第33話 モンスターペアレントだろ

 本能的に察する。こいつは本当にヤバい。ってか誰がどう見たってそうだろこんなん。


「三浦さん!!」


 ともかく、その見知った人物のもとへ駆け寄る。意識はないがまだ息はある。


「お父様…。」


「これは…お前がやったのか?」


「怖い目をするね。一樹。そうだよ?仕掛けてきたから反撃した。」


「反撃って…。」


「まあ、君としては聞きたいことも山ほどあるだろう?その答えを私は知っているからね。答える気は無いけど。」


 確かに…知りたいことは山ほどあるが。


「今はそんなことどうだっていい…俺はどうしてもてめぇを殴りたくてしょうがない。」


「怖いねぇ。」


 とりあえず、殴るとは言ったがナイフを手に取る。


「え、殴るってさっき―――――。」


「そこにいたら、殴れるもんも殴れねぇだろ。」


 そう言うわけで、大地を蹴る。あの高さ届くか?そういえば…二葉のあの衝撃波…使えるのでは?


「二葉!俺に向かって最大出力!!」


「はい!え、えぇ!?」


「いいから!!」


 今まで無意識で使っていた力…こいつの特性を知りたい。

 後方からの叫びが聞こえる。それと同時にあの破壊が始まる。

 とりあえずその衝撃波を踏み台に、バネみたいに使っての高速移動。


 なるほど…自分の体を守りながら吹き飛ばされるってのは可能か。まあ、お陰さまで右足が逝ったけど。

 上半身が生きてりゃ無問題。それに、あのときの回復能力。あれも試したい。

 と、まずは硬度チェック。


 その掌に斬撃を入れるが…こんなナイフじゃ役に立たない。解ってはいたので予定どおり、こいつを地上からつっているあの糸を頑張って切る。


 なんとか手の甲に着地するが…まだ右足が使い物になら無い。


「いやぁ…驚いた。あんな使い方をするなんて。でも体は大事にな。」


「うるせぇ…。」


 なんなんだよこの父親面モンスターは。ちゃんとモンスターペアレントだろ。


「…俺はまだ走らなきゃならん。治すことができるならとっとと治れ。」


 そう呟くと…比較的楽になる。わからん、防御と回復が同時にできるスキル?いやでもそれならあの2人を跪かせた意味がわからん。


 まあ、いい…とりあえずあれを切る。


 走り出す。多分ここなら、アイツの指は届かんだろう。


『課題―――しゃがめ』


 は?嘘やん?


 とっさにスライディングした。目の前を光が掠める。


「?」


 後方を見ると…あれ指の曲がる角度じゃないだろ!?ってかそうだな、元々手とも言ってねぇな。ふざけた作りしてんじゃねぇよ!てか、ビーム出すなよ!!


「え、避けるの?」


「避けれるもんなら避ける。」


 あと少し、あの糸までかけ登る。多分この距離じゃ二葉のも使えない…てか、俺の声が正しく届かないしそれどころじゃなくなる。


 全方向から、ロックオンされた。


 あれをうまいこと使えば…行けるか?


 走りながら、頭の中に響く声を処理して避ける。跳んでしゃがんで…身を翻して、受けて。


「いやぁ…ここまでとは…。」


 なんとか、ノーダメージでその場所までたどり着く。その勢いのまま、その糸にナイフを振りかざす。だが解ってる。これじゃあ切れない。


 案の定…そいつは弾かれる。だが…分厚い皮膚よりかは幾分かこっちのほうが切れる。


「駄目だろ?それを傷つけちゃ。」


 何故その声は背後から聞こえてきたのか…。


「お前は…。」


 何故こちらに居る?何故その姿が…ここにある…?


『課題―――避けろ』


 避けろって何をだ!?


『課題―――――』


 は…は?


「君も…同じだろ?」


「何がだ…?」


「私と同じ…未来を予知するようなスキルを持っている。」


「お前と同じ…だと…?」


「ああ…だから、この場じゃその力に頼るなんてナンセンスだ。」


「…つまりは…さっきの攻撃…俺が死なないことが解っていたとでも?」


「ああ解っていたさ。」


「目的はこの場におびき寄せること…ってか?」


 二葉との分断…それが目的だろう。まあこいつの力も俺と似たようなスキルってことは…打算は無意味か…。


「あの大きな図体じゃ…君を倒せなくてね。」


 そう言うと…そいつはそこから這い出てくる。


「本当…馬鹿らしいことするな。」


「いいだろ?これ、ボスっぽくて。」


「ただのバケモンじゃねぇか。」


「はは、言えてる。それじゃあ一樹…ここなら邪魔は入らんだろう。」


「…なるほどねぇ…不器用な親だ。」


「父さんのことを殴ってみろ?」


「…上等だよ。」

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