第18話 田舎ではありましたよ?
「と、言うわけで今日の配信はこのくらいかな。まったねー!!」
と言うわけで配信は終了する。半日くらいかけて1階層の殆どを探索した。いやぁ久々の配信楽しかった。
「いやぁ…広かったですね。」
「ダンジョンにしては普通なほうだよ。君がいたところの方がずっと広かったし、深かったよ。」
「俺のいたダンジョン…。」
「そうそう、現在見つかっているダンジョンの中で一番深い33階層。まさかそんな最下層で暮らしている人がいるとは…。」
「俺も驚きましたよ。急にスキルが発動して…そこからは従うのに必死でした。」
その言葉に何か引っ掛かる。
「…ダンジョンに潜るまえからスキルを持ってたの?」
「はい。そうですけど?」
「…普通…スキルって言うのはクランで検査して初めて知覚できるものだから…それまで使えないのだけど…。」
「…え…?」
いや、解ってた。どこか一樹くんはおかしい。
「何も全員が普通にスキルを持っている訳じゃないし、そもそも探索者になる資格を持たないものだって沢山いるのよ…その資格っていうのが魔力を持っていること…魔力の感覚はなんとなくで解るけど…スキルを知覚って言うのは…聞いたこと無いわね。」
「へぇ、そうなんですね。」
「いやいや、涼しい顔しているけど………待って、君、地上に何年居たの?」
「えぇと…ダンジョンの崩落に巻き込まれたのが15歳の時でしたかね。カレンダーで確認するなら今から5年前ですね。」
「…5年前…1つ引っ掛かるのだけど…なんでクランのことについて知らなかったの?」
「なんでと言われしても…知らないものは知らないと言いますか…。」
世間の情報はダンジョン内でも得ることが出来たはず。それにダンジョン形成から5年も外にいてクランについて触れないなんて…出来ない。
「言えないなら言わなくていい…君は一体…どうやって暮らしてきたの?」
「俺…ですか―――――。」
―――――聞かなければよかった。私、そこまでメンタル強くないのに。
一樹くんの両親は幼い頃に離婚したと言う。そこからお母さんのほうに引き取られ…豹変した彼女に手厳しく育てられた。
ほぼネグレクト状態。学校から帰れば酔った母がいる。成績上位でなければ殴られる。父親が居なくなったのはあんたのせいだと罵声を浴びせられる。
そんな中、始まりの日…ダンジョンが世界に出現した日、彼女は命を絶った。
一樹くんの目の前で、首筋をかっ捌いたと言う。
そこから、一樹くんは母方の祖母に引き取られた。それでもあの時のトラウマは消えず、人との距離は遠退く一方だった。その上、一樹くんのいたところは田舎…そこで5年間、隔絶した生活をしていたのだそう。
そこから、変わらなければと奮い起たせこちらでバイトをしながらあのアパートに住んでいたところ、ダンジョン形成による崩落に巻き込まれたと。
「―――――ごめん…なさい…。」
「いいんですよ。これは俺の向き合わなきゃいけない問題だから。」
「強いなぁ…一樹くんは。」
そう言う一樹くんの背中は…すごく物悲しそうだった。
さて、自分!!悲観的になるな!!今のでなんとなく、外にいた5年間はそれどころじゃないことが解った!
じゃあ…ダンジョンの中は?
「まあ、こういうくらい話はやめましょう?それより、気になることがあったんじゃないですか?」
「あ、そうそう…えっと…じゃあそうだな…良ければなんだけど…スマホ見せてくれないかな?」
「スマホ?ああ、いいですよ?」
そう言って、彼が取り出したスマホは…見たこと無い機種だ。
「…?」
って、言うかこれ最新型では?充電形式がその人の魔力を消費したもの…この技術は最近発表されたばかりのはず…?
「これ…いつ買ったの?」
「ええと…中学卒業の時だから…5年前?卒業祝って…。」
「だ、誰から!?」
「え、えっと…解んないんですよね。」
肝心なときに肝心な情報がないッ!!
「なんか、学校から帰ってきて…家の前においてありました。」
「田舎の野菜のお裾分けのしかたじゃないんだから…。」
「田舎ではありましたよ?」
「そうじゃない…そうではない。」
まあ…なんか裏がありそうって言うのはよく解った…まあ、冷静にそうだよね。一般人がダンジョンの奥底で5年間…生き延びれるわけがないんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます