第20話 ぼくのかんがえたさいきょうのひっさつわざ

 なぁんか…なんだかなぁ…。

 ダンジョン内で1人考えてみる。一樹くんの今まで、そしてこれからについて。あれからさらに調べてみたところ、一樹くんのスマホは「クラン」に関する一切の情報が開示されないようになっていた。


「一樹くんは…特別な存在?」


 確かに、ダンジョンに入った時の精神汚染を受けてないらしいし…私の精神汚染も絶ち切った。特別じゃないって言うほうが無理か。


「考えるの辞めよ…わっかんないや。」


 ………前言撤回。まだ寝れない。スキル…課題ね…冷静に壊れよりだよね?場合によってはそのチーム全体を完全勝利に導く…謂わば軍師向けのスキル。最前線を切っても使い手次第ではなかなか化ける。


「私との相性っていいのかな?」


 私のスキルを発動させるにはどうしても時間が必要である。その間、私は動けない。冷静に考えて的確な指示を出す一樹くんとの相性は最悪だ。動けないんだもん。


「外れスキルもいいとこだな。私の。」


 いやぁ実際私が活躍できてたの本当にアマネあってこそだったんだけどな…まあもう無い物ねだりだもんね…。


 おもむろにスマホを開く。今回の配信のコメント欄…やっぱり一樹くんのことについてが一番多い。

 実際、実践で動く一樹くんを見たのはこれで三度目になるけど明らかに手練れの動きかたをしている。現在はBクラスだけど、昇級早いだろうな。無駄がない…このときもやっぱりスキル発動してるんだろうか?


「してなくてこの動きはちょっと引くかな…。」


 急所だけを確実にナイフで捌いている。流石に…え?発動してませんとかないよね?


 まあ、一樹くんだし…。


「私もなかなか常識がなくなってきたな…。」


 Sクラス…その枠組みには入っているが、私のはタメが長すぎるからな…まあ長ければ長いだけ強くなるんだけどね。

 一度試したことがあるけど、多分このスキル、威力の上限がない。だからだろうな。私がSクラスなのって。


 スキル―――雷霆。威力全降りの「ぼくのかんがえたさいきょうのひっさつわざ」みたいなバグスキル。まあ、反動がない訳じゃないけど…私が扱うから実質チャラみたいなところはある。


「さぁて…明日はボス戦だからね…しっかり見せ場考えなきゃ。」


「…さっきからどうしたんです?」


「ひゃい!?か、一樹くん!?起きてたの?」


「まあ、寝れなくて。俺、今日みたいな立ち回りでよかったのかなって。」


「全然大丈夫!!ほら、これ。めちゃくちゃ好評だったよ?」


 そう言ってスマホの画面を見せる。


「なら、いいんですけど…このチャンネル、あくまでも七瀬さんのものじゃないですか?」


「え?まあ、そうだね。」


「それで俺、思ったんです。やっぱりトドメは、一番の締めは七瀬さんじゃなきゃ務まらないなって。」


「それは…どういう?」


「別に悲観的になってるわけじゃないですよ?でも…七瀬さんのスキル、めちゃくちゃヒロイックでかっこいいじゃないですか?だから、ここにいる人たちはその爽快感がやっぱり好きなんじゃないかなって。」


「一樹くん………。」


 やっべぇ!めっちゃ嬉しい!!そんなこと今まで気にしたこと無かったけどそうなのかな?やっぱりこういうのかっこいいのかな?いや、かっこいいよね?よね!?


 いかんいかん、あくまでも冷静に。


「ありがとうね。一樹くん。」


「いえ、俺の思ってることを言っただけです。」


「…やっぱり、一樹くんは優しいね。」


「え?」


「なんか、そう思っただけ!ほら、明日はボス戦だから早く寝よ?」


「はい、おやすみなさい。七瀬さん。」


「お休み、一樹くん。」


 なぁんかなぁ…ここまでやってもやっぱり「七瀬さん」かぁ…なんだかなあ。


――――――――――


「―――――さぁ、そう言うわけでやって参りました!!ボス戦です!」


 配信開始して十数分。同接は3000を越した辺りだ。


「カズキくん、それじゃあ行くよ?」


「はい…アスカさん。」


 そうして私たちはその扉を開けた。数千人の視聴者とともにその中の存在を確認する。


「いやぁ第1階層とは言え…なかなか厄介そうなのが立ってるねぇ。」


「ゴーレム…ですか。」


 これは、私の出番かな。


「私が一番得意な奴だね。カズキくん、任せても大丈夫?」


「…あれば切れますか?」


「うーん…30秒で。」


「………なるほどです。30秒、隙を作ればいいんですね?」


「嫌な言い回しだね。」


「ええ、俺のスキルがコイツは異質だって言ってます。」


 たかだか、ゴーレム…だがカズキくんがそう言うなら、そうなのだろう。


「今回、指示はカズキくんに任せるよ。」


「了解です。まあ、どうにかはなるでしょう。」




 『課題―――戦え』

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