第19話 僕たちは謝らなきゃならない

「シュンくん…これ…どうするの?」


「どうするもこうするも…どうにも出来ないだろう。」


 僕とナナがその部屋で目にしたもの。一向に奴と連絡が取れなくなったが…まさかもぬけの殻とは思わなかった。


「…二宮…天音…。」


 元々は4人だった。トップパーティ、アルモニア。思えばあいつは…アスカに出会って狂ってしまったのだろう。圧倒的強者。おそらく、アマネの城壁を人類で砕けるのはアスカだけだろう。

 アスカはあいつの絶対的なプライドさえも砕いてしまった。


「シュンくん…。」


「行こう…ナナ…。」


「行くってどこに?」


「アスカのところだ。少なくとも、僕たちは謝らなきゃならない。」


 アマネのやったことは明らかに間違っていた。だけど、僕らアマネに着き続けた。だからあの時…アスカが遭難したとき…守れなかった。


「後悔してます?アマネさんについたこと。」


「いや…悔いはないさ。出きることは…やったつもりだ。」


 アマネは…天音は元々、あんな奴じゃなかった。もっと真面目で、夢を見てるような目をしていた。

 だから…きっと何かに当てられただけだと。僕ならきっと天音をもとの道に戻すことが出きると…勘違いしてしまった。結果がこれだ。


「ただ、ナナも付き合わせちまって悪かったな。」


「いえ…乗りかかった船ですから。」


 そう言ってくれるナナ。僕がもっとしっかりしていれば…こんなことにはならなかったのだろうか?


「本当に…すまない。」


「良いんですよ。それに、こうなったからこそ、蒼井さんが救われたんじゃないんですか?」


「蒼井…ああ、あのダンジョンの。」


「はい!アマネさんがどこに行ったのか…まだ解りませんが、あの人もそのうちふら~っと戻ってきますって。」


「そうだと…いいんだが。」


 と、その時、僕の携帯電話に着信が入った。すぐに出ると、レオンの社長である一之瀬いちのせ 友妃ゆうきさんからであった。


「もしもし、お疲れ様です。」


『瞬、天音のことだけどね―――――。』


「え………。」


『残念だけど…本人の希望なら私にもどうしようも…。』


「は、はい。」


 そうして…通話は切れた。


「シュンくん?」


「天音…レオン辞めたって。」


「え…?」


「センチピードに引き抜かれたらしい…本人の希望で…だからどうにも出来ないって…。」


「そ、そんな…。」


「デルタは…現在をもって解散だ。」


「わ、私たち…どうすれば…。」


「まあ、需要はあるだろう…僕たちなんだから。」


 尖兵と回復役。役職としては悪くない。しかもそれがSクラスともなれば…それだけの需要はある。か、これを機に探索者を引退するか。僕たちなら教育係としてもやっていけるだろう…。


「悪い。帰る。」


「シュンくん!!」


 ナナは追いかけてこなかった。察してくれたのだろう。今は1人がいい。


 僕が今までしてきたことは無駄だったのか?何がダメだったんだ?何が…間違いだったんだ?何もかも…いやになる。


「僕は…。」


 いや、そうだ…まずは謝らなきゃ。


――――――――――


 ノックが響く。私の部屋に呼びつけていたあいつだろう。


「入りたまえ。二葉。」


「失礼します。お父様。」


 やはり、あの出来損ないとは違う。二葉は最強の探索者だ。


「それで、お父様。見せたいものとは?」


「おお、これだよこれ。」


 そうして、モニター越しのその部屋の様子を見せる。


「これは…うちの探索者…それも全員Aクラス…この子は?」


「ああ、新しく入ってくれた子でね。天音くんと言うんだ。」


 写し出されているのは闘技場。これは模擬戦の様子である。Aクラス10人対天音くん1人。各々得意とする武器を持つ。対する天音くんは大楯のみ。装備も私服である。


「なかなかやってくれる子でね?見ての通り―――――。」


 彼女は一斉攻撃を受けても傷1つつかない。それはおろか…本の一瞬で全員をダウンさせた。


「3秒程度で全員沈めることだってできるんだ。どうだい?」


「私なら、3秒もかかりませんよ?お父様。」


 やはり、二葉はつまらなそうな顔をする。うーん…やっぱりこの程度の子じゃダメか。しかしまあ、人知を越えた力と言うことに変わりはない。

 それに、来る日の時のためと考えれば…まあ、死なないから充分だろう。

 最強の盾は手に入った。最強の矛も、今私の手元にある。

 後は、イレギュラーが起きないことを祈るだけだが―――――。


「ほう…なるほどね?」


「お父様?」


「あー、あー、天音くん。聞こえているかい?大至急、七瀬 飛鳥の元に向かってもらいたいのだが…いいかい?」


 すると彼女は、ニイッと不吉な笑みを浮かべてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る