと思ったからな」


「ストレートに言わないでください」


「あははいじるの楽し」


「いじわるすぎます」


「あのそろそろわたしも投げていいですか」


「おう悪い悪い」


俺の左隣に座っていた如月三久が赤色のソファーから立ち上がり森をイメージするようなボールを持つ


持ち方は普通なんだが転がし方が明らかにおかしかった


下から転がすような転がし方ではなく上から投げるような投げ方になっていた


「おいおい投げる気かよ転がすんだぞ」


不思議そうな目で如月三久はこんなことをいってくる


「投げるんですよね」


「違うよ転がすんだよ見てただろ」


「なるほどそうですねではもう一回やり直しをしてもよいですか」


「それは投げてないからええやろ」


「では」


スタスタと歩きながら少し腕を振り自然な動作でボールを転がしピンを倒す


俺と十川みたいに勢いよく転がすわけじゃなくその反対に落ち着いた動作で投げた如月三久を見てこう思う


「なあもしかして投げようとしたのわざとだろ」


「あらバレちゃいましたか」


「やっぱりそうなんかい」


「そりゃ元有名女優ですからそんな野蛮なことしませんよ」


「いや演技でもやろうとした時点でアウトだよ」


「そうですかでは」


如月三久は自信の席に戻るのだった


場が落ち着いたかと思ったら霧雨苺がボウリング場の壁をボールでぶち破った


「いやいやなにやってるんですか」


「……いやその投げる真似をしたいなと思ったら滑って壁に当たってそのまま壁が壊れちゃいました」


「そんなこと普通あるの!?」


「ええあるんです」


「うるせぇなんで慌ててないんだよどうするんだよこれ」


俺はぐちゃくちゃになったボウリング場の壁を指差していう

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