第15話 知らん間に知らんところでバズった
クラン、サン シュヴァリエにて―――――。
「で、どうにか収集は付いたのだね?」
やっべぇ、ここ社長室って言われるとこだよ?超やべぇよ!!
「ああ。で、彼が問題の蒼井くんだ。」
「え、あ、はい!蒼井 一樹です!」
「まあ、そう固くならなくてもいい。早速だが本題に入らせてもらう。何をした?」
「…何も…。」
これがマジでなにもしてないんだからそう言わざるを得ない。
「そうか…君のほうはどうなんだ?七瀬くん。」
「ええ、不安定さは無くなりました。あの日…一樹くんが私のことをぶってくれたお陰です。」
おっと?
「ほう…手を上げたのか?」
「ああ、でもちゃんとその後抱き締めてくれましたよ?」
おっと!?
「やり口はDV男と同じだね。」
「ほう…そうか…。」
違う。そうじゃない。多分そうじゃないの。違うの。
「え、えと…。」
「解っておるさ。そこまでの状況だったのだろう?」
「まあそうですけど…。」
我ながら最低。
「しかしながら進展は無い…か…。」
「あの…不確定なことを言うようですが、あの時自分の中につっかえていたものが取れたような気がしたんです。」
「つっかえていたもの?」
「はい…何て言うんですかね…トラウマ?みたいなものが一樹くんの言葉で和らいだ…みたいな。」
「なるほど。トラウマねぇ…。」
「やはり、私はあの仮説は正しいと思っている。」
よくも悪くも高揚感を生み、そのギャップで人が豹変する。というやつだ。無い話ではない。なら何故それを解くことが出来たかと言うと…これがわからない。正直、偶然の一言で片付けることが出来る。
「まあ、また詳しいことが解ったら話そう。すまないね。」
と、そこで解散みたいな雰囲気になったが全然そんなこと無く、俺だけ血液採取やら問診やらバイタルチェックやら色々施された。
まあ、そうなるわな。じゃないとなんで呼んだの?って話だもんな。
「さて、すまないね。」
「いや、こっちこそ。色々迷惑かけてごめんなさい…。」
「いや、飛鳥ちゃんが元通りになってくれてよかったよ。さて、蒼井くん。再三になるが飛鳥ちゃんを頼んだよ?」
え、いや、だから俺彼氏じゃない―――――。
「頼りにしてるよ、一樹くん?」
「…はい。」
もうしょうがないさ。こうなっちまったんだったらしょうがないさ。なんだって付き合ってやるよ。
と、そうは息巻いたものの…。
「あの…なんです?この荷物?」
「ん~?ああ、そろそろ私も復帰配信しようかなって。」
玄関先には大量の機材…マジか、タフだなこの人。
「ほら、一樹くんも来るでしょ?」
「え?」
「言ってたじゃん。脱出できたら一緒に配信しよう?って。」
「て、て言っても今からですか!?」
「そんな遠く無いところだよ。もっとも今回は車使っての移動だけどね?」
「車?一体どこにいくんです?」
「ふふん。」
そんな風に得意気に笑う七瀬さん。なんか久しぶりに見たな。
さて、七瀬さんの運転で数時間後。俺は県境の山の中に来ていた。
「…近いとは?」
「県外に行くことだってザラだからね。近いよ。」
麻痺ってこえぇな。て、言うか七瀬さんの衣装…派手だなぁ…。思えば初めて会ったときもあんな感じだったか。流石は配信者。
「さてと、一樹くんもそろそろ装備に着替えな?」
「あ、はい!」
「あ、そうそう。配信中は私のことアスカって呼んでね?」
「え…。」
「流石に名字は…ねぇ?」
まあ、解らなくもないが…すごくハードルが高いッ!!対人嫌いすぎて引きこもりだった時期があるんだから…。
「わかったかい?カズキ?」
「い、は、はい…アスカ…さん。」
「…全く固いなあ…ま、それはそれで味か。」
「あ、あの、ふと思ったんですけど、俺って配信に乗ってても…。」
「大丈夫、大丈夫。問題ないって。私が遭難してたときに助けてくれた人です!って言ったらいいんだから。あ、それとも顔出し嫌だった?」
「い、いや、俺男ですし…そのファンの方は…?」
「あれ?君あんまりスマホ開かないの?」
?
「私が落っこちたときまで配信続いててね、そこで君の姿がチョロッと映っちゃってたみたいなの。」
??
「で、今これ。」
そう言うとスマホの画面を見せる七瀬さん。
――――――――――
#彼は何者なのか?
遭難してるって意見濃厚だけどさ、そんなことあるわけ無くね?
無いよね?
流石に一番でかいダンジョンに人が住んでるはあり得ん
けどこれアスカが初めに入ったダンジョンって言うのは明白なんだよな…
配信映っちゃってるしどう足掻いてもフェイクではないことはわかる
それ以降は知らん
――――――――――
エトセトラ、エトセトラ…。
???
「君、バズったよ?」
拝啓、婆ちゃん。俺、知らん間に知らんところでバズった。
どないしょう。
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